HondaJet
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日本国内ではビジネスジェットの市場は非常に小さく、そのほとんどが公用機であるが、今後HACIが市場を作り拡大を目指すとしている。12月20日には千葉功太郎堀江貴文山岸広太郎が共同所有する初号機(JA01JP)の引き渡しが行われた[22]

2019年(令和元年)10月21日、救急医療搬送用のメデバック仕様がハワイのWing Spirit社が所有するHondaJet Eliteに初めて導入されたと発表[23]。また、映画俳優のトム・クルーズがカスタムペイントのHondaJetを所有して自ら操縦していることも明らかにされた[24]

同年10月29日に自動車の技術開発や販売などで本田技研工業と競合しているトヨタ自動車の系列会社「朝日航洋」がHondaJet Eliteの所有権を取得した事が明らかとなった。2020年春頃からトヨタ自動車役員の移動用として登録記号「JA86GR」で使用する方針だとしている[25]
HondaJet Elite S

2021年(令和3年)、改良版のElite Sをラインナップに追加。カラーバリエーションにガンメタル/ラックスゴールド/ディープシーブルーを追加、航続距離を約222km延長、アビオニクスシステムのアップグレードとして無線通信をテキストメッセージで行うFAA Data CommとACARS、およびパイロットの地上操縦時の負荷を軽減するASASシステムを導入し、パイロットの負荷を軽減し、機体運用の安全性を向上させた[26]
HondaJet Elite II

2022年(令和4年)10月17日、HACIより発表された。燃料タンクの拡張、最大離陸重量増加によって従来機(Elite S)より204km伸び2,865kmとなる。グランドスポイラーを主翼に初搭載、オートスロットル機能(2023年前半)、緊急着陸装置(2023年後半)にそれぞれ導入される。特別色としてBlack Editionが機体色に設定され、内装には2種類のインテリアデザイン(スチール・オニキス)、木目調の床材、コックピットの羊毛シートカバーなどのオプションが追加される[27]
HondaJet Echelon

2021年(令和3年)10月12日、ナショナル ビジネス アビエーション アソシエーション(NBAA)にて発表された。この段階では「HondaJet 2600 Concept」という名称のコンセプト機で、「2600」は航続距離が2,625 nm(4,862 km)であることに由来し、アメリカ大陸横断ルートを無着陸で飛行可能となる[28]

全長17.62m、翼幅17.29m、全高4.84mに拡大され、それに伴って客室容積も拡大して最大11人乗り(乗員含む)となり、また貨物室容積も従来のHondaJetと比較して大幅に拡大されている。その他にも、最大運用高度は47,000ft(約14,326m)、最大巡航速度は450KTAS(約834km/h)まで向上し、同クラス帯の「ライトジェット機」に対して20%以上、さらに上のクラスである「中型ジェット機」クラスの機体に対して40%以上の燃費向上を目指すとしている。アビオニクスシステムには、新たにオートスロットルやオートブレーキなどの機能を搭載し、パイロットの負荷軽減と安全性の向上を図る[28][29]

2023年(令和5年)6月13日、正式な商用化と2028年頃の発売を目標に開発を進める方針を明らかにした。エンジンにはGEホンダではなくウィリアムズ FJ44-4Cを採用する[30]。同年10月、正式名称が「HondaJet Echelon」となることが発表された[31]
機体タキシング中
主翼上面エンジン配置(OTWEM -Over-The-Wing Engine Mount)形態[32]
HondaJetの外観上の最大の特徴は、主翼上面にエンジンを取り付けたそのユニークなスタイルにある。一般的なビジネスジェット機のエンジンは胴体後部に取り付けられるが、HondaJetではそれを主翼上面に配置した。これにより従来は胴体内部に必要であったエンジン支持構造が不要となるため、胴体内のスペースが30%以上も拡大したと同時に、客室内の騒音や振動が軽減され乗り心地の改善を可能とした。また、胴体後部両舷にエンジンを取り付ける場合に比べ、高マッハ数での造波抵抗が小さくなる位置があることをHondaが発見した[33]。一般的な層流翼(翼厚比10%)を用いた解析と実験から、エンジンを主翼上面の最適な位置に配置することにより抵抗発散マッハ数が0.75から0.03程度上昇することが示された。HondaJetの主翼には翼厚比15%の層流翼が用いられており、この主翼単体の抵抗発散マッハ数は0.707程度となっている[34]。この翼型に主翼上面エンジン配置形態を適用することにより、抵抗発散マッハ数は同様に増加すると考察され、HondaJetの最大巡航マッハ数0.72において、主翼上面エンジン配置形態による空力抵抗減少の効果が得られていることとなる。この最適な主翼上面エンジン配置形態を採用しているHondaJetは、クラス最高の最大巡航速度、燃費性能及び航続距離を獲得している。また、造波抵抗を軽減させた主翼上面エンジン配置形態技術の先駆者並びにHondaJetの設計開発の功績が認められ[35]、開発責任者で設計者の藤野道格は2012年に米国航空宇宙学会(AIAA)より「エアクラフトデザインアワード(航空機設計賞)」を[36]、2014年に学術団体「SAEインターナショナル」より「ケリー・ジョンソン賞」を[37]、国際航空科学会議(ICAS)より「航空工学イノベーション賞」を受賞した[38][39][40]
自然層流(NLF)技術[41]
NLF(Natural Laminar Flow、自然層流)は、機体周りのスムーズな空気の流れを最大化する技術で、空気抵抗の大幅な低減を目的としている。Honda独自の最先端空力研究によるNLF技術は、HondaJetの主翼と胴体ノーズ部分に採用されている。この技術により、高速飛行時においても機体周りの流れを摩擦抵抗の少ない層流に保つことができ、速度と燃費のさらなる向上に貢献している。
複合材製胴体[42]
HondaJetには、軽くて丈夫な複合材(炭素繊維強化プラスチック)が胴体に使用されている。胴体の組み立てにおいては、ハニカムサンドイッチパネルとスティフンドパネルの2種の構造様式を組み合わせた一体成型技術が採用されている。多くの航空機では構造材料として主にアルミニウム合金が使われているのに対し、複合材構造の特徴を最大限に活かしたHondaJetの胴体は、軽量化だけでなく、NLF技術に必要とされる非常にスムーズな表面形状を実現することで、HondaJetの高い性能に貢献している。後部に荷室があり、外側のドアから荷物を取り出すことが出来る。また、キャビン後部にはこのクラスの小型機には稀有なトイレと洗面台を備え、ドアで仕切られているため、完全プライベートな空間が広がる。胴体後部左右にエアブレーキが装備されている。
機首
風洞試験結果から、少なくとも一部は層流を維持し抗力減少に寄与しているという[43]。初期の試験飛行時には、ピトー管があったと思われる機首先端から伸びた長大なブームを備えていた。機首にも小さな荷室があり、上部に設置されたドアから荷物を取り出すことが出来る。
窓とドア
コクピットの窓は正面ウィンドシールド(風防)が2枚、側面ウインドウが左右1枚ずつの計4枚からなる。客室の窓は角を丸くした(アールの付いた)縦長の長方形で、左右各3枚ずつの計6枚。ドアはコクピット後方左側面に1箇所ある。設備の整っていない飛行場での利用を想定し、エアステアが装備された。
降着装置
前脚(ノーズギア)に1本、主脚(メインギア)に2本の脚柱を持つ前輪式の降着装置を備え、車輪は各々1輪ずつである。前脚のホイールは両側からフォークで挟まれる形式であり、電動の操舵機構がそなわる。主脚はF/A-18などに似たトレーリング・アーム式で、地上との余裕(クリアランス)は小さい。脚上げ(ギアアップ)時には内側向に畳まれ収納される。各脚のドア付近にはランディング・ライトが装備されており、脚下げ時に点灯することができる。
スタイル[44]
開発開始当初から携わってきた藤野道格がスタイル設計に迷っているときに、サルヴァトーレ・フェラガモハイヒールを見て「これだ!」といったインスピレーションが沸き、このハイヒールの尖ったつま先からかかとにかけての鋭く流れるラインから、HondaJetの尖鋭的なスタイルが生まれた[45]。カラーバリエーションとして、白色の胴体全体に対して上面側に赤、青、黄、緑、銀の5色の色差しを選択できる。これは、色を選ぶという行為を経てオーナシップをより感じられる、スポーツカーのような飛行機を目指したためであるという[46]
運用[47]
運航乗務員が1名でも運航可能なように、アビオニクス系の装備が充実していて、地上待機時にエンジンを片側のみ起動させ、客室電源を確保出来るようにしたり、ラバトリー(トイレ)の汚水回収を機外から行えるようにしたり、ジェネラルアビエーションでの運用を考慮された設計となっている。またこのクラスのビジネスジェットとしては珍しく、客室内の与圧が自動で制御される。

機首

後部 方向舵下の注意書きのあるパネルは左右とも外側に開いてエアブレーキになる

エンジン配置

主翼端の前縁にある航法灯とストロボ・ライト

機体左側の貨物ドア

キャビン。右側中央の窓は脱出口になっている。

エンジン「HF120 (エンジン)」も参照

エンジンは、ホンダ社が独自開発した小型のターボファンエンジン HF118を基本にGE・ホンダ・エアロ・エンジン社が開発・製造したHF120を搭載する。大手航空機メーカーのボーイングエアバスボンバルディアロッキードマーティンなどはGEP&Wロールス・ロイスPLCジェットエンジンを使用しており、エンジンまで自社製なのは世界的にも珍しい。


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