ISIL
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また、ISILによる日本人拘束事件で2015年1月24日に、ISILが湯川遥菜を殺害したとするメッセージをウェブサイトで表明して騒がれた翌25日、略称にすることもなく「イスラム国」という言葉を連呼しているメディアに対して、危機感を募らせたイスラム教団体名古屋モスクが、アル=アズハル大学の声明を元に「イスラム国という名称の変更を希望する」旨を題した文書を発表した[51][52]

後藤健二を殺害する動画が配信された2015年2月1日以後は、日本国内にある複数のモスクに対し、電話や電子メールで嫌がらせが相次いだ[53][54]。このため2015年2月9日、およそ30のモスクの代表者やイスラム団体などとの連名で、併せて21のメディアに対して、同じ文書を送付し「イスラム国」表記を止める様、要望書を提出した[51]

2015年2月4日には、駐日本国トルコ共和国大使館も以下のような声明を出し、日本のメディアに協力を求めている[55]。 今回の事件でもイスラム諸国とその国民が、様々な形でこの卑劣な蛮行を強く非難しました。しかし、日本のマスメディアが最近の報道のなかで、この蛮行に及んだテロ集団を「イスラム国」と表現していることが非常に残念であり、誤解を招きかねない表現であると強く認識しています。テロ集団の名称として使われるこの表現によって、イスラム教、イスラム教徒そして世界のイスラム諸国について偏見が生じ、日本滞在のイスラム教徒がそれに悩まされています。いわば、これも一種の風評被害ではないかと思われます。平和を重んじるイスラム教の宗教名を汚す、この「イスラム国」という表記を、卑劣なテロ行為を繰り返す一集団の組織名として、どうか使用されないよう切に願います。世界の他の国々において「イスラム国」ではなく、DAESH、ISIL等の表現を用いる例があるように、このテロ組織に関する報道で、誤解が生じない表現の仕方について是非検討いただき、イスラム教徒=悪人を連想させるようなことがないよう配慮いただきたいところです。 ? 駐日本国トルコ共和国大使館、2015年2月4日

これらの要請を受け、日本放送協会(NHK)では2015年2月13日夜から「イスラム国」という呼称の使用を取りやめ、『過激派組織IS=イスラミック・ステート』という表現に変更した[56]

『朝日新聞』『東京新聞』『毎日新聞』では、記事中の初出では『イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)』として残し、2回目以降は「IS」と略した[52][57]毎日新聞は「この変更が最善の表記という確信はないものの、「イスラム教の国」のように、単純な誤解をされないよう工夫していきたい」としている[48]

民間放送局では、TBSラジオの朝のニュース系情報番組『森本毅郎・スタンバイ!』で、2015年2月3日の放送分までは「イスラム国」と呼んでいたが[58][59]、2015年2月4日の放送分から「『イスラム国』を名乗る過激派組織=ISIL(アイシル)」と変更している[60]

大阪市のフジテレビ系列局・関西テレビ放送の自己批評番組『カンテレ通信』は2015年2月15日放送で「外国メディアは『イスラム国』とは呼んでいないのに、なぜ日本メディアは『イスラム国』と表記するのか」という視聴者の意見に対し、同局報道番組部は「国と名乗っているが国際社会は国家と認めていないため、フジテレビ系列では『イスラム過激派組織、イスラム国』と紹介している」と回答。これに対し、番組コメンテーターの若一光司わかぎゑふは番組内で、前述のイスラム教団体が名称変更を要望していることなどに触れ、「イスラム教と混同する人が多いため『イスラム国』表記はやめるべきだ」と述べた[61]

なお、『南ドイツ新聞』『ル・モンド』『エル・パイス』など欧州大陸諸国の主要紙では「イスラム国[62][63][64]」に当たる表現を略称と併用しつつも用いている。したがって上記の「外国のメディアは『イスラム国』とは呼んでいない」という指摘は不正確であるという点は注意が必要である。

世界気象機関では2015年4月17日、太平洋北東部に発生するハリケーンの命名リストからIsis(イシス)を外し、2016年のリストからは代わりに「Ivette(イヴェッテ)」を使うと発表した[65][66]

非イスラム圏のムスリムを中心に[67]、世界各国のイスラム教団体が、ISILはイスラム教ではないと主張している[68][69][70][71][72]。一方、エジプト政府が最高位の法学者と認定したシャウキー・アッラームやアル=アズハル大学総長アフマド・タイイブなど、イスラム圏のイスラム法学者には、ISILはイスラムではないとは言い切れないとしている者もいる[67]
政治

全盛期には、アブー・バクル・アル=バグダーディーを最高指導者とし、「財務担当」「国防担当」「広報担当」という役割を持つ行政機関の「評議会」が存在した。さらにその下にはシリア担当とイラク担当の副官が半数ずつおり、副官に任命された24人の県知事がその下におり、彼らが支配地に配属され治安や徴税などを行っている[73]。「評議会」の構成員にいるのは旧イラク軍(英語版)元将校や政治、行政経験のあるバアス党員などイラク人である。サッダーム・フセイン政権時代の元将校や元政治家が現指導体制の中核を担っており[74]、バグダーディーの下の最高指導部に「シリア担当」のアブー・アリー・アンバーリー(旧イラク軍少将、2015年12月12日シリアでイラク軍の空爆で殺害)と「イラク担当」のアブー・ムスリム・トゥルクマーニー(旧イラク軍中佐、2015年8月18日モスルで殺害)がおり、どちらも旧イラク軍将校である。

ISILの広報担当が主張するには、「これはムスリムの国だ。抑圧されたムスリム、孤児、夫と死別した女性、そして貧困にあえぐ人たちのための国だ」「イスラム国の人々は生命と財産の安全を保障され、(従来の国境を越えてビザなしで)自由に移動できる」と主張している。この言葉はシリア内戦で疲れ果てた人たちの心をつかみ、ISILに支配された当初、これを歓迎した住民もいる。


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