J・R・R・トールキン
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その母は1904年糖尿病で亡くなり、トールキンは母が信仰の殉教者であったと思うようになった[14]。この出来事はカトリックへの信仰に深い影響をもたらしたようで、信仰がいかに敬虔で深かったかということは、C・S・ルイスキリスト教に改宗させた際にもよく現れている。しかしルイスが英国国教会を選び大いに失望することになった[15]バーミンガムのエッジバーストンの塔の影

孤児となったトールキンを育てたのは、バーミンガムのエッジバーストン地区(英語版)にある、バーミンガムオラトリオ会(英語版)のフランシス・シャヴィエル・モーガン(英語版)司祭であった。トールキンはPerrott's Follyとエッジバーストン水道施設(英語版)のビクトリア風の塔の影に住むことになる。この頃の住環境は、作品に登場する様々な暗い塔のイメージの源泉となったようである。別に強い影響を与えたのは、エドワード・バーン=ジョーンズラファエル前派ロマン主義の絵画だった。バーミンガム美術館には、大きくて世界的に有名なコレクションがあり、それを1908年頃から無料で公開していた。
青年時代

16歳のときに3歳年上のエディス・メアリ・ブラットと出会い、恋に落ちた。だがフランシス神父は、会うことも話すことも文通することも21歳になるまで禁じ、この禁止に忠実に従った[16]

1911年、キング・エドワード校に在学中の3人の友人のロブ・キルター・ギルソン、ジェフリー・バッチ・スミス、クリストファ・ワイズマンと共に、半ば公然の「秘密結社」である「T.C.B.S.」を結成した。これは、学校の近くのバロウズの店(英語版)や学校図書館で不法にお茶を飲むことを好むことを示す「ティー・クラブとバロヴィアン・ソサエティ」の頭文字を取った名である[17]。学校を去った後もメンバーは連絡を保ち続け、1914年12月にロンドンのワイズマンの家で「協議会」を開いた。トールキンは、この出会いから詩を作りたいと強く思うようになる。

1911年夏、友人たちとスイスに遊びに行ったが、1968年の手紙[12]にその生き生きとした記録が残されている。彼ら12人がインターラーケンからラウターブルンネンまでを縦走し、ミュレンの先の氷堆石まで野営しに冒険したことが、(「石と一緒に松林まで滑ることを含めて」)霧ふり山脈を越えるビルボの旅のもとになっていることを指摘している。57年後まで、ユングフラウとシルバーホルン(英語版)(「私の夢の銀枝山Silvertine(ケレブディル)」)の万年雪を見て、そこから去るときの後悔を覚えていた。彼等はクライネ・シャイデックを越えグリンデルワルトへ向かい、グレッセ・シャイデック(英語版)を過ぎてマイリンゲン(英語版)に、さらにグリムゼル峠を越え、アッパーヴァレーを通りブリーク、そして、アレッチ氷河ツェルマットに着いた。

21回目の誕生日の晩、エディスに愛を告白した手紙を書いて、自分と結婚するように彼女に頼んだが、返信には「自分を忘れてしまったと思ったので、婚約した」とあった。ふたりは鉄道陸橋の下で出会い、愛を新たにする。エディスは指輪を返し、トールキンと結婚する道を選んだ[18]1913年1月にバーミンガムで婚約後、エディスはトールキンの主張に従いカトリックに改宗した[19]1916年3月22日イングランドウォリックで結婚した[20]

1915年に優秀な成績で英語の学位を取り(エクセター学寮で学んでいた)オックスフォード大学を卒業後、第一次世界大戦時にイギリス陸軍に入隊し、少尉としてランカシャー・フュージリアーズの第11大隊に所属した[21]。部隊は1916年にフランスに転戦し、トールキンもソンムの戦いのあいだ、同年10月27日に塹壕熱を患うまで通信士官を務め、11月8日にイギリスへと帰国した[22]。多くの親友同然だった人々も含めて、自軍兵士たちが激戦で次々と命を落した。スタッフォードシャー、グレート・ヘイウッドで療養していた間に、「ゴンドリンの陥落」に始まる、後に『失われた物語の書』と呼ばれる作品群についての着想が芽生え始めたとされる。1917年から1918年にかけて病気が再発したが、各地の基地での本国任務が行なえるほど回復し、やがて中尉に昇進した。 ある日キングストン・アポン・ハルに配属されたとき、夫婦でルース(英語版)の近くの森に出掛け、そして、エディスは彼のためにヘムロックの花の咲いた開けた野原で踊り始めた。「私たちはヘムロックの白い花の海の中を歩いた」[* 4]。この出来事から、トールキンはベレンルーシエンの出会いの話の着想を得、彼がしばしばエディスを彼のルーシエンと呼んだ[23]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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