ISILはイスラム国家樹立運動を行う、元アルカーイダ系(現在は絶縁状態)のイスラム過激派テロ組織である。イラク、シリア両国の国境付近を中心として一時は両国の相当部分を武力制圧して「国家」樹立を宣言し、シリア領内のラッカを「首都」と宣言している。後述するように、外交関係の相手として国家の承認を行った国家は今まで無い。
報道により伝えられる知見によれば、活動家たちはISILが大規模で組織的に活動していることに感嘆していると言い、さらに、ISILに批判的な活動家までが、ISILがわずか1年足らずで近代国家のような構造を作り上げて来たことに言及する[17]。ISILは「カリフ国家」(カリフの指導下で運営される国家)が中東から東は中国、西は欧州まで広がり、究極的には世界イスラム帝国を望んでいるとされるが、彼らが言うカリフ国家がどのようなものなのかラッカなどで実証しようとしているようだという[17](→#政治、#理念・目標・政治的主張、#経済、財政を参照)。現地住民らはISILの勢力拡大の大きな要因は、効率的で極めて現実的な統治能力にこそあると語ったとも報じられる[17]。
ロイターの記者が取材によって2014年9月に明らかにしたことによると、ISILは次世代を見据えて国家モデルを構築している[17]。例えばシリア北東部の砂の平原にある町々においては、電気や水の供給、銀行(イスラム銀行)・学校・裁判所などだけでなく礼拝所、パン屋にいたるまでがISILによって運営された。
ISILの特徴に、インターネットなどによるプロパガンダ戦略が挙げられる。ワールド・ワイド・ウェブやSNS、動画共有サイトなどを利用し、イラクやシリア周辺の中近東だけでなく、はるか離れた世界各国からでも若者を多数兵士として募っている[18]。
一方住民らは恐怖政治に不満を募らせているとの報道もなされた[17][19]。また資金繰りが悪化し、戦費の調達にも影響が出ている[20]。
有志国による激しい空爆にもかかわらず、勢力拡大を続け、2015年5月までにシリア領の過半を制圧[21]。ISILによる統治地域の面積は2015年6月時点で、約30万平方キロメートルにも上った[22]。IHSジェーンズ(ジェーンズ・インフォメーション・グループ)によると、同年12月14日には、1月時点より支配地を約14%縮小し、支配面積は北海道とほぼ同じ約7万8000平方kmになるなど、勢いにかげりも見えた[23]。2017年10月には首都ラッカがシリアの反体制派シリア民主軍によって完全制圧され、退潮が明らかとなった[24]。同年11月17日にはイラク軍が西部アンバール県の町ラーワを制圧したことによりイラク国内からほぼ一掃された。
2019年2月4日、米国防総省は、シリアに駐留する米軍が撤退した後、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国」は同国内で支配地を奪還し、勝利を宣言する可能性があるとの報告書を発表した。国防総省の監察総監がまとめた報告書は、中東などを管轄する米中央軍からの情報として、米軍撤退の影響を予測し撤退に便乗し米兵らを攻撃する可能性も指摘している。ドナルド・トランプ米大統領が2018年12月に勝利宣言し、シリアからの撤退を表明してから、この種の報告書が発表されるのは初めてでイラク、シリア両国で活動を続け、特にイラクでは速いペースで戦力を復活させている。シリアでも対テロ圧力がなくなれば、6~12カ月以内に一定の支配地を奪還する恐れがあると報告されている[25]。
2019年2月6日、トランプ大統領は、ワシントンで開かれたイスラム教スンナ派過激組織「イスラム国」(IS)の打倒を目指す有志連合の閣僚級外相会合に出席し、米軍や民兵組織などがシリアのIS支配地域を「おそらく来週」にも完全制圧できるとの見通しを明らかにした。ただし、完全な掃討にはなお時間がかかることを示唆した。ポンペオ米国務長官は「シリアからの米軍撤退は米国の戦いの終わりを意味しない。本質的には戦術上の変更だ」と改めて米国の立場について各国に理解を求めた[26]。
2019年3月22日、サンダースホワイトハウス報道官やシリア民主軍が、シリアにおけるISILの支配領域を完全に奪還したと発表した[27][28]。
支配地域の大半を失ったISILは、2019年4月29日に最高指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーのメッセージを動画で公開し、2019年5月10日にはインドに「ヒンド州」設立を主張した[29]。また5月16日にはパキスタンに「パキスタン州」設立を主張している[30]。
2019年10月26日、最高指導者(初代の自称カリフ)のアブー・バクル・アル=バグダーディー[31]がアメリカ軍の特殊作戦により殺害された。
アブー・バクル・アル=バグダーディーの死去を受けて、アブイブラヒム・ハシミが最高指導者(2代目の自称カリフ)に就任した。2022年、米軍特殊部隊の軍事作戦によって、アブイブラヒム・ハシミは自爆して死去した。このことは、同年2月3日、アメリカ合衆国のジョー・バイデン米大統領が発表した[32]。
2022年3月10日、ISILはアブイブラヒム・ハシミの死亡を認め、アブハッサン・ハシミが後任の最高指導者(3代目の自称カリフ)に就任したことを発表した[33]。同年11月30日、米軍はアブハッサン・ハシミがシリアの反体制派「自由シリア軍」の作戦で死亡したと発表した[34]。
ISILはアブハッサン・ハシミの死亡を認め、アブ・フセイン・フセイニが後任の最高指導者(4代目の自称カリフ)に就任したと明らかにした[35]。2023年4月30日、トルコのエルドアン大統領は、シリアで29日に行われたトルコ情報機関の作戦で最高指導者のアブフセイン・フセイニとみられる人物を殺害したと明らかにした[36][37]。 2013年4月、「イラクのイスラム国」(ISI)はシリアの過激派組織「アル=ヌスラ戦線」と合併し、組織名をアラビア語で?????? ????????? ?? ?????? ??????[注釈 1]とした。
名称・表記
名称の翻訳と略語