HD DVDはDVD規格をベースにしてハイビジョン放送時代に対応するために開発された光ディスク規格である。CD、DVDと同様、直径12 cm / 8 cm、厚さ1.2 mmのプラスチック製円盤であるが、読み取りに使われるのは波長405 nmの青紫色レーザーである[1]。DVDよりも波長の短いレーザーを用いることでより高密度の記録が可能となっている[2]。HD DVDの直径12 cmディスクは1層で15 GBの容量を持ち、2層で30 GBの容量を持つ[2]。直径8 cmディスクでは1層で4.7 GB、2層で9.4 GBの容量を持つ。保護層の厚さがDVDと同じ0.6 mmであるため[2]、DVD製造ラインの一部を流用可能であるとされ[3]、また振動によるレンズとディスクの衝突の回避に使用する接近検知システムの一部流用が可能であるとされた。
HD DVDはほぼ同時期に規格が策定されたBDと第3世代光ディスク規格の地位を争っていたが、市場(消費者と、その動向を受けた映画配給会社)はBDを選択。2008年2月19日の東芝の撤退発表で規格争いは終結した。
ただし2004年12月には、HD DVDのコンテンツや商品開発の促進や普及を目的としたHD DVDプロモーショングループがメモリーテック、日本電気、三洋電機、東芝の4社が中心に設立された。だが2008年2月の東芝のHD DVD終息表明を受け関連各社もHD DVD事業の撤退方針を打ち出しており、同グループも約3年以上に規格争いの歴史に終止符を打つこととなり2008年3月28日に公式に解散した。
HD DVDは製品として展開されることはなくなったものの、物理規格や再生機器設計などの技術の一部がCBHDに流用されている。 HD DVDにはDVDと同様に読み取り専用型と記録型の規格が存在する。書き換えができる記録型HD DVD規格はランドグルーブ記録を採用しているHD DVD-Rewritable (HD DVD-RW) の規格策定が行われていたが、2層化が困難なことなどからHD DVD-Rの基本構造を継承したHD DVD-ReRecordable規格を策定しHD DVD-Rewritableの名称をHD DVD-RAMに変更、HD DVD-ReRecordableの名称をHD DVD-RWと決定した。 HD DVD-RWはデータ用が2007年7月からPCメーカー等に向けてサンプル出荷されており、2007年12月に製品化された。ビデオ用は2008年2月に製品化が発表された[4]が東芝の撤退により対応するビデオレコーダーは発売中止となりメディアの発売も中止された[5]。しかしその後、磁気研究所、あきばんぐダイレクトが台湾RiTEK社製のHD DVD-RWメディアの販売を開始した。この製品はAACSに対応しており、書き込みに対応したQosmioシリーズの一部で地上デジタル放送のムーブが可能である。日本国内で入手可能なHD DVD-RWメディアはRiTEK社製のものだけであった。 HD DVD-RAMは製品化されていない。 多層化に関しては2005年5月に片面3層 45 GB(1層15 GB)HD DVD-ROMの開発発表が行われ[6]、2007年のCESにて片面3層 51 GB(1層17 GB)HD DVD-ROMの発表が行われた。また片面3層 51 GBのHD DVD-ROMについては2007年9月12日にDVDフォーラムによって規格化がなされ[7]、11月15日に正式にver.2.0として承認され規格化を完了した[8]が製品化はされていない。 規格は以下。 片面にDVDとHD DVDの両方の記録層を持つツインフォーマットディスクは記録層の深さが現在のDVDと同じであることからピックアップ用のレンズ共用が可能なため、設計製作上のハードルが低いとされる。一部のHD DVDソフトで採用された。 両面ディスクの片面にHD DVD、もう片面にBDの記録層を持つTotal Hi Defが、2規格が店頭に並び混乱を生じることへの解決策としてワーナー・ブラザースにより独自に開発され、製品化が進められていたが2007年秋に開発中止された。ワーナーは2008年1月にBD一本化を表明している。 主に市販ビデオソフトを収録するために策定された規格。従来のDVD-Video規格のHD DVD版とも言えるものだが、コピープロテクションなどではAACS (Advanced Access Content System) とよばれる新技術が使用されている。各プログラムデータの多重化(コンテナフォーマットを参照)にはMPEG2 PSシステムが採用されている。 DVD-VideoのContent Scramble System (CSS) が破られ違法コピーが蔓延していることから、CSSに代わる新たな著作権保護機構としてより強固なAACSが採用されている。このAACSは再生専用メディアに限らず、記録型メディアにも対応している。 HD DVDではHDiとよばれる対話型操作機能が必須機能となっており、すべてのHD DVDプレーヤーで利用可能。HDiはマイクロソフトが中心となって開発されXMLやECMAScript、SMILといったWWW関連技術からなるものであった。
規格
メディアの種類
HD DVD-ROM
読み取り専用のHD DVD規格。12 cm 片面1層 15 GB / 片面2層 30 GB / 片面3層 51 GB、8 cm 片面1層 4.7 GB/片面2層 9.4 GB
HD DVD-R
1回だけ書き込み可能な記録型HD DVD規格。片面1層 15 GB / 片面2層 30 GB
HD DVD-RW
繰り返して書き込みおよび消去が可能な記録型HD DVD規格。片面1層 15 GB / 片面2層 30 GB
HD DVD-RAM
繰り返して書き込みおよび消去が可能なPC用途向け記録型HD DVD規格。ランドグルーブ記録を採用。片面1層 20 GB(2層に関しては未策定)
HD DVD-Video