ISO9002
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ISO 9001取得を掲示する倉庫(築地市場

ISO 9000シリーズないし、ISO 9000ファミリーとは、国際標準化機構 (ISO) による品質マネジメントシステムに関する規格の総称で、その中核をなす規格はISO 9001である。もともと、現在のISO 9001の前身となる規格が事業所の性格に応じてISO 9001、ISO 9002、ISO 9003に分かれていたことや、現在でも関連の規格が9000番台である物が中心になっているので、まとめてISO 9000シリーズと呼ばれる。認証の対象となる規格はISO 9001である。
目次

1 品質の定義

2 ISO 9000の歴史

2.1 品質マネジメントシステムの始まり

2.2 非軍事的分野での品質マネジメントシステム

2.3 ISO 9000シリーズの制定と改訂


3 旧ISO9001、ISO9002、ISO9003および現行のISO9001

3.1 特徴

3.2 八つの品質マネジメント原則

3.3 ISO 9001:2000の構成


4 検証と妥当性確認(Verification and Validation)

5 他のISO 9000シリーズの規格

6 ISO 9000シリーズを取り入れた産業別の独自規格

7 脚注

8 参考文献

9 関連項目

10 外部リンク

品質の定義

品質という言葉が使われた歴史は古代ギリシャにまでさかのぼる。アリストテレスは何かを一般的に評価する基準として、数値、関係、組成、場所、時間などと一緒に品質を挙げている[1]。現在においては品質という単語は様々な意味に用いられている。文脈に応じた具体的な例としては、耐久性を意味することもあれば、信頼性を意味することもあり、時には高級であることも該当する。

ISO 9000シリーズでは、品質を種々の本質的なひとまとまりの特質が要求事項を満たしている度合い[2]、と定義している。日常会話では、すぐに壊れるなどの理由で使い勝手の悪いことを指して品質が悪いということがある。しかし、ISO 9000:2005の品質の定義によれば、使い勝手の悪いことと品質の良し悪しは無関係である。あくまで要求事項を満たしていれば、それはよい品質のモノということになる[3]

要求事項として考えられるものはさまざまである。一般に品質は、四つの種類に分けることができ[4]、それぞれの場合について要求事項の具体的内容は次のようになる。
企画の品質: 製品で実現しようとしている特性に対する顧客の要求。

設計の品質: 企画の段階で検討された特性の水準や品質仕様。

製造の品質: 図面・仕様書などの設計文書。

サービスの品質: 調整、据え付け、消耗品の補給、不良品などへの対応に対する顧客の要求。

品質は製品に対する評価の基準の一つであるが、製品とは実体のある工業製品には限らない。ISO 9000シリーズでは、製品(product)を、プロセスの成果、と定義し、それには輸送やソフトウェアなどの顧客に無形で提供されるものも製品に含めている[5]。ISO 9000シリーズで使われている「製品」(product) という単語をこのような意味として理解すれば、ISO 9000シリーズは製造業に限らずサービス業にも適用することができ、実際適用されている。
ISO 9000の歴史
品質マネジメントシステムの始まり

品質が現代的な意味で重要になったのは、流れ作業による大量生産が始まった20世紀に入ってからのことである。それまでは熟練工が個々の部品をそれぞれが組み合うように修正しながら組み立てていたが[6]、流れ作業による大量生産では作業員は決められた作業に集中して遂行する方法がとりいれられた。例えば、ヘンリー・フォードの時代のフォードでは、原材料や工具の受領、設備のメンテナンス、品質管理などは、組み立て作業とは独立して、専門のグループが行うような組織が編成された[7]。このような流れ作業による大量生産を実現するもっとも重要なポイントは、ベルトコンベアではなく、完全で一貫した部品の互換性である[8]。その理由として、どの部品もそのままで互いに組み合わなければそもそも流れ作業が成り立たないからである。品質管理が重要になったのはそのためである。

製品・部品の個々の特性を個別に管理するだけでなく、品質マネジメントシステムとして、品質を管理・維持する仕組みを整える考え方は、最初は軍の資材調達で取り入れられている。1959年には、アメリカ軍がサプライヤーに対する要求としてMIL-Q-9858 「品質マネジメントプログラム」を作成した。これはアメリカ海軍のMIL-Q-21549やアメリカ空軍のAF1523を基に作られたもので、その後の1963年に、MIL-Q-9858Aに改定された。続いてNATOでも1968年にAQAP-1が制定された。
非軍事的分野での品質マネジメントシステム

軍事分野以外では、例えば、原子力エネルギーの分野で1971年にANSI N45.2 「原子力発電所に関する品質保証プログラムの要求事項」が制定された。これは原子力発電所の設計・建設における品質保証プログラムを計画・実施する際の要求事項をまとめたものである[9]。これは1977年にANSI 45.2-1977 「原子力機器に関する品質保証プログラムの要求事項」として、広く原子力産業の設備に適用できるように改められた。

1974年、イギリスでは英国規格協会(BSI)が産業界からの要望に応えてBS 5179「品質保証システムの運用と評価の指針」を発表した。そして、このBS 5179の制定に刺激されて各業界がそれぞれ独自の指針を作成し始めるようになった。 この状態は1977年に全国経済開発局のレポート「技術産業における規格と仕様で報告され、同時に統一規格の作成が勧告された[10]。この勧告を受けて作成され、1979年に制定された規格がBS 5709「品質システム」である。BS 5709は3部構成をなしており、第一部は「設計・製造・据付のための仕様」、第二部は「製造・据付のための仕様」、第三部は「最終検査および試験のための仕様」となっていた。
ISO 9000シリーズの制定と改訂

一方、ISOでも品質管理システム規格の制定のためにISO/TC176技術委員会が1979年に組織される[11]。 まず最初に、ISO 8402:1986「品質-用語」が制定された。これがISO 9000シリーズの始まりである。ISO 9001「品質システム-設計・開発、製造、据付における品質保証のためのモデル」、ISO 9002「品質システム-製造、据付における品質保証のためのモデル」、ISO 9003「品質システム-最終検査及び試験における品質保証のためのモデル」、ISO 9004「品質マネジメントおよび品質システムの要素-指針」はそれぞれ1987年に制定された。これらはBS 5709を基に作成されたものである。ISO 9001、ISO 9002、ISO 9003は、BS 5709の第一部、第二部、第三部にそれぞれ対応する。ISO 9004は、1981年にBS 5709に付け加えられた第四部から第六部をまとめたものに相当する[12]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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