Let'sダチ公
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『Let'sダチ公』(レッツダチこう)は、原作:積木爆(立原あゆみ)、作画:木村知夫による日本漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、1985年昭和60年)19号から1988年(昭和63年)42号まで連載された。単行本は全18巻。全163話。続編として、1994年に同じく『週刊少年チャンピオン』に掲載された『I'mダチ公』(単行本全1巻)、また2006年に『別冊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて掲載された『新Let'sダチ公 極道大学金時計』がある(単行本全4巻)。また『週刊少年チャンピオン』創刊40周年企画として、同誌の2009年41号に読み切り作品が掲載された。

ツッパリ高校生コンビの秋葉瞬と森陽一がケンカに明け暮れる学生生活を描いた不良漫画(ヤンキー漫画)。2人が私立海西学園高等学校(以下「海西」)の番長グループ内で出世しつつ、他高との縄張り争いを繰り広げていくのが主なストーリー。

タイトルにも含まれる単語「ダチ」(後述)が、重要なキーワードとしてセリフの随所に出てくる。本項でもダチを使用する。唐突かつ大掛かりな演出が多い。作品内の時代は1985年(昭和60年)。舞台となる海西高校の地理は具体的に明示されていないが、「北関東の県」と描かれている。
物語構成とあらすじ

以下の各編の名称は、本項内のみの便宜上の呼称。作中には部や編などの明確な区分表記はない。
導入編 - 瞬と陽一のコンビの日常生活が描かれる。授業を受けたり、校内のよろず揉め事を解決したりしつつ、作田や中西など主要な人物たちが登場してくる。

関東梅林戦争編 - 梅林(ばいりん)高校の関東分校との戦争。海西高校は、関東から梅林の番長とその一味を追い出すことに成功する。年度が進み、全員進級。作田たち3年生は卒業していく。その後、関東の諸高校にはびこる梅林の「草番」を掃討するため、瞬と陽一が奮闘する。

静岡梅林戦争編 - 梅林大阪本校が、静岡を中心とした中部地方に侵攻してきた。海西と中部連合は、富士山麓にて梅林幹部をタイマンで倒し、中部地方を取り戻す。

大阪梅林戦争編 - 後に仲間になる西垣津(にしがいつ)が登場し、大阪梅林本校との決戦のきっかけが生まれていく。その最中、作田が暗殺される。作田の弔いと全国の平和のため、大阪の梅林本校を関東・中部連合が攻略する。死闘の末、瞬が梅林総番を討ち取って決着する。

山梨A級少年院編 - 梅林総番を半殺しにした罪で、瞬が少年院に服役。そこで、九州の総長・段木(だんぎ)が関東制覇の野望を進めていることを知る。

九州戦争編 - 瞬は脱走を繰り返して、段木の野望を食い止めようとする。その間に年度が進み、進級。瞬と陽一は3年生となる。そして関東地方に九州勢が侵攻してきた。陽一たち海西高校連合は段木を追い詰め、出所したばかりの瞬が段木をタイマンで倒して、戦争を終結させる。

京都戦争編 - 京都のエリート高・海東(かいとう)学園が、段木と中西を殺害。権力者が裏で手を引いていることを知った海西率いる連合軍は、黒幕のVIP宅に突入する。

完結編 - 全国の高校の平和と安全について話し合う機関「全国高校会議」が設立される。唯一不参加の北海道地区も瞬がタイマンで下し、ここに全国の高校が一つにまとまった。瞬と陽一はお互いを讃え合いながら、海西高校を卒業していく。

用語
ダチ
不良言葉で友達の意であるが、本作では一般的な友達の意を大きく超えた、強固な人間の絆を表す言葉として全編で頻出する。単行本に収録されている作者のコメント内でも頻用される。瞬によれば、「世の中で一番大切なもの」「自分の命よりダチの命が大事」。陽一によれば、「学園が無事でもダチ失ったらなんにもならない」とのことである。
「ダチ」を含む代表的なセリフ

タイマンはったらダチ!」
タイマンをはった相手は、たとえ敵でも以後ダチとして扱うという考え方。初出は第10話のサブタイトル。セリフとしての初使用は同話の瞬より。主人公2人を始め、本作の登場人物の多くが、この考え方を受け入れていくようになる。陽一いわく、「関東のことわざ」「関東のいいつたえ」。同じ原作者の「本気!」でも引用され「そんなフレーズがありましたね」というシーンがあった。
「Let'sダチ公!」
行こうぜ!などの意味合いで使用される。本作のタイトルそのものでもある。
「女一瞬、ダチ一生」
女はきまぐれなもので、今は仲が良くてもいつかは別れる。しかし、ダチとの絆は一生ものであるといった意味を含む言葉。
タイマン
不良言葉で「一対一でケンカすること」を指す。ここでは、本作におけるタイマンの主なルール(いずれも不文律)について記述する。
一対一が原則
どのような状況でも一対一を原則とする。仲間や他人が見届けるのは問題ないが、手を出したりすると、出させた人間は卑怯と罵られる。タイマンの約束を反故にしても同様である。なお女とは、どんなに女側に戦闘力があってもタイマンはしない。男と女がタイマンする方法とはセックスである。
武器を使用しない
刃物や飛び道具はもちろん、鎧やナックルなどの身に着けるものまで、一切使用してはならない。使用するとドグサレと罵られる。ただし、武器を使用した相手には、自分も武器を使用してよい(この場合はタイマンではなくなる)。
戦えなくなったら終了
相手が動けなくなったり、戦意喪失したりしたらそこで決着する。相手を殺してはならない(死なせるとダチになれないから)。双方同時に戦闘不能になった場合は引き分けとなる。いずれも、終了後は相手とダチになる。
その他のローカルルール
海西高校には、タイマンを申し出られたら必ず受けるという伝統がある。また九州では、手段を選ばずとにかく勝てばよいという風潮が見られる。
番(ばん)
いわゆる「番を張る」の「番」だが、本作ではかなり明確に定義されており、学校内では生徒会のように公式に組織づけられている。どの学校も番を学校側から認められており、電話まで引かれた「総番室」がある。学校内の行事等を扱う生徒会と違い、主に生徒間の秩序維持や他校との交流、トラブル対応などのために存在する。単純にケンカの強弱で序列が決まるようだが、作田のように生徒会長と兼任する場合もある。真面目な学校では番そのものがないところもある。逆に梅林のように不良生徒ばかりの学校では番が異常な力を持っており、広域暴力団並の機動力・戦闘力を保持している。
総番(そうばん)
裏の生徒会長。各学校の不良の頂点であり、基本的にタイマンが一番強い者がなるが、人を引っ張っていくカリスマ性も必要なようである。ヤクザの親分のような存在だが、梅林のようなメチャクチャな不良学校でも総番は民主的に決められているようで、継承位が詳細に決められていて功績(主に近隣他校とのケンカによる制圧活動)によって位が上がる。また、ある地方で最も力のある総番を「総長」と呼ぶ。例えば、関東地方の総長は作田、九州地方の総長は段木である。
副番(ふくばん)
その名の通り、総番をサポートする番のナンバー2。
外番(そとばん)
番長組織における、いわば外務大臣。周辺の高校の外番同士が集まって月1回行われる「外番会議」で、問題を話し合うのが主な仕事。
若番頭(わかばんがしら)
校内の一般生徒や役職のない平番をまとめる役どころで、海西では外番とはほぼ同格とされている。
草番(くさばん)
「草」とは忍者の隠語。つまり、番長組織が他県の高校に潜伏させた工作員である。その高校の学生として入学し、普段はおとなしくしているが、本校からの指示によって行動を起こす。
陰番(かげばん)
九州編のみで登場。段木に屈服した高校の番で構成された組織。隠密のような覆面をかぶっている。指揮官は萌火火見子。
登場人物

地方ごと、高校ごとに記述する。
関東地方
私立海西学園高等学校

学年は登場時のもの。主人公2人以降は、学年順に記述。
秋葉 瞬(あきば しゅん)
2人の主人公のうちの1人。1年生。面長で細目で瞳は小さく、眉は細く、眉尻でほぼ垂直につり上がっている。眉間には常に険があり、人相が悪い。髪を立てて極端なソリコミを入れているが、それを差し引いても頭部が異様に長く見える描かれ方をしている(ソリコミのある他の人物も同様)。半袖シャツ、半ズボンなど、軽快な服を好む。性格はきわめて凶暴で、ケンカっ早い。無用の争いをたびたび起こし、身内をトラブルに巻き込んだり、作戦を台無しにしたりすることもしばしば。反面、とても人なつっこく、相手の懐に入れる。校舎、航空機などを破壊したこともある。ケンカの得意技は
ドロップキックジャーマンスープレックスアルゼンチンバックブリーカーなどのプロレス技。物語当初は、ケンカも強くなく、上級生に金を巻き上げられたり、卑屈な態度を見せたりすることもあった。だが、やがて自信をつけどんな強敵をも堂々と撃破していくようになり、「二代目大関東」の通り名まで付いた。もう1人の主人公・陽一とはダチであり、多くの場合行動を共にする。美鳥とは恋人同士で、セックスの事前・事後シーンがたびたび描かれる。作田を「兄貴」と呼び、思い出すだけで涙ぐむほどに心から尊敬している。本作におけるタイマンの多くを請け負っている。1年生で無役→若番補佐→外番(陽一と2人外番)→外番(単独)、2年生以降も卒業まで外番を務めた。この世で一番大切なものはダチと言い切っており、「ダチ」を含めたセリフが陽一と並んで非常に多い。実家の描写から、かなり裕福な家庭の息子と思われる。親はケンカ三昧の息子を温かく見守っている(放任や無関心ではなく、常に声をかける。瞬もそれを嫌がってはいない様子である)。最終回において、卒業後は働くことを決める。続編『I'mダチ公』では、教師となり海西高校に赴任してくる。
森 陽一(もり よういち)
2人の主人公のうちの1人。1年生。眉は太く、目は丸く、瞳は大きい。左の頬に切り傷がある以外は整った顔立ちである。性格は瞬と同じく、ダチを何よりも大切にし、頭に血が上りやすい。ただし、怒りを拳で表現する瞬と異なり、陽一は組織的な作戦を即決することも多い(ダチが遭難したら捜索隊を派遣する等)。総番に就任してからは特に、「伝統」「誇り」などといった大義名分を掲げて行動していくようになる。導入編までは、何をするにも瞬と一緒で、作中の扱いも同等であったが、梅林戦争が激化するあたりからは、瞬を諌めるシーンが多くなり出番とタイマンが減ってしまう。九州編になって、再び出番とタイマンが増える。右利きであるが、ケンカの得意技は左ストレートと右アッパー。ボクサーとのタイマンを買って出てこれを迎撃し、階級について知識があるなど、ボクシングの造詣がある。1年生で無役→若番補佐→外番(瞬と2人外番)。遠藤の失脚後、若番頭に昇進。その後、任期途中で退いた四方の跡を継ぎ、2年生にして海西高校の総番となる。実家や家族の描写は一切無い。旧友との会話から、高校入学前から不良であったことがうかがえ、ヤクザや暴走族の頭などに知り合いがいる。最終回において、卒業後は大学に推薦入学することを決める。
作田 良樹(さくた よしき)
総番。3年生。関東地方を束ねている関東総長でもある。バランスの良い、逞しい肉体。男らしく凛々しい顔つきで、海西高校の中でももっとも整った姿に描かれている。ほとんど表情を変えず、厳格な態度を崩すことはない。ただし遠藤の裏切りを聞いたときは表情こそ変えないまでも激怒し、遠藤が洗いざらい白状するほどの威圧感を示した。その力は全国で知れ渡っており、通り名が「大関東」であることからも、その影響力の大きさがうかがえる。大阪や静岡でも作田の名を出すだけで不良が驚くほどである。ただし、物語当初は「雇われ番長」だという事で、大竹には侮られていた。何らかの格闘技を習得しているようで、眉間を突くだけで相手を昏倒させたり、腕を一時的に麻痺させたりする技を持つ。また、漁船の下敷きになり溺死しそうになっていた大竹を救うため、独力で船を陸に押し上げるなど、いざという時にはかなりの怪力をも発揮する。瞬が2回タイマンしたが、瞬は計1回パンチがかすったのみで、あえなく敗北した。如何なる状況でも自らの身よりも弱者を守る事を優先し、劇中受けた負傷は全て弱者を庇ってのものであるが、結果的にそれが当人の命取りとなってしまう。全国の番長界の情報をまとめた書類「作田ファイル」を残しており、たびたび海西高校で役立っている。卒業後も番長界に絶大な影響力を持ち続け、それゆえ梅林の暗殺計画に陥り、毒を注射されさらに拳銃で撃たれ、死亡した。死後も、海西の学生を始め、様々な人物がその名を畏敬し、その名のために行動し続ける、作中最大の偉人。
武藤(むとう)
副番。3年生。全登場人物中、もっとも身長が低く描かれている。


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