IPアドレス枯渇問題(アイピーアドレスこかつもんだい)とはインターネットの発展に伴い浮上してきた問題で、2019年現在広く使用されているIPv4という通信プロトコルにおいて、新規に配布するIPv4アドレスがほぼ枯渇している事態を指す。インターネット上のノードはIPアドレスによって一意に区別される。
IANA (Internet Assigned Numbers Authority) の管理するIPv4アドレスは2011年2月3日に枯渇した[2]。現在は、RIR(地域インターネットレジストリ)が管理する在庫を割り振っている状態である。各RIRの最後の1ブロックは、IPv6への接続性の確保や既存のインターネット接続を維持する目的で、限定された条件で割り振られるので、自由には取得できない。2011年4月15日には、他のRIRに先駆けて、APNICのIPv4アドレスの在庫が/8ブロック換算で、1ブロック未満となり、アジア太平洋地域では、IPv4アドレスの在庫は事実上枯渇した[3]。また2012年9月14日にはRIPE NCCでも最後の1ブロックからの割り当てが始まり[4]、以降も/22や返却された予備のIPv4アドレスを割り振っていったが、2019年11月25日に全て枯渇した[5]。ARINでは2015年9月24日に在庫が/10(/8の4分の1)を切り[6]、枯渇した[7]。 IPv4のプロトコルで通信を行うには、通信を行う送信元と受信先が、一意のIPv4のIPアドレスを割り当てられていることが前提となる。そのため、IPv4のIPアドレスが枯渇し、新規に割り当てることができなくなれば、新規にサーバーや端末などをネットワークに追加することができなくなる。これは、新規のユーザがインターネットに接続できなくなったり、インターネットでビジネスを行うために新しいサーバを設置できなかったりすることを意味する。 限定された通信だけを行うのであれば、ローカルなIPアドレスと、グローバルなIPアドレスを使い分けるNAPT(IPマスカレード)等の技術によって回避することが可能であるが、NAPTはインターネット上のサービスを指定するポート番号を他の目的に流用するやり方であり、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}ネットワーク上を流れるパケットを書き換える行為なのでセキュリティ上の問題がある。[疑問点 – ノート]また、ネットワーク上でIPアドレスによって通信相手である相手のノードを一意に指定できないという問題は依然として残っている。 IPアドレス枯渇問題はインターネットが誕生した時から潜在的に存在していた。「32ビットのIPアドレスでは2の32乗=約43億のIPアドレスしか管理できない」という考えは将来に起こり得る問題として提起されはしたが、実際に深刻な問題としては取り組まれなかった。つまり、当時からIPアドレス枯渇問題を回避するための技術を用いることはできたが、もともとがアメリカ軍の軍用技術であったため、軍の使用に耐えるだけの数が確保されればよく、1980年代以前の考えでは、そこまでの民間での使用を想定していなかったのである。 プロバイダから契約者へのルーターに配付されるIPアドレスの種別がグローバルアドレスから、ISP Shared Address (.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}RFC 6598
問題の発生
問題の影響
IPv4のIPアドレスの新規取得が困難
新規にインターネットサービスプロバイダ(プロバイダ、ISP)と契約してインターネットの接続回線を開いても、IPv4のグローバルアドレスを取得することが困難になり、サーバーを公開することができなくなる。
IPv6のグローバルユニキャストアドレスを取得できれば、サーバーの公開自体はできるが、IPv4でのみアクセス可能なユーザからの参照が(後述の対応策を取らない限り)困難になる。
ルーターに配付されるIPアドレスの種別変更
場合によっては(ISP Shared Addressやプライベートアドレスを使いたくない場合)、IPv6を使わざるを得なくなる場合も生じうる。
これによって、次のような影響が生じる。 日本においては1990年代後半に起こった爆発的なインターネット接続の普及などもあり、プロバイダは接続者ごとに固定IPアドレスを振る本来的な方法ではなく、接続中だけいずれかのIPアドレスが振られる動的IPアドレス割当方式を採用した。そのため、一般ユーザーはサーバを公開することが難しくなり、固定IPアドレスサービスは多くのプロバイダで追加料金が課されるようになった。更にブロードバンドインターネット接続の先駆けとして登場したケーブルテレビインターネット接続では、ローカルIPアドレスしか割り当てない方式が一時主流となった。このような環境下ではウェブ閲覧、メール、FTPなどの特定の通信以外での使用は多くの場合厳しい。またJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)などが、アドレス空間の割り当てを審査するなど割り当て方法を厳格にし、無用な割り当てを行わないようにした。 2010年6月現在、国内のプロバイダはIPv4アドレス枯渇対応タスクフォース
ルーターの変更
ルーターに割り当てられるIPアドレスの種別が変更されることにより、ルーターの設定変更が必要になる。プロバイダによっては、IPv6対応のために、CPE (Customer Premises Equipment) を構成するルーターなどへの買い替え、または、接続用アプリケーションの新規追加が必要になる場合がある。
アプリケーションの変更
使用しているアプリケーションが使用できなくなる可能性がある。ルーターに割り当てられるIPアドレスの種別がグローバルアドレスであることを期待しているアプリケーションでは、ルーターのアドレス種別が変更されることにより、通信ができなくなって使用できなくなるアプリケーションがでてくる。UPnPなどによりNATによる影響を回避しているアプリケーションでは、IPアドレスの種別が変更され多段NAT構成(ラージスケールNAT)になった場合に、対応できない。特にP2Pにより、端末間で直接通信を行うタイプのアプリケーションについては、影響が大きい。
WebサイトやWebアプリケーションの変更
IPv4でアクセスされることを前提にしているウェブサイトやWebアプリケーションでは、サーバーがIPv6でアクセス可能になった場合に、IPv6への対応が必要になる。具体的には、IPv4のIPアドレスでセッションの管理をしている場合に、単一のIPv4のIPアドレスで複数のユーザが同時にアクセスしている場合の対応や、IPv6でアクセスしている場合の対応が必要となる。
既存ユーザの既得権益の侵害
現在、大きな制限もなくIPv4のIPアドレスを使用している既存ユーザにとって、IPアドレスの共有を強制されることは、既得権益の侵害としてうつる。現在は、実際にIPアドレスの共有を強制されるような計画が公開されていないため、問題視されていない。しかし、このような計画が発表されれば、既存ユーザの反発が予想され、賠償請求訴訟や計画の停止を求める訴訟問題に発展する可能性がある。
日本での対応
IPアドレスの枯渇期限の予測とこれまでの経緯