この項目では、音響情報の記録メディアについて説明しています。その他の用法については「レコード (曖昧さ回避)」をご覧ください。
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シングルレコード盤(ドーナツ盤ともいわれる)
レコード (record, vinyl record, 英語版ではgramophone record
)とは、音声記録を意味し、主に樹脂などでできた円盤(最初期には円筒状の蝋管レコードを含む)に音楽や音声などの「振動[1]」を刻み込み記録したメディアの一種を示すことが多い。音盤などその他の呼び方で呼ばれることもある。記録された音を音として聴ける状態にすることを「再生」という。まず、1.記録された「音の振動の振幅」を取り出すことで「音」が復元できる。しかし、狭い場所にコンパクトに記録された振動の変化量はわずかの変化量なので、2.人間にあった音量まで振幅量を大きくする「増幅」をおこなうことが初期の段階から必要であった。
後者の方法の歴史的発展段階で区分し、「針で読み取った振幅の情報」を、機械的に増幅する蓄音機の時代、と、電気信号に変えて増幅するレコードプレーヤーの時代に大まかに分類することができる。目次 語源は「記録」という意味の英語"record"である。「記録」の意味と混同されないためや、コンパクトディスクなどデジタルメディアと区別するためにアナログレコード、アナログディスク(ADとも)などとも呼ぶ。また、SP(SPレコード、SP盤とも。以下同様)、LP、EPと規格で呼んだり、シェラック、バイナル(ビニールの英語的発音)と材料で呼んだり、回転数によって78回転、45回転、33回転、16回転と呼んだり、7インチ・10インチ(25センチ)・12インチ(30センチ)と盤の大きさで呼ぶこともある。なお、1950年代以降塩化ビニールがレコードの材料の主力となったが、ボイジャーに搭載されたレコード(銅製)に代表されるように、レコード全てがビニール製というわけではない。 世界で初めて実際に稼動した、再生可能なレコードは、エジソンが 1877年12月6日(のちの「音の日」)に発明した「フォノグラフ」である。直径8cmの、錫箔を貼った真鍮の円筒に針で音溝 これに対し 1887年には、エミール・ベルリナーが「グラモフォン」を発明した。最大の特徴は水平なターンテーブルに載せて再生する円盤式であることで、発端はエジソンの円筒式レコード特許の回避のためだったが、結果として、円筒式より収納しやすく、原盤を用いた複製も容易になった。中央の部分にレーベルを貼付できることも、円筒式にない特長だった。CDやDVDやBDにつながる円盤型メディアの歴史は、このとき始まったと言える。さらにベルリナーは、記録面に対し針が振動する向きを、従来の垂直から水平に変更した。これにより音溝の深さが一定になり、音質が向上した。 エジソンもこれに対抗し、円筒の素材を蝋でコーティングした蝋管に変更し音質を向上させた。蝋が固まるときに収縮することを利用した、鋳造による複製方法も発明したが、量産性は円盤式には及ばなかった。 当初、アメリカではエジソンが、ヨーロッパではベルリナーが市場を支配した。円盤式は円周から中心に向かって半径が小さくなっていくので、音の情報は円周近くでは長い弧にわたってゆったりと記録されるが、中心近くでは短い弧の中にぎっしりと記録されることになり、音の質が円周近くと中心近くで変化する欠点を持ったものの、円盤式は同一音源の大量複製生産に適していたうえ、両面レコードの発明などもあり、最終的にベルリナーの円盤式レコードが市場を制した。なお、円筒式の記録媒体は音楽レコードとしては姿を消したがテープレコーダーの実用化まで簡易録音機、再生機としては使われ続け、後に、初期のコンピュータの補助記憶装置(磁気ドラム。ハードディスクドライブの先祖に当たる)に使われたことがある。 初期の円盤式レコードは回転数が製品により多少異なったが(更に再生する側の蓄音機も初期はぜんまい駆動が大勢を占めていたため、ターンテーブル回転速度の均質化が容易でなかった)、定速回転できる電気式蓄音機の発明により、後にSP(Standard PlayingまたはStandard Play)レコードと呼ばれる78回転盤(毎分78回転)がデファクトスタンダードとなった。 また、初期の円盤式レコードは、ゴムやエボナイトなどが原料といわれているが、やがてカーボンや酸化アルミニウム、硫酸バリウムなどの粉末をシェラック(カイガラムシの分泌する天然樹脂)で固めた混合物[2]がレコードの主原料となり、シェラック盤と呼ばれた。しかしこの混合物はもろい材質で、そのためSPレコードは摩耗しやすく割れやすかった。落とすと瓦のように割れやすいことから、俗に「瓦盤」と呼ばれたほどである[3]。 併用する再生装置のサウンドボックスの重量も相当あり、レコードを摩滅より守るため針の交換に重点が置かれ、レコード一面再生のたびに鋼鉄針を交換する必要があった。音量はサウンドボックスのサイズ、および針のサイズで調節され、大音量確保には盤の摩耗が避けられなかった。レコード盤の磨滅防止と針の経済性を配慮し、鉄針以外の材質を針に使用する実用例も生じた。柱サボテンのトゲを加工した「ソーン針」(thorn needle) が欧米などで流通し、日本では材質の軟らかい竹を使った「竹針」が広く用いられた(この種の植物性針は、いずれも蓄音機メーカーが供給していた)。植物性の針は絶対的な音量が鋼鉄針に劣るが、刃物で先端を削って尖らせることである程度再利用でき、レコード盤も傷めにくく、繊細な音質が珍重されもした。
1 呼称
2 略史
2.1 初期のレコード
2.2 円盤式レコードの発達
2.3 ビニール盤(バイナル)の出現
2.3.1 LPレコードの発売
2.3.2 シングル・レコードの発売
2.3.3 LPとシングル盤の共存
2.4 メディア媒体としての衰退・転化
2.5 レコードの復活
3 レコードの生産
4 レコードの諸形態
4.1 レコード盤の形状
4.1.1 SP盤
4.1.2 LP盤
4.1.3 7インチシングル盤
4.1.4 EP盤
4.1.5 コンパクト盤
4.1.6 12インチシングル盤
4.2 溝の形状
4.2.1 モノラル盤
4.2.2 バイノーラル盤
4.2.3 45-45方式ステレオ盤
4.2.4 V-L方式ステレオ盤
4.2.5 4チャンネルステレオ盤
4.2.6 HD Vinyl
4.3 A面/B面
4.4 ソノシート
4.5 外観上のバリエーション
5 記録特性
6 他の類似媒体との比較
7 その他
8 CD時代のレコード
9 レコード製作に携わる人々
10 符号位置
11 脚注
12 参考文献
13 関連項目
14 外部リンク
呼称
略史が発明した「フォノトグラフ」である。スコットは、振動板に豚の毛をつけ煤を塗り、音声を紙の上に記録させた。再生装置がなかったため、フォノトグラフは実用にはつながらなかったが、1876年、グレアム・ベルが電話機を発明したことにより再生の目処がつき、複数の研究者が再生可能なレコードの発明に取り掛かった。
初期のレコード
円盤式レコードの発達