ITゼネコン
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ITゼネコンとは、建設業界のゼネコンと同じように、情報処理産業において官公需を寡占する大手のシステムインテグレーター(SIer)のこと。またはそれらが形成する多重の下請け構造のことである。目次

1 概説

2 スキャンダル

3 ITゼネコン登場の背景

4 ITゼネコンの弊害

5 政府調達制度の改革

6 脚注

概説

ゼネコンとは、元請負者として工事を一式で発注者から直接請負い、工事全体のとりまとめを行う建設業者を指す。現在の日本では、建設業界と同様に、IT業界においても元請け、下請け、孫受けの多重構造が形成されている。

NTT系列や国内大手ITベンダー(日立NEC富士通)の三社、外資系ITベンダー(IBMHPOracleなど)系列のSIerが大手の顧客を囲い込み、インフラ構築からコンピュータ機器の設置、納入後の運用メンテナンスに至るまでを一括受注して利益を得ており、実際のプログラミングやテスト作業を中小のSIerに丸投げしている状態となっている[1]。このようなIT業界の構造を揶揄して、「ITゼネコン」という用語が批判的文脈で使用されるケースが近年多くなってきている(なお、下請けのプログラマは「デジタル土方」という言葉で揶揄されている)。また、システムの規模の計算は、人数と日数の掛け算の「人月計算」という単純な方法で金額が決められて発注が行われるため、この点においても建設業界のゼネコンの構造と類似している。

そして何より、官公需の独占がある。経済産業研究所の報告書によると[2]、平成13年度の政府調達において、NTTグループで全体のシェアの4割、ITゼネコン大手4グループ(NTTグループ、日立グループNECグループ富士通グループのいわゆる「旧電電ファミリー企業」[3])で6割、ITゼネコン大手10グループで8割を受注している。政府調達は巨額であり、市場規模は中央官庁地方自治体を合わせて約2.2兆円にのぼる。これは日本のIT産業の約2割のシェアを占める。
スキャンダル

1989年(平成元年) - 富士通が広島市水道局のシステムを1円入札したことが発覚した[4]

1997年(平成9年) - オウム真理教の関連会社が、日本国政府機関や大企業が絡むコンピューターシステムのソフト開発業務を受注していたオウム真理教ソフト開発業務受注問題が発覚した。

2001年(平成13年) - 公正取引委員会NTTデータ、日本IBM、日本ユニシス松下通信工業に対して、超安値落札が不当廉売(独占禁止法第19条6項)に当たる恐れがあるとの注意を行った[5]。NTTデータは当初予算5億5210万円のシステムを1万円で落札したとされる。

2002年(平成14年) - 公正取引委員会はNTTデータ、日立、富士通に対して超安値落札が不当廉売(独占禁止法第19条6項)に当たる恐れがあるとの警告を行った[6][7][8]

2007年(平成19年) - 年金記録問題が発覚。1967年度以来、1兆4000億円を費やしたシステム運用にかかる不備、システム化される以前の記録管理の杜撰さが顕在化された。NTTデータは1兆632億円、日立は3558億円を売り上げる一方で、15人の天下りを受け入れていた[9]

ITゼネコン登場の背景

通常、大手企業や官公庁の仕事を受注するには経営規模が大きい方が有利である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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