HARM
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AGM-88 HARMF-4Gに搭載されたHARM
種類対レーダーミサイル
製造国 アメリカ合衆国
設計テキサス・インスツルメンツ
製造レイセオンテキサス・インスツルメンツ
就役1983年
性能諸元
ミサイル直径254mm
ミサイル全長4.17m
ミサイル全幅1.12m
ミサイル重量355kg
弾頭A/B型 WAU-7/B爆風破砕弾頭 66kg
C型以降 WDU-37/B 爆風破砕弾頭
射程80nm(約148km、AGM-88Fでのスタンドオフレンジ)[1]
推進方式チオコール デュアル・スラスト固体推進剤ロケットエンジン
誘導方式パッシブ・レーダー誘導
飛翔速度マッハ2.0+, 2,448km/h
価格284,000USドル
870,000USドル(AGM-88E)[2]
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AGM-88は、アメリカ海軍のNWC(Naval Weapon Center、海軍兵器センター)とアメリカ合衆国テキサス・インスツルメンツ社が開発し、レイセオン(当初はテキサス・インスツルメンツ)が生産している対レーダーミサイルである。

A-D型までは「HARM」(High-Speed Anti Radiation Missile,高速対輻射源ミサイル)の名称[3] で呼ばれているが、最新のE型は「AARGM」(Advanced Anti-Radiation Guided Missile,先進対輻射源誘導ミサイル)と呼ばれる。
概要歴代の対レーダーミサイルを搭載したF-4G ワイルド・ウィーゼル。AGM-88(左翼外側)、AGM-65(左翼内側)、AGM-78(右翼内側)、AGM-45(右翼外側)

アメリカ空軍アメリカ海軍をはじめとしてアメリカの同盟国で運用されている。敵防空網制圧の主要な手段の一つであり、地対空ミサイルレーダー・システムに関連する電子送信装置から放射される電波を探知し、誘導する空対地ミサイルである。

AGM-45 シュライクおよびAGM-78 スタンダードARMの各ミサイルの後継[3] としてアメリカ海軍が開発し、当初はテキサス・インスツルメンツ(TI)によって生産されたが、TIが軍事・防衛部門をレイセオン(RAYCO)に売却したときにRAYCOに生産が引き継がれた。

対レーダーミサイルは、敵のレーダーから放射される電波をたどって誘導するため、敵レーダーがミサイルの発射を察知して電波の放射を中止した場合は誘導できなくなる。このため、HARMは敵レーダーにその余裕を与えないために従来の対レーダーミサイルよりも高速であることが求められた。プロジェクト名でもあったHARM(High-Speed Anti-Radiation Missile)は、このもっとも重要な要求からきている。その他、AGM-45の欠点でもあった探知可能なレーダー波の帯域改善(ブロードバンド・シーカー)、大きな弾頭、運用上の柔軟性と高い信頼性が求められていた。開発中に航空機の前方または後方のどちらからレーダー波を受けているのか区別できないなどシーカーや誘導装置の問題があったが、1980年の初めまでに問題はほぼ解消された。

HARMシステムは、最初にアメリカ海軍のA-6EA-7E攻撃機およびF/A-18A戦闘攻撃機に搭載され、これらはHARMシステム専用コンピューターであるCLC(後述)を装備された。後に、EA-6B電子戦機にも搭載され、CLCとともにHARMコントロールパネル(HCP)が取り付けられた。また、F-14への搭載を目的としたRDT&Eへの組み込みも開始されたが、これは完了しなかった。アメリカ空軍は、HARMを搭載したSEAD専用機F-4G ワイルド・ウィーゼルを導入し、後にAN/ASQ-213 HTS(HARM Targeting System, HARM目標指示装置)後述を装備したF-16をワイルド・ウィーゼルとして使用している。AGM-88E型からは名称がHARMからAARGMに変更された。

ドイツ空軍が開発したトーネード ECR(Electronic Combat-Recce)は、テキサス・インスツルメンツのELS(Emitter Locating System、電波源測位システム)を備えており、F-4Gと同様にSEAD専用機としてHARMを運用できた[4]

なお、AGM-88の発射の際に限らず、空対地ミサイルを発射する際に、他機に無線で警告するために「マグナム(MAGNUM)」という符丁がコールされる[5]
構成F/A-18Cに搭載されたHARM

AGM-88システムは、AGM-88誘導ミサイル、LAU-118(V)1/Aランチャーおよび航空機に搭載されたHARM専用の電子機器から成る。
AGM-88誘導ミサイル

ミサイルは、発射された航空機の高度および位置と入力されたパラメータをもとに電波源からの電波を分析および追跡することで敵性レーダーへと誘導する。弾体は先端から順に誘導部、弾頭部、制御部および機関部の4つの部分にわけられる。細長い円筒形の本体に、中央部に4枚の誘導翼、末端に4枚の固定安定翼を有する[6]
誘導部

ミサイルの先端にある誘導部は、敵のレーダー波に向かうパッシブ・レーダー・ホーミング(PRH)誘導方式のプロポーショナル誘導装置を持ち、電波源から放射される電波を解析するESM能力を有する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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