LRVの質量は210kgで、月面での重量は35.0kgwになる。月面上でさらに490kgを運ぶことができるペイロードを備えている。フレームの長さは3.0mで、ホイールベースは2.3m、車高は1.1mである。フレームは2219本のアルミニウム合金のチューブで作られ、3つのシャーシが中央で蝶番で接続されているため、折りたたむことができる。シートもアルミニウムのチューブにナイロンの網を貼った構造で折りたたむことができる。シートの間にはアームレストが設置され、それぞれのシートには、調節可能なフットレストと面ファスナーのシートベルトが備えられた。大きなメッシュのアンテナがLRVの前面中央に設置された。
車輪と電源車輪のクローズアップ
車輪はゼネラルモーターズの防衛研究所によって作られた。フェレンツ・パヴリックスは、弾力性のある車輪を開発するため、NASAから特別な承認を与えられた[20]。この車輪は、アルミニウムのハブと直径81cm、幅23cmのタイヤで構成される。タイヤは、0.84mm径の亜鉛でメッキされた鉄でできた織物から作られた。摩擦を大きくするため、チタン製の板が接地面の50%を覆う。タイヤの中には、ハブを保護する直径65cmの衝突防止枠が設けられ、さらに塵除けが車輪の上から被せられた。それぞれの車輪には、デルコ・エレクトロニクス製の1万rpm、0.25馬力の電子モーターが取り付けられた。
運転は、前部と後部に配されたそれぞれ0.1馬力のモーターによって行われる。四輪操舵で、回転半径は3mになる。
電源は、2つの36ボルトの銀-水酸化亜鉛カリウム一次電池から供給され、それぞれが121 A・hの電力を持ち、92kmの範囲を走ることができた[15]。これらはモーターを動かすのに使われ、これとは別に36ボルトの電源がLRVの前面外側に取り付けられ、通信装置とテレビカメラの電源となっている。運転の間、ラジエーターはマイラー樹脂製のブランケットによって塵から守られているが、停止した際には、ブランケットを開けて積もった塵を手で払わねばならなかった。
コントロールとナビゲーションLRVの構造の略図(NASA)
2つのシートの間のT型のコントローラーによって、4つのドライビングモーターと2つのステアリングモーター、ブレーキが制御された。スティックを前に動かすとLRVは前に進み、左や右に倒すと、LRVも左や右に曲がる。後ろに引くとブレーキがかかる。スティックを引く前にスイッチを押すと、LRVは後ろ向きに進む。ハンドルの前面にはディスプレイがあり、速度、向き、勾配、電力、温度等の情報が表示される。
ナビゲーションは、方位指示計とオドメーターを用いて方位と距離を常に計測、記録し、このデータをコンピュータに送ることによって、出発地点からの軌跡を計算することによって行われる。また、太陽の影から太陽に対する方角を計算する装置も備えられた。 3度のミッションでは、それぞれのLRVが用いられた。 ミッション合計距離合計時間1度の運転での最長距離月着陸船からの最長距離 LRV運用上の制約として、もしLRVが船外活動中に故障した場合、宇宙飛行士は歩いて月着陸船に戻らねばならなかった。そのため、月着陸船からの最遠距離は、生命維持装置を使い果たす前に歩いて戻れる範囲になる。この制限は、LRVと宇宙服の信頼性が向上したことにより、アポロ17号の際には緩和された。BurkhalterとSharpの論文は、LRVの利用に関して詳細な情報を与えてくれる[21]。 これまで4台のLRVが製造され、そのうち3台が月を訪れ、月面に残された。最後の1台は、中止されたアポロ18号のために作られた。アポロ15号のLRVは、アペニン山脈のハドリー谷
利用
アポロ15号 (LRV-001)27.76 km3時間02分12.47 km5.0 km
アポロ16号 (LRV-002)26.55 km3時間26分11.59 km4.5 km
アポロ17号 (LRV-003)35.89 km4時間26分20.12 km7.6 km
現在の位置ルナー・リコネサンス・オービターによるアポロ17号着陸地点の画像
また、いくつかのLRVが試験、訓練、検証のために製造された。それらのモックアップは、シアトルの飛行博物館、ワシントンD.C.の国立航空宇宙博物館、ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センター、ヒューストンのジョンソン宇宙センター、ケープカナベラルのケネディ宇宙センターに展示されている[22]。またレプリカがフロリダ州ペンサコーラの国立海軍航空博物館、オレゴン州マクミンビルのEvergreen Aviation & Space Museum、カンザス州ハッチンソンのKansas Cosmosphere and Space Centerに展示されている。またスミソニアン博物館から貸与されたレプリカがフロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートエプコットにあるミッション:スペースというアトラクションに展示されている[22][23]。
メディア
LRVを操縦するアポロ16号のジョン・ヤング
地球で訓練するデイヴィット・スコットとジェームズ・アーウィン
出典[脚注の使い方]^ Bekker, Mieczyslaw G.; Theory of Land Locomotion, U. Michigan Press, 1956, and The Mechanics of Vehicle Mobility, U. Michigan Press, 1956 and 1962
^ von Braun, Wernher; “How We’ll Travel on the Moon,” Popular Science, February 1964, pp. 18-26
^ Young, Anthony; Lunar and planetary rovers: the wheels of Apollo and the quest for Mars; Springer, 2007, pp. 30-57; ISBN 0-387-30774-5
^ Bekker, Mieczyslaw G., and Ferenc Pavlics; “Lunar Roving Vehicle Concept: A Case Study”; GMDRL Staff Paper SP63-205, May 1963
^ ⇒"Molab," Encyclopedia Astronautics
^ Courter, Robert; “What It’s Like to Fly the Jet Belt,” Popular Science, Nov. 1969, pp. 55-59, 190
^ ”Lunar Shelter/Rover Conceptual Design and Evaluation,” NASA CR-61049, Nov. 1964.
^ ”Brown Builds Concept Of Lunar Vehicle,” BECO Views, Vol. 9, Jan. 1966, p. 1
^ ⇒"Filipino Inventors and Filipino Scientists"
^ Interviews with Otha H. “Skeet” Vaughan, Jr., MSFC test engineer (retired); also see Vaughan’s "Brief History of NASA Marshall Space Flight Center’s Lunar Mobility Program”; ⇒http://www.knology.net/~skeetv/SimHist.html
^ Wright, Mike and Bob Jaques, Editors, Saverio Morea, Technical Editor; ⇒“A Brief History of the Lunar Roving Vehicle,” 3 April 2002, MSFC History Office.
^ “Lunar Roving Vehicle,” MSFC press release, 29 October 1969; Marshall Star, 3 November 1969
^ a b Morea, Saverio F.; ⇒“The Lunar Roving Vehicle ? Historical Perspective”; Proc. 2nd Conference on Lunar Bases and Space Activities, 5-7 April 1988; NASA Conference Publications 3166, Vol. 1, pp. 619-632.
^ a b “The Apollo Lunar Roving Vehicle”, NASA Document.
^ a b Lyons, Pete; “10 Best Ahead-of-Their-Time Machines”, Car and Driver, Jan. 1988, p.78
^ ⇒”Experimental Operations During Apollo EVAs: Repairs to Experiments,” NASA Document.
^ ⇒”Moondust and Duct Tape,” NASA Document.
^ Baker, David; "Lunar Roving Vehicle: Design Report," Spaceflight, Vol. 13, July 1971, pp. 234-240
^ Kudish, Henry. "The Lunar Rover." Spaceflight. Vol. 12, July 1970, pp. 270-274
^ ⇒"NASA Certificate for Ferenc Pavlics for Inventing the Resilient Wheel" (from Hungarian University of Engineering).