ISIL
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『朝日新聞』『東京新聞』『毎日新聞』では、記事中の初出では『イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)』として残し、2回目以降は「IS」と略した[52][57]毎日新聞は「この変更が最善の表記という確信はないものの、「イスラム教の国」のように、単純な誤解をされないよう工夫していきたい」としている[48]

民間放送局では、TBSラジオの朝のニュース系情報番組『森本毅郎・スタンバイ!』で、2015年2月3日の放送分までは「イスラム国」と呼んでいたが[58][59]、2015年2月4日の放送分から「『イスラム国』を名乗る過激派組織=ISIL(アイシル)」と変更している[60]

大阪市のフジテレビ系列局・関西テレビ放送の自己批評番組『カンテレ通信』は2015年2月15日放送で「外国メディアは『イスラム国』とは呼んでいないのに、なぜ日本メディアは『イスラム国』と表記するのか」という視聴者の意見に対し、同局報道番組部は「国と名乗っているが国際社会は国家と認めていないため、フジテレビ系列では『イスラム過激派組織、イスラム国』と紹介している」と回答。これに対し、番組コメンテーターの若一光司わかぎゑふは番組内で、前述のイスラム教団体が名称変更を要望していることなどに触れ、「イスラム教と混同する人が多いため『イスラム国』表記はやめるべきだ」と述べた[61]

なお、『南ドイツ新聞』『ル・モンド』『エル・パイス』など欧州大陸諸国の主要紙では「イスラム国[62][63][64]」に当たる表現を略称と併用しつつも用いている。したがって上記の「外国のメディアは『イスラム国』とは呼んでいない」という指摘は不正確であるという点は注意が必要である。

世界気象機関では2015年4月17日、太平洋北東部に発生するハリケーンの命名リストからIsis(イシス)を外し、2016年のリストからは代わりに「Ivette(イヴェッテ)」を使うと発表した[65][66]

非イスラム圏のムスリムを中心に[67]、世界各国のイスラム教団体が、ISILはイスラム教ではないと主張している[68][69][70][71][72]。一方、エジプト政府が最高位の法学者と認定したシャウキー・アッラームやアル=アズハル大学総長アフマド・タイイブなど、イスラム圏のイスラム法学者には、ISILはイスラムではないとは言い切れないとしている者もいる[67]
政治

全盛期には、アブー・バクル・アル=バグダーディーを最高指導者とし、「財務担当」「国防担当」「広報担当」という役割を持つ行政機関の「評議会」が存在した。さらにその下にはシリア担当とイラク担当の副官が半数ずつおり、副官に任命された24人の県知事がその下におり、彼らが支配地に配属され治安や徴税などを行っている[73]。「評議会」の構成員にいるのは旧イラク軍(英語版)元将校や政治、行政経験のあるバアス党員などイラク人である。サッダーム・フセイン政権時代の元将校や元政治家が現指導体制の中核を担っており[74]、バグダーディーの下の最高指導部に「シリア担当」のアブー・アリー・アンバーリー(旧イラク軍少将、2015年12月12日シリアでイラク軍の空爆で殺害)と「イラク担当」のアブー・ムスリム・トゥルクマーニー(旧イラク軍中佐、2015年8月18日モスルで殺害)がおり、どちらも旧イラク軍将校である。

ISILの広報担当が主張するには、「これはムスリムの国だ。抑圧されたムスリム、孤児、夫と死別した女性、そして貧困にあえぐ人たちのための国だ」「イスラム国の人々は生命と財産の安全を保障され、(従来の国境を越えてビザなしで)自由に移動できる」と主張している。この言葉はシリア内戦で疲れ果てた人たちの心をつかみ、ISILに支配された当初、これを歓迎した住民もいる。ラッカが支配下に置かれた時、住民たちはお祭り騒ぎになったという[75]

ISILには、これらの体制がイスラム法と合致しているか審査する宗教機関が存在する。仮に現体制がシャリーアイスラム法)に背いた場合、退陣を迫る権利を有しているという[76]。シャリーアの厳格な運用で戒律が極端に厳しく、酒、タバコが厳禁、女性には全身を隠し目だけを出す黒い服装の着用を義務付け、一人での外出も禁止、さらに夜7時以降は男女を問わず全員外出禁止令を発令。「ヒスバ」と呼ばれる宗教警察が市民を監視し、検問所を各所に設け、住民の出入りは厳格に管理される。警察官らは自動車で巡回し、警戒する。肌を露出している女性を見かけるとその場で鞭打ち100回の刑を課し、飲酒や喫煙が発覚すると刑務所へ入れられたり、指を切り落とされたりする。こうした厳罰により住民に恐怖心を植え付けることで支配していると『週刊新潮』は分析している[73]

イラク、イラン、シリア弱体化を狙うサウジアラビア王族バンダル・ビン・スルターン(又はその背後のサウジアラビア総合情報庁)が陰から資金提供をしていたとも言われ、イランや駐シリア・ヨルダン大使、一部のジャーナリスト、(2013年10月時点では)学者は、バンダルこそがアルカイダやISILなどの過激派の真の指導者だと主張していた[77][78][79]。ただし、バンダルが解任された2014年頃からそれまでISILを静観してきたサウジアラビアもISILを非難するようになった(#対外関係)。
行政
役所、裁判所、警察署などの行政機関は従来からの建物を使用しているが、職員の多くはISIL側の人間に代わっている。ただし発電所、浄水場など専門知識を要する施設では、元の職員がそのまま勤務している。ジャラーブルス(アラビア語版、英語版)やマンビジュといった町はユーフラテス川という水源から近いため水道は常時使えるが、電気の使用は1日3?4時間に制限されている。また、ラッカでは電気、水道ともに1日3時間程度しか使えない状況である[73]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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