II型超新星
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拡大するII-P型超新星SN 1987Aの超新星残骸

II型超新星(Type II supernova)は、大質量の恒星が急速に崩壊して起こす、激しい爆発である。この型の超新星となる恒星の質量は、太陽質量の少なくとも8倍で、40から50倍を超えない範囲である[1]。他の型の超新星とは、スペクトル中の水素の存在で区別される。II型超新星は主に銀河渦状腕HII領域で見られるが、楕円銀河では見られない[2]

恒星は、元素の核融合によってエネルギーを生み出す。太陽と異なり、大質量の恒星は、水素やヘリウムよりも重い元素を使う核融合もでき、温度と圧力がさらに高くなるのと引き換えに寿命は短くなる。元素の縮退圧と融合反応により産み出されるエネルギーは、重力に打ち勝つほど強く、恒星を崩壊させずに平衡を維持している。恒星は水素やヘリウムから始まって、核でニッケルが作られるまで、徐々に重い元素を融合させるようになる。鉄やニッケルの核融合は正味のエネルギーを生み出さず、そのため融合はこれ以上進行しないため、内部には鉄-ニッケル核が残る。外向きの圧力となるエネルギー放出がなくなるため、平衡は破れる。

核の質量が約1.4太陽質量のチャンドラセカール限界を超えると、電子の縮退圧力だけでは重力に打ち勝つことができず、平衡を維持することができない。数秒以内に激しい爆縮が発生し、外核は光速の23%で内部に落ち込み、内核は1000億Kの温度に達する。逆ベータ崩壊によって中性子ニュートリノが生じ、10秒間の爆発で約1046Jのエネルギーが放出される。崩壊は、中性子縮退によって止まり、反動で外向きの爆発が起こる。この衝撃波のエネルギーは、恒星の周囲の物質を脱出速度以上に加速して超新星爆発が発生し、衝撃波に加え非常に高い温度と圧力によって短時間の間、鉄以上の重さの元素生成が可能となる(宇宙の元素合成[3]

II型超新星は、爆発後の光度曲線に基づいていくつかのカテゴリーに分類される。II-L型超新星は爆発後の光度が線形(line)に減少し、II-P型超新星はしばらくは光度の減少が緩やか(plateau)である。Ib・Ic型超新星は、水素(とヘリウム)の外層を失った大質量恒星による核崩壊型の超新星である。
形成 大質量で核崩壊直前の進化の終わった恒星のタマネギのような層構造

太陽より遙かに重い恒星は、複雑な進化の過程をたどる。太陽核では、水素はヘリウムに核融合し、熱エネルギーを発生して、その熱エネルギーは核を温めるとともに外向きの圧力を生じ、静水圧平衡を保っている。核で生じるヘリウムは、核の温度は未だヘリウムの核融合を起こす温度に達していないため、ヘリウムはそこに蓄積する。最終的に核の水素が枯渇すると、融合は遅くなり始め、重力により核は縮退する。縮退により温度は上昇し、恒星の一生の10%未満を占める短いヘリウム融合の期間が始まる。8太陽質量未満の恒星では、ヘリウムの融合によって生成した炭素はそれ以上融合せず、恒星は徐々[4][5]に冷たくなって白色矮星となる。白色矮星が近隣に伴星を持てば、Ia型超新星となる場合がある。

しかし、より質量の大きい恒星では、核で炭素がさらに融合できる温度と圧力に達する。このような大質量恒星の核は、より重い元素が中心に近い部分に位置するタマネギのような層構造になる。このような大質量恒星の進化では、核での融合が停止して内向きに崩壊し、温度と圧力が上昇し、融合が再開できるまでに達すると次の段階の融合が開始するという過程を何度も繰り返す[4][5]

25太陽質量程度の恒星の核燃焼段階過程燃料生成物25 M?[6]
温度
(K)密度
(g/cm3)期間
水素燃焼過程水素ヘリウム7×10710107 年
トリプルアルファ反応ヘリウム炭素, 酸素2×1082000106 年
炭素燃焼過程炭素ネオン, ナトリウム, マグネシウム, アルミニウム8×108106103 年
ネオン燃焼過程ネオン酸素, マグネシウム1.6×1091073 年
酸素燃焼過程酸素ケイ素, 硫黄, アルゴン, カルシウム1.8×1091070.3 年
ケイ素燃焼過程ケイ素ニッケル (に崩壊)2.5×1091085 日

核の崩壊

この過程を制限する要因は、原子核を保持する結合エネルギーに依存する、融合によって放出されるエネルギーの量である。それぞれの段階では徐々に重い原子核が作られ、融合時のエネルギーは徐々に小さくなる。さらに炭素燃焼過程からは、ニュートリノの生成によるエネルギーの損失がかなり大きくなり、反応速度はそれまでより速くなる[7]。この過程は、ニッケル56が生成するまで続き、ニッケル56は数ヶ月のうちに、コバルト56、次いで鉄56に放射性崩壊する。鉄とニッケルは、全ての元素の中で原子核あたりの結合エネルギーが最も高いため[8]、核融合によって原子核でエネルギーは生産されず、ニッケル-鉄核が大きくなる[5][9]。この核は巨大な重力圧に晒され、温度を上昇させる融合も起こらないので、電子縮退圧だけで支えられる状態になる。この状態では、物質の密度は非常に高くなるため、これ以上の圧縮には、電子が同じエネルギー準位を取ることが必要となる。しかしこれは、パウリの排他原理によって、電子のようなフェルミ粒子には禁じられている。

核の質量が約1.4太陽質量のチャンドラセカール限界を超えると、縮退圧だけでは支えきることができなくなり、激しい崩壊が生じる[10]。核の外側部分は光速の23%で中心に向かって落ち込む[11]。急速に縮む核は加熱され、高エネルギーのガンマ線を放出し、光崩壊によって鉄原子核をヘリウム原子核と自由中性子に分解する。核の密度が上昇すると、逆ベータ崩壊によって、電子と陽子が融合して中性子とニュートリノが生じやすいエネルギー環境になる。ニュートリノは他の物質とはほとんど相互作用しないため、エネルギーを持ち出して核から逃げ出すことができ、数ミリ秒の間に崩壊はさらに加速する。核は恒星の外層からはがれ、ニュートリノの一部は恒星の外層に吸収されて超新星爆発が開始する[12]

II型超新星では、原子核程度の密度に至ったところで、中性子の縮退圧及び近距離で反発する中性子-中性子相互作用によって崩壊が止まる。崩壊が止まると、落ち込んでいた物質がバウンドし、外向きの衝撃波を形成する。この衝撃波のエネルギーにより、重い元素は核から分離する。これにより衝撃波のエネルギーは減少し、外核での爆発は失速する[13]

核崩壊段階は、密度とエネルギーが非常に高いので、ニュートリノだけが逃げ出すことができる。陽子と電子が電子捕獲によって中性子を形成すると、電子ニュートリノが生成する。典型的なII型超新星では、新しく形成された中性子核の初期温度は約1000億Kで、太陽核の1万倍も高い。この熱エネルギーの大部分は、さらにニュートリノを放出することで安定な中性子星を形成するために使われる[14]。このような熱中性子は、全てのフレーバーのニュートリノ-反ニュートリノ対として生じ、合計では電子捕獲ニュートリノの数の何倍も多い[15]。2つのニュートリノの生成機構は、崩壊による重力位置エネルギーを10秒間のニュートリノのバーストに変換し、約1046J(100フォエ)のエネルギーを放出する[16]

詳細が不明な過程によって、約1044J(1フォエ)のエネルギーが失速した衝撃波に再吸収され、爆発が生じる[a][13]。超新星によって生成したニュートリノは、SN 1987Aで実際に観測され、核崩壊モデルが基本的に正しいとの結論に至った。カミオカンデIMBは熱起源の反ニュートリノを検出し[14]、Baksan Neutrino Observatoryのガリウム71検出器は、熱及び電子捕獲起源のニュートリノを検出した。 大質量で進化の終わった恒星では、(a)タマネギのような層状の原子の殻が融合を起こし、ニッケル-鉄の核を形成する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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