HEMS
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スマートグリッド (英語:smart grid) とは「次世代電力網」と呼ばれる新たな電力供給システムのこと[1]で、従来の電力供給システムとは異なり電力供給側と需要側の両方から制御できる双方向の電力網を構成することで、使用する電力量を最適化できるシステムである。

電力測定機能と通信機能を併せ持った、スマートメーターと呼ばれる高機能な電力計を用いることで、消費側が一日に使用する電力や時間帯と消費電力量の関係などを供給側に送ることができるようになる。これによって、消費電力の少ない時間帯には供給量を減らすなどエネルギーロスを削減できると期待されている。

またスマートグリッドによって電力網が構築されている街はスマートシティ[2]と、限られた範囲でエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理するスマートグリッドは、特にマイクログリッドと呼ばれる。[3]
目的

スマートグリッドの目的はコスト最小化である。スマートグリッドが消費者利益に結びつくかどうかは未知数であるが[4]、2009年からすでにIEEEによる標準化が始まっている。

具体的にはデジタル・コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置同士を発電設備から末端の電力機器までネットワークで結び合わせたり、従来型の中央制御では達成できない自律分散的な制御方式を取り入れたりすることで、電力網内での需給バランスの最適化調整(#逆潮流を参照)と事故や過負荷など(#従来型の電力系統の見直しを参照)に対する抗堪性を高める。スマートグリッドにより、停電防止や送電調整のほか多様な電力契約の実現や人件費削減等が可能になった。
経緯

理念と事業の素地は持続的開発を志向する固定価格買い取り制度にある。にわかに生まれたものではない。

多くの邦書でアメリカ合衆国の電力事業者がスマートグリッドを考案したと書かれている。自然エネルギーを活用するという意味での事業としてはエイモリー・ロビンスが1991年に発表したConsumer Guide to Home Energy Savings が下地であるらしい[5]。技術面では無線アドホックネットワークが専門のトーマス・ピタイトがスマートメーターの核を作ったという。

コンピュータで電力網を制御するという発想は目新しいものではなく、既に1970年代より提案されていた[6]。米国の脆弱な送配電網を、新たに登場したコンピュータ技術により低コストで安全に運用する手法を模索する過程でスマートグリッド構想が生まれた。

電力供給者と需要者をデジタル通信線によって結ぶスマートグリッドは家庭へデジタル回線を引き込む良い機会と考えられた。そして家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していた高機能家電への進出を狙うメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、さらにはITネットワークを主導している企業までが大きな関心を寄せるようになった。また、欧米や日本で電気自動車太陽光発電などが推進され始めたのも、米国が官民を挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけになった。

米国が新たな電力網に"Smart Grid"と名づけて新たな産業分野を作ると、同様の動きが他の先進各国でも生じた。欧州は米国同様の構想で、域内の電力網の再構築・向上を検討している。

電力網全体に新技術を盛り込んだデジタル式の通信および電力制御を行う装置を配置するだけでも、巨額投資が見込める。電力機器メーカーや設備工事業者だけでなく、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉え、特にこうした分野に技術的優位性を持つ日本や米国などでは官民一体で推進しており、周辺産業界とも協力してまずは国際的な標準化の確立を目指している[注 1]。最小のコストで送電網を構築することに狙いがあるため構築コストの低減が大きな課題である[7]

巨額投資はどこから来るか。2014年4月10日、オランダのバンクトラックという非政府組織は、関係各行がグリーンボンドへ投資をすることで市場が盛り上がっていることを評価しつつも、個人投資家の参入を促すため市場の透明化を推進しなければならないという声明を出した[8]。関係各行とは、バンカメシティグループクレディ・アグリコルJPモルガンパリバ大和証券ドイツ銀行ゴールドマン・サックスHSBCみずほ銀行モルガン・スタンレーラボバンク、そしてスカンジナビスカ・エンスキルダ・バンケンである。ここに登場しなかったバークレイズカナダロイヤル銀行ABNアムロ銀行も引き受け実績を上げている[9]
スマートメーター関西電力のスマートメーター詳細は「スマートメーター」を参照

スマートメーターは、電力の検針メーター内に通信機能を持たせた次世代電力量計[10]。電気料金の検針業務の自動化や、HEMS(後述)等を通し電気使用状況の見える化を可能にする[11]。需要家(消費者)と電力会社との間で双方向通信を可能であるため、デマンドレスポンスなど、コミュニティレベルでのエネルギーマネジメントへの貢献が期待される[10]資源エネルギー庁はスマートメーター(記録型計量器)を、スマートグリッドを構成する重要な一要素であるとしている[11]
特徴


電気使用料の検針作業を、通信機能を持った電気メーターが自動的に電力事業者へ遠隔報告する (AMR)。

消費者がPC・モバイル画面等で料金確認ができる(見える化)。

細かな料金体系の実施。

電力使用量の常時監視により、供給計画への役立て。

メリット


供給者のメリット

検針のための人件費や時間を削減できる。


消費者のメリット

多様な電力契約が選択でき、期間に応じて単価に大きな格差をつける場合には、大半の期間安い電気料金を享受できる。

外出先からの家電制御が容易になる[12]


デメリット


供給者のデメリット

避雷などでスマートメーターが故障すると交換修理するまで電力供給が出来ない。


消費者のデメリット

電力契約によってはピーク時等の遠隔操作によるエアコン停止(米国PG&E社)や電力単価の極端な増大が発生し、必要なときに電力を十分利用できない、または高額な料金を支払って利用することになる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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