LPG自動車
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日本の場合、1 L = 117.2円(2022年9月10日現在、店頭現金価格全国平均[16]) と他国同様ガソリン・軽油に比べて安価である。価格には国税である石油ガス税の9.8円/L(17円50銭/kg)を含むが、ガソリン税の53.8円/Lより低く、また消費税以外の地方税を課している地域はなく、ガソリンよりも割高になるケースはない。

過去の比較では、一例として、2007年11月時点でレギュラーガソリンは145円、軽油は121円であるのに対し、LPGは84.1円である[17]。2010年3月時点ではレギュラーガソリンは131.3円、軽油は110.5円に対し、LPGは85.0円(店頭現金価格)である[17]。天然ガスと比較すると、道路財源(道路特定財源制度)としての燃料課税は無税で、2007年4月の時点における東京地区の天然ガス価格は71.03-84.68円/Nm3となっている[18]

タクシーに乗った際の臭いは、ガス漏れ検知用の臭い成分が燃焼により化学変化を起こしているためだが、最近は自動車排出ガス規制強化で無臭になりつつある。排出ガス規制の強化前の車両であっても燃焼方式の近いガソリン車より排気の臭いは弱い。これは、ガソリン車は燃焼時にエンジンオイルの成分も取り込んで燃焼されるのに対し、LPガス車はこれが混ざらずに燃焼されるためである。
構造

LPG車はエンジン自体の作動原理は基本的にガソリン車と変わらず、燃料タンクからエンジンへの燃料供給装置までをLPG用としたものである。LPGのみを燃料とするもの(LPG専焼車)、LPGとガソリンを併用するバイフューエル車、LPGと電気を用いるLPGハイブリッド車に分けられる。トヨタ・プリウスなどガソリン・電気のハイブリッド車を改造し、LPG・ガソリン・電気を使えるものもある。
ガスタンク(ボンベ)

LPGは圧力をかけて貯蔵されることから、常温常圧で液体のガソリンや軽油のタンクとは異なり、燃料容器は圧力に耐え、気密性を保つ構造とされている。注入口は弁機構が設けられ、充填の際にノズルと密着する構造となっている。

その形状から、多くはガソリン車の燃料タンクが設置されている場所に置換できず、トランク部分に設置される。他には荷室の床下に吊り下げたり、客席ではない車内に設置されることもある。日本国外では後改造(レトロフィット)向けに搭載する車両に応じて形状の異なる製品が製造されていて、欧州ではトランク内のスペアタイヤのスペースに収まるように円錐曲線回転体の形状をしたタンク(トロイダルタンク、: toroidal tank)や分割して複数の小型容器を組み合わせたタンクが流通している[19]。充填式ではなくボンベ交換式の場合は、交換作業性も考慮された位置に設置される。車室内に設置された場合でも、ガソリンタンクではその給油方法などが原因となってタンク周辺に揮発したガソリンの匂いがすることが多いが、LPGタンクはその気密性から有意な匂いはほとんどしない。

欧州では、国際連合欧州経済委員会による法規(ECE Rgulation)で基準が定められ、LPG車の構造装置の基準は67号、レトロフィットシステムの基準は115号として、燃料容器も包括して一本化されている。日本では、車両構造が国土交通省管轄の「道路運送車両の保安基準」で定められているのとは別に、ガス容器は経済産業省管轄の「高圧ガス保安法容器保安規則」に分かれて基準化されている。そのため自動車検査登録制度とは別に、ガス容器の検査を6年毎(製造から20年未満の容器)あるいは2年毎(20年以上)に受けなければならない[20][21]。ただし初年度以降の車検が1年毎の車両(営業車・トラック等貨物車・バス)の場合、初回の容器検査に限り6年目の車検まで使用期限を延長(最長11か月)できる[22]。また、タクシーのように同一・同系車種が多く流通する車種の場合、使用中の車が容器期限を迎えた場合や期限切れの容器を搭載した中古車を入手した場合に、あらかじめ検査済みの容器と交換して済ませることが一般化している(現品検査の場合1週間前後かかる)。
燃焼ガス排気装置(マフラー)

排気管全体の材質や太さなどの構造は共通するが、ガソリン車とは排気ガスの特性が異なるため、触媒、消音装置なども固有のものとなる。エキゾーストマニホールドについては、構造は同一のものであっても触媒一体型で生産されるケースが多いため固有部品となる。
燃料供給装置レトロフィットインテークマニホールドと液状噴射用インジェクターベーパライザー(強制気化器)LPGデリバリーモジュールと気体噴射用インジェクター

エンジンにLPGを送る装置には、旧来の「ガスミキサー方式」(ガソリン車のキャブレター方式に相当)と、「インジェクション(燃料噴射)方式」がある。インジェクション方式はLPGを一度気化させてから噴射する気体噴射方式(VPI)と、液状のまま噴射する液体噴射方式(LPI)に分かれる。
ガスミキサー

ガスミキサーは古くから用いられている方式である。ボンベから液体で取り出したLPGを一度気化させ、「ガスミキサー」で気化したLPGと空気を混合、エンジンに吸入するものである。LPG供給量は吸入空気の量に応じて調節される。

主要構成は燃料遮断弁(: fuel lock off)、レギュレーター/ベーパーライザー(気化・調圧弁。: pressure regulator / vaporizer)、ガスミキサー(: carburator)からなり、燃料遮断弁はエンジン停止中に液体のLPGが流出しないように止める弁機構、レギュレーター/ベーパーライザーはLPGを気化させて、一定圧力に保つ装置、ガスミキサーはエンジンへの吸入空気の流量に応じてLPGを混合する装置である[23]気化の際の蒸発熱(気化熱)を与えるために、ベーパーライザーには冷却水流路を設けられ、エンジンの廃熱を利用して温められている[23]

後述の電子制御燃料噴射方式と比較すると運転状況に即した燃料供給の精度が低く、燃費や出力の点で不利である[24]。ただし、インジェクション化以前にもガスミキサーを電子制御化したものは存在していた。
ガス・インジェクション

ガソリンエンジンと同様に、マルチポイントインジェクションを採用することでガスミキサー方式と比較して性能向上が図られている。LPGを気化させてから噴射する気体噴射方式(VPI)と、LPGを液状のまま噴射する液体噴射方式(LPI)とがある。
気体噴射方式(VPI)
気体噴射方式では、タンクから液体で取り出したLPGを、ベーパライザーで冷却水の熱を利用して温めて強制的に気化させるまではガスミキサー方式と同じで、気化させたLPGをインジェクターで噴射する[25]
液体噴射方式(LPI)
液体噴射方式では、タンクから液体で取り出したLPGを液状のまま噴射する。利点は、シリンダー内で気化する際の膨張圧力を出力として利用できる点や、蒸発潜熱によって吸入空気が冷却されて空気密度が高くなり、燃焼効率が向上する点である[26]


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