HSDPA
[Wikipedia|▼Menu]

High-Speed Downlink Packet Access(HSDPA)は第3世代移動通信システム (3G) 通信プロトコルの一種でHSPAファミリーの1つであり、Universal Mobile Telecommunications System (UMTS) に基づくネットワークのデータ転送速度と容量を改善する。3.5G、3G+、turbo 3G などとも。HSDPAのサポートする下り転送速度は 1.8/3.6/7.2/14.4Mbit/s である。HSPA+ではさらに高速なデータ転送を実現しており、DC-HSDPAでは下り最大42Mbit/s、UMTS Release 9 では下り最大84Mbit/sとなっている[1]
テクノロジー
HS-DSCH チャネル

UMTS release 5 で、HSDPAのために新たなトランスポート層 High-Speed Downlink Shared Channel (HS-DSCH) が追加された。その実装のために3つの新たな物理層チャネル HS-SCCH、HS-DPCCH、HS-PDSCH も導入された。High Speed-Shared Control Channel (HS-SCCH) はユーザーに対して HS-DSCH でデータを送ることを2スロット前に通知する。High Speed-Dedicated Physical Control Channel (HS-DPCCH) は上りのチャネルで、肯定応答情報とユーザーの CQI (Channel Quality Indicator) を送る。CQIは基地局側でそのユーザー機器に次の転送でどれだけのデータを送るかの計算に使う。High Speed-Physical Downlink Shared Channel (HS-PDSCH) は上位の HS-DSCH トランスポート・チャネルにマッピングされていて、実際のユーザーデータの転送を行う。
ハイブリッド自動再送要求 (HARQ)

データは誤り検出訂正ビットと共に送られる。従って小さな誤りは再送しなくとも訂正可能である。詳しくは前方誤り訂正を参照。

再送が必要な場合ユーザー機器はそのパケットをセーブし、後に再送されたパケットと組み合わせて誤りのないパケットを可能な限り効率的に復元する。再送したパケットも壊れていたとしても、2つのパケットを組み合わせることで誤りのないパケットを構築できる。再送パケットは元のパケットと同一の場合(チェイス合成法で復元)と最初とは異なる場合(IR (incremental redundancy) 法で復元)がある。

再送は無線ネットワークコントローラではなく基地局から行われるので、再送にかかる時間が改善されている。
高速パケットスケジューリング

HS-DSCH下りチャネルは、無線の状態に合わせて最適になるよう調整したスケジューリングで複数ユーザーで共有する。各ユーザー機器は下り信号品質を毎秒500回ほど定期的に通知している。全ての機器からのそういった情報を使い、基地局が次の2msのフレームでどのユーザーにどれだけデータを送るかを決める。下り信号品質が高いユーザーほど多くのデータを送ることができる。

HSDPAユーザーに割り当てられるチャネライゼーションコード・ツリーの量、すなわちネットワーク帯域幅はネットワークが決定する。この割り当ては「半静的」で、運用中に変更可能だが、フレーム単位に変更できるわけではない。HSDPAユーザーへの帯域幅割り当てと非HSDPAユーザーの音声への帯域幅の割り当てはトレードオフの関係にある。チャネライゼーションコードの割り当て単位は16分割(拡散率が16)であり、HSDPAは16のうちの15まで割り当てられる。基地局が次のフレームをどのユーザーに割り当てるか決める際、各ユーザーにどのチャネライゼーションコードを割り当てるかも決める。この情報はユーザー機器に対して1つ以上の "scheduling channels" で送られる。それらのチャネルはHSDPAの一部ではなく、別個に割り当てられるものである。したがってある2msフレームにおいて、複数のユーザー向けのデータが別々のチャネライゼーションコードを使って同時に送られる。ある2msフレームでデータを受け取るユーザーの最大数は、割り当てられたチャネライゼーションコードの数で決まる。これとは対照的に CDMA2000 1xEV-DO では、データは一度に1人のユーザーにしか送られない。
適応変調符号化詳細は「適応変調」を参照

変調と符号化の方式は、ユーザー毎の信号品質やセル使用率によって変えられる。初期状態では四位相偏移変調 (QPSK)だが、無線の状態がよければ16QAMと64QAMでデータのスループットを劇的に向上させることができる。5つの符号割り当ての場合、QPSKでは最大 1.8Mbit/s、16QAMでは最大 3.6Mbit/s のピーク性能となる。さらに符号を割り当てる(10, 15など)ことによってデータ転送レートが向上し、ネットワークのスループットが向上する。
その他

HSDPAはUMTS Release 5 からその規格の一部となっており、上りリンクを最大 384 kbit/s まで向上させる改良も伴っている。それまでは最大 128 kbit/s だった。

データ転送レートの向上と同時に、HSDPAではレイテンシが短縮されており、結果としてアプリケーションのラウンドトリップタイムが改善されている。

3GPPのその後の規格では HSPA+ がリリースされ、64QAM、MIMO、2つの5MHz搬送波を同時に使用するデュアルセルHSDPAなどの追加でデータ転送レートをさらに向上させている。
HSDPA ユーザー機器 (UE) のカテゴリー

HSDPAは異なるデータ速度の様々なバージョンで構成されている。次の表は 3GPP TS 25.306 の release 9 版の表 5.1a に基づいており[2]、機器クラス毎の最大速度とそれをどういう機能の組み合わせで実現しているのかを示したものである。2009年時点の最も一般的な機器はカテゴリー6(3.6Mbit/s)からカテゴリー8(7.2Mbit/s)のものだった。

プロトコル3GPP Releaseカテゴリー
HS-DSCH 符号の
最大数変調方式MIMO、デュアルセル最大データ転送レート
での符号化率[3]最大データ転送レート
[Mbit/s]
HSDPARelease 51516-QAM.761.2
HSDPARelease 52516-QAM.761.2
HSDPARelease 53516-QAM.761.8
HSDPARelease 54516-QAM.761.8
HSDPARelease 55516-QAM.763.6
HSDPARelease 56516-QAM.763.6
HSDPARelease 571016-QAM.757.2
HSDPARelease 581016-QAM.767.2
HSDPARelease 591216-QAM.7010.1
HSDPARelease 5101516-QAM.9714.4
HSDPARelease 5115QPSK.760.9
HSDPARelease 5125QPSK.761.8
HSPA+Release 7131564-QAM.8217.6
HSPA+Release 7141564-QAM.9821.1
HSPA+Release 7151516-QAMMIMO.8123.4
HSPA+Release 7161516-QAMMIMO.9728.0
HSPA+Release 7191564-QAMMIMO.8235.3
HSPA+Release 7201564-QAMMIMO.9842.2
Dual-Cell HSDPARelease 8211516-QAMデュアルセル.8123.4
Dual-Cell HSDPARelease 8221516-QAMデュアルセル.9728.0
Dual-Cell HSDPARelease 8231564-QAMデュアルセル.8235.3
Dual-Cell HSDPARelease 8241564-QAMデュアルセル.9842.2
DC-HSDPA w/MIMORelease 9251516-QAMデュアルセル + MIMO.8146.7
DC-HSDPA w/MIMORelease 9261516-QAMデュアルセルl + MIMO.9755.9
DC-HSDPA w/MIMORelease 9271564-QAMデュアルセル + MIMO.8270.6
DC-HSDPA w/MIMORelease 9281564-QAMデュアルセル + MIMO.9884.4

16-QAM はQPSKサポートも含み、64-QAMは16-QAMとQPSKサポートを含む。最大データ転送レートは物理層でのデータ転送レートである。アプリケーション層のデータレートはIPヘッダなどを除くので、その約85%である。
ロードマップ

HSDPAの第一フェーズは 3GPP release 5 に示された。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:42 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef