LSD_(薬物)
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リゼルグ酸ジエチルアミド (LSD)
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

(6aR,9R)- N,N- diethyl- 7-methyl- 4,6,6a,7,8,9- hexahydroindolo- [4,3-fg] quinoline- 9-carboxamide

臨床データ
胎児危険度分類

US: C




法的規制

AU: Prohibited (S9)

CA: Schedule III

UK: 規制薬物

US: スケジュールI

投与経路経口、点滴静脈注射、目、筋肉注射
薬物動態データ
代謝肝臓
半減期3?5 時間[1][2]
排泄腎臓
識別
CAS番号
50-37-3
PubChemCID: 5761
IUPHAR/BPS17
DrugBankDB04829
ChemSpider5558
UNII8NA5SWF92O
KEGGC07542
ChEBICHEBI:6605
ChEMBLCHEMBL263881
日化辞番号J9.239H
別名LSD, LSD-25,
lysergide,
D-lysergic acid diethyl amide,
N,N-diethyl-D-lysergamide
化学的データ
化学式C20H25N3O
分子量323.43 g/mol
SMILES

CCN(CC)C(=O)[C@H]1CN([C@@H]2Cc3c[nH]c4c3c(ccc4)C2=C1)C

InChI

InChI=1S/C20H25N3O/c1-4-23(5-2)20(24)14-9-16-15-7-6-8-17-19(15)13(11-21-17)10-18(16)22(3)12-14/h6-9,11,14,18,21H,4-5,10,12H2,1-3H3/t14-,18-/m1/s1

Key:VAYOSLLFUXYJDT-RDTXWAMCSA-N

物理的データ
融点80 - 85 °C (176 - 185 °F)
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リゼルグ酸ジエチルアミドまたはリゼルギン酸ジエチルアミド(: lysergic acid diethylamide)は、非常に強烈な作用を有する半合成幻覚剤である。ドイツ語「Lysergsaurediethylamid」の略称でLSD(エルエスディー)として広く知られている。

開発時のリゼルグ酸誘導体の系列における25番目の物質であったことからLSD-25とも略される。また、アシッド、エル、ドッツ、パープルヘイズ、ブルーヘブンなど様々な俗称がある。

LSDは化学合成されて作られるが、麦角菌ソライロアサガオハワイアン・ベービー・ウッドローズ等に含まれる麦角アルカロイドからも誘導される。

純粋な形態では透明な結晶[注釈 1] であるが、液体の形で製造することも可能であり、これを様々なものに垂らして使うことができるため、形状は水溶液を染みこませた紙片、錠剤、カプセル、ゼラチン等様々である。日本では1970年頃から密輸を容易にするため紙にLSDをスポットしたペーパー・アシッドが出回り始め[3]、LSDの代名詞となった。

LSDは無臭(人間の場合)、無色、無味で極めて微量で効果を持ち、その効用は摂取量だけでなく、摂取経験や、精神状態、周囲の環境により大きく変化する(セッティングと呼ばれる)。一般にLSDは感覚や感情、記憶、時間が拡張、変化する体験を引き起こし、効能は摂取量や耐性によって、6時間から14時間ほど続く。

日本では1970年に麻薬に指定された。
構造LSDの立体異性体

LSDはインドール核を有し、セロトニンノルアドレナリンドーパミンによく似た構造を持つ[注釈 2]。そのためLSDはセロトニン受容体に結合し、5-HT2のアンタゴニストとして、5-HT1Aと5-HT1Cのアゴニストとして働き、セロトニンの作用を阻害するために幻覚が起こると考えられている。逆にLSDの服用後にセロトニンを服用することで幻覚の発現を抑えることができる。ただし、2-ブロモ-LSDはLSDよりもセロトニンに拮抗するものの、かなり大量に投与してもサイケデリック効果は生じないため、確定的な説とは言えない[4]

LSDには立体異性体が存在し、それぞれd-LSD (d-lysergic acid diethylamide)、l-LSD (l-lysergic acid diethylamide)、d-イソ-LSD (d-iso-lysergic acid dithylamide)、l-イソ-LSD (l-iso-lysergic acid dithylamide) がある[5]。普通にLSDというときは右旋性のd-LSDを指し、他のものは薬理学的に不活性である[5]。また、LSDに似た働きをするリゼルグ酸アミドもいくつかあり、l-アセチル-LSD (ALD-52) はLSDの91%の効力を持ち、LSDの代用品としてしばしば売られる[6]。l-メチル-LSD (MLD-41) もLSDの36%の効力を持っている[7]

LSD分子は非常に脆弱なことで知られている。ごく微量の塩素によっても破壊されてしまい、空気中の酸素等の影響を受けると、iso-LSDへと変化し、光に晒されたことで分解されてできる物質lumi-LSDは、LSDと区別が非常に難しい上に不活性である[8]

ブラックライトに当てると強く青白く発光するため、本物かどうかの検定に使用されると言われるが実際は染み込んだペーパーのインクに反応するだけで液体や結晶はブラックライトに反応しない。ブラックライトに反応するというのは俗説である[9]
変遷
LSD誕生以前のリゼルグ酸化合物
宗教的儀式における使用麦角

薬物が化学合成される以前、向精神物質[注釈 3] は世界のいたるところで宗教的儀式において使用され、崇拝の対象になり、その酩酊作用から神話民話の題材になった。

シベリアオビ川イェニセイ川流域に住む諸部族はイボテン酸を含むベニテングタケを神聖な物として崇め、シャーマン儀式に用いていた[注釈 4]

メキシコ北部ではメスカリンを含むペヨーテが、メキシコ南部ではリゼルグ酸アルカロイドが含まれるオロリウキ(バドーネグロ)等、アサガオとその近縁種は神聖の植物とされ、シャーマンに用いられていた[11][12]

特にLSDに関係あるものとして、古代ギリシアアテネ郊外で西暦5世紀までの2000年間続けられたエレウシスの秘儀で使用されていた、情緒的作用を引き起こす飲み物キュケオンは、小麦ミントから製造され、この小麦麦角菌に由来するリゼルグ酸アルカロイドが含まれていたと考えられている[注釈 5]紀元前415年にアテナイアルキビアデスが友人を楽しませるためにキュケオンを振舞ったとして罰金刑を受けた事実が確認されている[14]

また、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパ各地で行われた魔女裁判について、裁判が行われた地域の多くが麦角の発生しやすいライ麦に依存していた地域であり、特に裁判数が増加した年の春と夏は湿度が高く、気温が低く麦角の生育に適した環境であったこと、魔術覚醒によって引き起こされたとされる症状や体験が麦角中毒の症例に似ていること等から、魔女裁判が麦角中毒を原因として引き起こされたとする説がある[15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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