HD_5980
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HD 5980

チャンドラで撮影したHD 5980のX線画像
星座きょしちょう座
見かけの等級 (mv)11.31[1]
変光星型アルゴル型+かじき座S型[2]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α) 00h 59m 26.5687s[1]
赤緯 (Dec, δ)?72° 09′ 53.911″[1]
固有運動 (μ)赤経: -3.50 ミリ秒/[1]
赤緯: -2.40 ミリ秒/年[1]

距離2.1 ×105 光年
(6.4 ×104 パーセク[3]
絶対等級 (MV)-8.1
(-7.1 / -6.8 / -6.7 [4]
物理的性質
色指数 (B-V)?0.18
年齢3.1 ×106 年[5]
他のカタログでの名称
GSC 09138-01929, 2MASS J00592656-7209540, SMC AB 5, AAVSO 0056-72[1]
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HD 5980は、小マゼラン雲内の星雲を伴う散開星団NGC 346の中にある連星で、小マゼラン雲の中で最も明るい恒星の1つである[6]とともに、既知の恒星の中でも最も光度の大きいものの1つである。

HD 5980星系には少なくとも3つの恒星が存在し、高光度青色変光星(LBV)のような爆発を起こすウォルフ・ライエ星と、もう1つのウォルフ・ライエ星が食連星を形成し、やや離れた場所にO型超巨星がある。そのO型星もまた連星である可能性がある。
発見

名称が示すとおり、ヘンリー・ドレイパーカタログに記載がある19世紀から知られる天体である。1901年、南天にある奇妙なスペクトルの恒星として初めて特筆され、セッキの分類ではV型(輝線星)に位置付けられた[7]。ドレイパーの分類では輝線を伴うO型とされ、このタイプは後にWa型と呼ばれた。

1960年代から1970年代、明るさとスペクトルが時間で変化することや、が起こることが発見され、連星であることがわかったが、当初はウォルフ・ライエ星とOB型星の連星と考えられた[8]。更に観測が進むと、食連星の2つの恒星はいずれもウォルフ・ライエ星であることがわかった[9]。また、食から推定した連星の軌道周期に従って波長が変化しない吸収線が発見され、食連星とは別にO型星が存在する三重星と考えられるようになった[9][10]

1993年、HD 5980は増光し、それに伴ってスペクトルも変化、これがLBVに特有と考えられる劇的な増光となり、以降観測と理論の両面から大きな関心を寄せられる天体となった[11]
星系小マゼラン雲中の星雲NGC 346。左上の一際明るい星がHD 5980。(出典: NASA / ESA / A. Nota (STScI/ESA))

HD 5980は見かけ上単独星にしか見えない。しかし、スペクトルを観測すると、異なる3つの成分が重なっており、3つの高温度星が含まれることがわかる[12]。しかし、1つ1つの成分に分離することは難しく、また、食によって変動したり、3つのうち1つの恒星は固有の変光も示すので、各星の物理的性質は明らかではない。
HD 5980 A

HD 5980 A
物理的性質
半径19.3 R?[3]
質量61 M?[5]
表面重力3.2 G[4]
スペクトル分類WNL[6]
光度2.45 ×106 L?[6]
表面温度43,000 K[3]
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主星Aは、星系で最も明るい恒星である。1990年前後までは、水素が少ない早期型のウォルフ・ライエ星(WN3型)とみられていたが、1993年にLBVの特徴を示す爆発的な増光を起こした[11]。この時、恒星の直径はおよそ10倍に膨張したと考えられ、表面温度も大幅に低下し、スペクトルは水素の強い輝線を伴うB型超巨星のものへ変化した[13][3]。時間が経つと、明るさと温度は元に戻った。恒星風及び恒星風同士の衝突によって外層で発生する輝線が重なるため、光球のスペクトルはよく見えない[5]
HD 5980 B

HD 5980 B
物理的性質
半径16-17 R?[14]
質量66 M?[5]
表面重力3.2 G[4]
スペクトル分類WN4h[6]
光度1.78 ×106 L?[4]
表面温度45,000 K[4]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a)0.70 AU[5]
離心率 (e)0.27[5]
公転周期 (P)19.2654 [5]
軌道傾斜角 (i)86°[5]
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伴星Bは、主星と同様ウォルフ・ライエ星である。主星Aと伴星Bは、公転周期約19.3日の視覚的に分離できない連星系を形成している[15]軌道要素からすると、主星Aと伴星Bの質量は大きく違わないとみられ、軌道傾斜角は86°と推定される[14]。A-B連星系は食連星で、1周期に2回部分食が起こり、副極小の位相が0.36であることから、離心率が0.27の楕円軌道をとっていると推定される[5]。食による減光は、0.2等級に過ぎないが、食の最中に光度曲線が変化したり、スペクトルの輪郭が変形したりしており、伴星Bの周囲には主星Aよりもやや大きいガス領域が存在すると思われる[16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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