IBMのディスク記憶装置(アイビーエムのディスクきおくそうち)ではIBMが開発したディスク記憶装置の歴史について解説する。そのほとんどはIBMサンノゼで開発されて、一部はIBMロチェスター、IBM藤沢で開発された。
1950年代にIBMによって開拓されたディスク記憶装置の発明はコンピュータ革命の重要な要素であった。ハードディスクドライブの基本的な機械構造はIBM 1301以来変わっていない。ディスクドライブの性能および特性は現在も同じ規格に基づいて測定されている。
IBM 350前景の2つのIBM 350ディスクドライブを持ったレッドリバー陸軍補給処のIBM 305コンピュータ歴史博物館に保管中のRAMACディスクドライブ装置(2006年)
IBM 350はIBM RAMAC 305の一部であり、そのコンピュータはディスク記憶技術を世界にもたらした。IBMは1956年9月13日にRAMAC 305およびRAM 650コンピュータシステムの一部としてIBM 350を公式に発表した[1][2][3]。RAMACとはRandom Access Method of Accounting and Controlの略である。
その設計はビジネスにおけるリアルタイム計算の必要性を意図していた[4]。IBM 350は500万字の7ビットでパリティビットを加えた6ビット(文字約4.4MB)を保存した[5]。50枚の24インチ(直径610mm)の磁気ディスクを備え、ディスク表面にはそれぞれ100のトラックがあった。ディスクは1200 rpmで回転し、データ転送速度は8,800ワード/秒だった。2個の独立しているアクセスアームがディスクを選択するためにサーボ制御によって昇降する機構を持っていた。3番目のアクセスアームはオプションであった。
いくつかの改善されたモデルが1950年代に追加された。 IBM 350を搭載したIBM 305 RAMACシステムは月額3,200ドルでリースされた。IBM 350は1969年には公式に販売停止となった。
IBM 350のキャビネット(筐体)は長さ60インチ(152cm)、高さ68インチ(172cm)、奥行き29インチ(74cm)だった。 IBMはその製品がすべて標準29.5インチ(75cm)の戸口を通り抜けなければならないという厳しいルールを持っていた。IBM 350の磁気ディスク(プラッタ)は水平にマウントされたためで、このルールにより搭載されるディスクの最大直径が決定された。
カリー・マンス(IBMのディスク部門を買収した日立グローバルストレージテクノロジーズの副社長)はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビュー[6]において、「RAMACユニットは1トン以上の重量があり、フォークリフトで動かされなければならなく、大きな貨物機によって運ばれた。ドライブの記憶容量は5MBを越えて増強されたかもしれないが、IBMの営業部はより大きなキャパシティーのドライブを搭載した製品に反対した。」と述べた。
2002年にサンタクララ大学と共同でIBM 350 RAMACの復元を開始し、2005年にはRAMAC復元プロジェクトがコンピューター歴史博物館に移転された[7]。2006年現在、カリフォルニア州マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館に、RAMACディスクドライブ装置が保管されている。但し、オリジナルの制御回路は含まれていない。 IBM 353はIBM 7030で使用され、IBM 1301と似ているが、より速い転送速度を持つ。容量は2,097,152(=221)の72ビットの単語(64のデータビットおよび8 ECCビット)を125,000ワード/秒で転送された[8]。 IBM 355は1956年9月14日に人気のあるIBM 650への追加として発表された。IBM 355はIBM 350と同じメカニズムを使用し、10進の数字を600万個格納した[9]。データは、IBM 653 IBM 1405ディスク記憶装置(IBM 1405 Disk Storage Unit)は1961年に発表され、中規模のビジネスコンピュータであるIBM 1401シリーズ用に設計された。モデル1は25個のディスクを持ち、1000万文字(6千万bit)を記憶し、モデル2は50個のディスク持ち、2000万文字(12千万bit)を記憶した[10]。ディスクは200トラックあり、5つのセクタに分かれる。セクタ0 - 4は表面、5 - 9は底表面にあり、各セクタで約200文字記憶できる。両モデルともディスクは1200rpmで回転し、モデル2のアクセスタイムは100 - 800msであった[11]。 IBM 7300ディスク記憶装置(IBM 7300 Disk Storage Unit)はIBM 7070を使用するために設計された装置である。1959年にモデル2が発表された。IBM 7300にはIBM 350やIBM 355、IBM 1405と同じ技術が用いられている。 IBM 1301ディスク記憶装置(IBM 1301 Disk Storage Unit)は1961年6月2日に発表されたIBM 7000シリーズ・メインフレーム・コンピュータおよびIBM 1410用に設計された[12]。単一モジュール容量は2800万文字(168百万bit)であり、IBM 1410コンピュータで使用した場合、モジュール容量は2,500万文字であった。また、IBM 7631ファイル・コントロールをコンピュータに接続することで最大2億8000万文字を記憶することが可能である。モジュールには20枚のディスクに記録面が40面あり、1つの記録面当たり250トラックがあった。IBM 1301モデル1は1つのモジュールを持ち、モデル2は垂直に積み重ねられた2つのモジュールを持っていた。ディスクは1800rpmで回転し、データは9万ワード/秒で転送された。 IBM 350及びIBM 1405の主な進歩は大きな櫛のようなアームを用いることですべての記録面にデータを読み書きするヘッドを外側や内側へ移動させるアームが備わったことである。これにより、ヘッドがアームによってディスクから引っぱり出され、ディスクもしくはアームを動かすことで別のディスクまで移動させる時間が削減された。さらに、ヘッドが待機する位置をディスクの外側の端ではなく、ディスクの中間地点にすることで目的のトラックへのアクセスはさらに速くなりアクセスタイムは最大180ms短縮された。 IBM 1301の更なる特徴はディスクの表面上の空気の薄い層の上に沿って空気力学的に浮上して飛ぶことを目指したヘッドであった。記録面からわずかの位置にまでヘッドを接近させることが可能となりパフォーマンスを改善した。 IBM 1301モデル1はリースが月額2,100ドル、購入が115,500ドルであった。モデル2の価格はリースが月額3,500ドル、購入が185,000ドルであった。また、IBM 7631コントローラーの追加費用はリースが月額1,185ドル、購入が56,000ドルであった。 全てのモデルは1970年に販売終了となった。 IBM 1302ディスク記憶装置(IBM 1302 Disk Storage Unit)は1963年9月に発表された。容量はIBM 1301と比較して4倍に改善され、モジュール当たり1億1700万の6ビット文字まで記憶できた。平均アクセス時間は165msで、18万ワード/秒とIBM 1301の2倍以上の速度でデータを転送できた。2番目のアームが250のトラックの別のグループにアクセスした。IBM 1301のキャパシティの2倍を備えたモデル2があった。IBM 1302モデル1の費用は月額リースが5,600ドル、購入が252,000ドルであった。モデル2の価格は月額リースが7,900ドル、購入が355,500ドルであった。IBM 7631 IBM 1311ディスク記憶装置(IBM 1311 Disk Storage Unit)は1962年10月11日に発表され、中規模な商用および科学計算機用のコンピュータ向けに設計された。IBM 1311はトップローディング方式の洗濯機のサイズ及び形状であり、IBM 1316に200万文字(12百万bit)を記憶した[13]。IBM 1311の7つのモデルは1970年代初めに販売終了となった。 ドライブ1(マスタードライブ:モデル1、3、4および5)は追加の電源装置および制御回路を含み、他のドライブ(スレーブドライブ:モデル2)より幅広かった。
IBM 353
IBM 355
IBM 1405
IBM 7300
IBM 1301
IBM 1302
IBM 1311IBM 1311ディスクドライブ-モデル2(スレーブ)とモデル3(マスター)
モデル1 - IBM 1440、IBM 1460あるいはIBM 1240
モデル2 - スレーブドライブは、マスター・ドライブ(ドライブ1)が持つ全てのオプション機能(後述)を持っていた。1962年10月11日に発表され、1975年1月6日に販売終了となった。
モデル3 - IBM 1620あるいはIBM 1710システムには、ドライブ1が必須だった。含まれるコントローラーは最大3個のモデル2ドライブを制御できたが、オプション機能(後述)はサポートされなかった。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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