ICカード
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「スマートカード」はこの項目へ転送されています。長崎県の交通系ICカードについては「長崎スマートカード」をご覧ください。
「接触型ICカードリーダ/ライタ」と「マイナンバーカード(個人番号カード)「非接触型 ICカード リーダ/ライタ」と「マイナンバーカード」

ICカード(アイシーカード、: integrated circuit card; ICC)とは、情報データ)の記録や演算をするために集積回路 (IC) を組み込んだカードのことである。国際的にはスマートカード (smart card) やチップカード (chip card) とも呼ばれ、日本では、特に演算処理機能を持つものをスマートカードと呼ぶ。

カード内にRAMROMEEPROMといった半導体メモリを組み込むことにより、情報量が従来の磁気ストライプカードと比べて数十倍から数千倍になる。さらに、CPUコプロセッサなどを内蔵することで、カード内部で情報処理が可能になるという特徴がある。これを応用して、Intelが専用のドックに専用のICカードを挿入し、パーソナルコンピュータとして利用できるインテル Compute Cardを開発した。情報処理や記憶は全てカード上で行う。
歴史

ICカードの普及以前は、1960年IBMによって発明された磁気ストライプカードが使われていた。

ICカードは、ドイツでは1968年ヘルムート・グレトルップ(Helmut Grottrup)とユルゲン・デトロフ(Jurgen Dethloff)が共同で、日本では1970年有村國孝が、フランスでは1974年にローラン・モレノ (Roland Moreno) が、それぞれ発明している。グレトルップは1968年に特許を申請したが、認められたのは1982年になった。

ICカードをその機能により分類すると、次の4つに分けられる。

メモリーカード(メモリのみ、ヒューズメモリなど) : 使い捨てプリペイドカードなどに利用

ロジック付きカード(アクセス制御機能などを備えたもの)

CPU搭載カード

その他(専用コプロセッサなど)

CPUを搭載して単体で演算能力を持つICカードは1970年代後半に登場した。製品としてはブルモトローラが共同で、1973年から1979年に掛けてメモリカードやマイコンカード(EEPROM内蔵CPU、CPU搭載EEPROM、1チップ化したもの)を開発した。これがICカードの始まりとなった。ブルのICカード部門会社のブルCP8は日本国内において大日本印刷と合弁でSPOM JAPANを設立した。マイコンカードの基本技術はCP8技術、或いはSPOM (Self Programmable One-chip Microcomputer) 特許として知られ、世界中のカードメーカーにライセンスされた。その後、現在のSTMicroelectronics NV1982年にセキュア・メモリICを開発した。

日本では1981年大日本印刷が研究を開始し、1983年大日本印刷凸版印刷がICチップインカードを、東芝1984年にICカードを、日立製作所(現在のルネサス エレクトロニクス)が1985年にICカードマイコン (HD65901) をそれぞれ開発した。ソニー1988年から非接触ICカードの研究開発に着手していた。

初期のCPUは4bit - 8bitCPUであったが、その後16bit - 32bitCPUが搭載された。8051、8052、6805、Z80H8、AE-4、AVRARMMIPSなどの既存アーキテクチャを使うものだけでなく、独自の非公開アーキテクチャを採用するものもある。

メモリサイズは当初256bit - 8kByteであったが、徐々に大きくなり、2003年頃には32kByte - 512kByte、1MByteになっている。

不揮発性メモリとしては、EEPROMの他にフラッシュメモリFeRAM (FRAM) を搭載したカードがある。当初、EEPROMの書き換えにはIC駆動に用いるVccとは別に専用の電圧を必要としていたが、その後Vccだけで動作できる様に改良された。

RSA用コプロセッサ搭載カードは1990年代前半に登場した。DES/トリプルDESはソフトウェアで実装される場合と、専用回路で実現する場合がある。

当初のICカードはプログラムをROMに格納していたが、1990年代後半にはプログラムを不揮発性メモリにダウンロードできる仕組みを持つプラットフォーム型ICカードと呼ばれるMULTOSカードやJavaカードが開発された。MULTOSカードはMasterCard大日本印刷日立製作所が開発し、プラットフォーム型ICカードの先駆けとなった。MULTOSカードは、MELという専用のアセンブラライクな言語でプログラムを記述する。1999年にはクレジットカードとして大規模に発行開始し、世界初のプラットフォーム型ICカードの実用化となった。Javaカードはカード内にJava VMを内蔵し、Javaで記述されたプログラムを実行する事ができる。Javaの実行環境を含めたJavaカードなどでは、暗号化電子署名の技術を使う事ができるものもある。

カードOS(通信制御・ファイル管理など)にITRONを採用しているカードもある。また、TRONプロジェクトが提唱している電子身分証のeTRONカードもICカードの一種である。

ICカードはプラスチックを使っているが、凸版印刷リサイクル可能なを材料としたものを開発し、2009年4月から販売を開始した。併せて回収と再生までのリサイクルの体制の確立も行う[1][2][3]
形式

ICカードはその目的に合わせて様々な機能を有し、それらは様々な形式で実装される。以下はその一例である。

電源
[4]

接触型: 接点端子を介した電流による給電[5]

非接触型: アンテナコイルを介した電磁誘導による給電[6]


通信

接触型: 接点端子を介した電流による通信[5]

非接触型: アンテナコイルを介した電波による通信[6]

電源と通信は同じ形式でおこなう場合が多く、これら2機能に基づいて「接触型ICカード」「非接触型ICカード」の2形式にしばしば分類される[7]
標準フランス保険証 (Carte Vitale)

ICカードは各形式ごとにそれぞれ幾つかの方式が標準化・規格化されている。
接触型

接触型ICカードは、読み取り機に挿入した際に表面の金メッキの端子部分から外部電源が供給される仕組みになっている。物理的な仕様からコマンドなどの論理面までの必要最小限の部分が国際規格 ISO/IEC 7816(Part 1 - 15 がある)で標準化されている。国際規格でのICカード関連の規格は、カードの規格 (ISO) を参照。

ISO/IEC 7816では最小部分しか規格化されていないので、業界やサービスに特化した仕様が作成されている。

金融向けに、EMV仕様と呼ばれるユーロペイMasterCardVisaによるデビットカードとクレジットカードの標準仕様がある。

GSM3GPPUIMカード仕様がある。

複数のアプリケーションが搭載可能なカードやプラットフォームの仕様として、Javaカード仕様やMULTOS仕様がある。Javaカードには、VisaによるVisa Open Platform仕様がある(現在Global Platform)。

日本では、ISO/IEC 7816を元にした日本産業規格 JIS X 6300 がある。「カード#JISC」も参照

業界標準仕様には、JICSAP仕様や全銀協ICキャッシュカード標準仕様などがある。

限定受信システムB-CAS)用のICカード仕様は、ARIB STD-B25(デジタル放送に於けるアクセス制御方式)の第1部第4章で記述されている。

建設ICカードの標準として、日本建設機械化協会規格がある(JCMAS G 001-1 建設業務用ICカード―カード―第1部:物理特性 1997、JCMAS G 001-2 建設業務用ICカード―カード―第2部:機能仕様)。業界標準は、ISO準拠だけではカード間の相互運用ができない場合があるという実装上の課題を解決するために生まれ、初期にはS型実装仕様などがあった。業界標準を規格化するために、JICSAP仕様を基にして、JIS・ISOの原案が作成されている。
非接触型FeliCa RC-S860の内部回路


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