H.G.ウェルズ
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なかでも『近代のユートピア』の内容は論争を呼び、当時G・K・チェスタトンE・M・フォースターらはウェルズを批判し、ヘンリー・ジェイムズジョゼフ・コンラッドらはウェルズを擁護した[3]
女性像
『アン・ヴェロニカの冒険』では、女性の自由恋愛や、性愛について話す女性を描き、エドワード朝時代の常識に挑戦する内容として非難された。
ゲーム
ウェルズは、現在ミニチュアゲームと呼ばれるような遊びを題材とした Floor Games や Little Wars を著しており、ウォー・ゲームの商品化の先駆者としても知られる。
原子爆弾
小説『解放された世界』は、原子核反応による強力な爆弾を用いた世界戦争と、戦後の世界政府誕生を描いた。核反応による爆弾は、原子爆弾を予見したとされる。ハンガリー出身の科学者レオ・シラードは、この小説に触発されて核連鎖反応の可能性を予期し、実際にマンハッタン計画につながるアメリカの原子爆弾開発に影響を与えた。
国際連盟
第一次世界大戦中に論文『戦争を終わらせる戦争』を執筆。大戦後に戦争と主権国家の根絶を考え、国際連盟を樹立すべく尽力した。しかし、結果的に発足した国際連盟はウェルズの構想とは異なり国家主権を残していたため、『瓶の中の小人』という論文で国際連盟を批判している。のちに発足した国際連合も同様に批判した。
新百科全書運動
世界平和の基盤となる新世界秩序のための知識と思想の集大成として、1920-30年代に新百科全書運動を展開する。これに関する著書『世界の頭脳』においては、書籍の形態をとらない世界規模の百科事典を構想し、現在のウィキペディアの構造を予言していたとも言われる。
糖尿病患者協会
1934年、糖尿病患者協会の設立を『タイムズ』紙上で国民に呼びかけ、国家規模での糖尿病患者協会が初めて設立された(糖尿病患者協会そのものはポルトガルが世界初)。ウェルズ自身は2型糖尿病を患っていた[4]
人権宣言
第二次世界大戦の勃発に触発され、1939年にウェルズは『新世界秩序』で概略を述べていた「人権宣言」についての書簡を『タイムズ』とルーズベルトに送る。この人権宣言と、それを基に1940年に作成されたサンキー権利章典は、1941年1月6日のルーズベルトの一般教書の中の「四つの自由」を包含しており、さらにのちの世界人権宣言などに影響を与えたとされる。
日本国憲法
ウェルズは日本国憲法の原案作成に大きな影響を与えたとされる。特に日本国憲法9条の平和主義と戦力の不保持は、ウェルズの人権思想が色濃く反映されている。しかし、ウェルズの原案から日本国憲法の制定までに様々な改変が行われたため、憲法9条の改正議論の原因のひとつとなっている。またこの原案を全ての国に適用して初めて戦争放棄ができるように記されており、結果として日本のみにしか実現しなかったことで解釈に無理が生じたと言われている[5]
ウェルズが影響を与えた主な人物、作品

ホルヘ・ルイス・ボルヘス - 『タイム・マシン』から着想を得た評論『コールリッジの夢』や、『水晶の卵』に着想を得た『アレフ』を執筆。ボルヘスが編纂した叢書〈バベルの図書館〉の1冊にもウェルズが選ばれている。

オラフ・ステープルドン - 『世界史大系』から着想を得た年代記『最後にして最初の人類』を執筆。

オーソン・ウェルズ - 『宇宙戦争』から着想を得たラジオ番組『宇宙戦争 (ラジオ)』を制作。

C・S・ルイス - 『別世界物語』において、ウェルズのカリカチュアである科学者を登場させた。

A・A・ミルン - 子供時代にウェルズの教えを受け、当時のウェルズについて自伝で回想している。

アーサー・C・クラーク - 『めずらしい蘭の花が咲く』から着想を得た『尻込みする蘭』や、『月世界最初の人間』から登場人物の名を借りた『登ったものは』を執筆(『白鹿亭綺譚』所収)。

アーノルド・J・トインビー - 『世界史大系』から着想を得た『歴史の研究』を執筆。

ジョン・クリストファー - 『宇宙戦争』から着想を得たトリポッド・シリーズを執筆。

クリストファー・プリースト - 『タイム・マシン』と『宇宙戦争』から着想を得た『スペース・マシーン』を執筆。

K・W・ジーター - 『タイム・マシン』から着想を得た Morlock Night を執筆。

ジーン・ウルフ - 『モロー博士の島』を子供時代に愛読し、のちに『デス博士の島その他の物語』を執筆。

ブライアン・W・オールディス - 『モロー博士の島』から着想を得た Moreau's Other Island を執筆。また『十億年の宴』ではウェルズの作品を論じている。

横田順彌 - 『宇宙戦争』から着想を得た『火星人類の逆襲』を執筆。

スティーヴン・バクスター - 『タイム・マシン』をはじめいくつかのウェルズ作品から着想を得た『タイム・シップ』を執筆。この小説は、ウェルズの遺族から『タイム・マシン』の正式な続編と認められている。

藤倉大 - 短編「世界最終戦争の夢」を題材にしたオペラ「アルマゲドンの夢」を作曲した。

手塚治虫 - 日本の有名漫画家。日本に於けるSF漫画の先駆者の1人。

主要作品リスト

※H. G. Wells bibliographyも参照。
長篇、中篇小説

The Time Machine
(1895) 『タイム・マシン』(その他の邦題『八十万年後の社会』)

The Wonderful Visit (1895) 『驚異の訪れ』

The Island of Dr. Moreau (1896) 『モロー博士の島』(その他の邦題『改造人間の島』)

The Invisible Man (1897) 『透明人間

The Wheels of Chance (1897) 『ホイールズ・オブ・チャンス』-自転車旅行を題材としたコメディ

The War of the Worlds (1898) 『宇宙戦争

When The Sleeper Awakes (1899) 『睡眠者が目覚めるとき』 - 眠りによって203年後(西暦2100年)のディストピアに出現した男の体験談。なお、黒岩涙香の訳書では『今より三百年後の社会』という邦題になっている。

Love and Mr. Lewisham (1900) 『恋愛とルイシャム氏』 - 交霊術に関わった男の物語

The First Men In the Moon (1901) 『月世界最初の人間』(その他の邦題『月の世界を見た男』『月世界旅行』)

The Sea Lady (1902) 『海の貴婦人』

The Food of the Gods (1904) 『神々の糧』 - 合成食品による生物の巨大化を描く

Kipps (1905) 『キップス』 - 風俗小説

A Modern Utopia (1905) 『近代のユートピア』 - ウェルズ流のユートピア

In the Days of the Comet (1906) 『彗星の時代』 - ハレー彗星の接近に着想を得た物語

The War in the Air (1908) 『空の戦争』 - 航空機を用いた戦争を描いた

Ann Veronica (1909) 『アン・ヴェロニカの冒険』(その他の邦題『恋愛新道』) - 女性の性解放を題材とした恋愛小説

Tono-Bungay (1909) 『トーノ・バンゲイ』 - 風俗小説

The History of Mr. Polly (1910) 『ポーリー氏の生涯』 - 自伝的な風俗小説

The New Machiavelli (1911) 『ニュー・マキャベリ』 - 社会主義を題材とした小説

Marriage (1912) 『結婚』

The Passionate Friends (1913) 『情熱的な友人たち』 - 三角関係を描いた恋愛小説

The World Set Free (1914) 『解放された世界』 - 原子力兵器の出現と核戦争の到来を予見

Wife of Sir Isaac Harman (1914) 『アイザック・ハーマン卿の妻』

Bealby: A Holiday (1915)

The Research Magnificent (1915) 『崇高な探究』

The Soul of a Bishop (1917)

Joan and Peter: A Story of an Education (1918)

The Undying Fire (1919)

The Secret Places of the Heart (1922)

Men Like Gods (1922) 『神のような人々』 - ユートピア的な平行世界の体験記

The Dream (1924) - 科学ロマンスと社会小説の中間的作品

Christina Alberta's Father (1925)

The World of William Clissold (1926) 『ウィリアム・クリソルド氏の世界(英語版)』 - ボストンでは禁止

Meanwhile (1927)

Mr Blettsworthy on Rampole Island (1928)

The King Who Was a King (1929)

The Autocracy of Mr Parham (1930)

The Bulpington of Blup (1932)

The Shape of Things to Come (1933) 『世界はこうなる』(その他の邦題『地球国家2106年』) - 未来を扱った架空の年代記

The Croquet Player (1936) 『クローケー・プレーヤー』

Brynhild (1937)

Star Begotten (1937) - 火星人を題材とした作品

The Camford Visitation (1937)

Apropos of Dolores (1938)

The Brothers (1938)

The Holy Terror (1939)

Babes in the Darkling Wood (1940)

All Aboard for Ararat (1940)


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