H&K_G28
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H&K G28 DMR演習でG28E2を構えるドイツ陸軍兵士
H&K G28 DMR
種類軍用狙撃銃
製造国 ドイツ
設計・製造ヘッケラー&コッホ
仕様
種別狙撃銃
口径7.62mm
銃身長421mm
ライフリング4条右回り 1:305mm(1:12″)
使用弾薬7.62x51mm NATO弾
装弾数10/20発
作動方式ガス圧作動方式
ロテイティングボルト方式
全長965mm/1,082mm(銃床最大伸長時)
重量

G28E2:5.8kg(銃本体のみ)

G28E3:5.15kg(銃本体のみ)

発射速度半自動射撃のみ
銃口初速780m/秒
有効射程?600/1000m
歴史 
設計年2010年
製造期間2011年-現在
配備期間2011年-現在
配備先

ドイツ連邦軍

アメリカ陸軍

関連戦争・紛争アフガニスタン戦争
バリエーション

G28E2

G28E3

G28E

製造数560(※2014年現在)
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H&K G28とは、ドイツヘッケラー&コッホ社が開発した半自動式狙撃銃である。
概要

21世紀に入り、ドイツ連邦軍選抜射手ライフル(マークスマンライフル)として長らく使用してきた、H&K G3自動小銃の狙撃銃型(H&K G3A3ZF及びH&K G3SG/1)の後継を検討した。

選定と実射試験は2010年3月より開始され、当初はH&K HK417に二脚を備えて狙撃照準眼鏡を搭載し、狙撃銃仕様とした「G27」が第1候補とされ、G27はG3の狙撃型に比べて携行性・操作性に優れると評価されたが、ドイツ連邦軍がアフガニスタン戦争へ参加した結果、それまでの想定よりも遠い距離で交戦する例が多く、HK417では遠距離射撃時における精度が不足しているとの判断が下され、同年7月、G27は一旦は不採用となった[注 1]。しかし、比較検討された銃の中で、HK417のヨーロッパ民間向けモデルであるMR308に精度の高い競技用銃身を使用したものの評価が高く、これを基にH&K社では若干の改修を加えたものをアメリカ向け民生モデル「DMR762」の名称で開発、DMR762は試験の結果、連邦軍の要求を満たしていると評価された。

DMR762の難点としては、銃本体だけで5.8kgの重量があり、狙撃照準装置他の付属装備を全て装着すると9kgを超える重量があるため、歩兵小隊の装備として用いる“マークスマンライフル”としては重すぎて運用に困難が伴う、との評価がなされたことであったが、これは高倍率の狙撃照準眼鏡と二脚、各種オプションを装着した、より狙撃に特化した“Standard”と、基本的には狙撃照準眼鏡のみを装着し、軽量であることを主眼とした“Patrol/Scout”の2タイプを製造・装備し、またこの2タイプを前線補給処レベルの作業でパーツを組み換えることにより変更可能な構成とすることで解決し[注 2]、この改修後DMR762が2011年8月、一部仕様を変更の上で「G28」の制式名称で採用され、同年12月よりドイツ連邦軍によってアフガニスタンで実戦に投入され、140セットが正式に発注された。2012年6月には更に140セットが追加発注されている。

G28は、ドイツ連邦軍が総計560セットを発注した他、フランス軍において評価試験の結果採用が決定している[3]が、正式な発注はなされていない。また、DMR762はドイツ連邦警察(BPOL)によりG3SG/1及びPSG-1の後継として評価試験が行われている[4]。また、2014年にはハンドガードとロアレシーバーに改良を加えヘビーバレル化したアメリカ向け輸出モデルG28Eが、アメリカ陸軍M110狙撃銃の更新を図るために2012年より開始したCSASS(Compact Semi-Automatic Sniper System:コンパクト半自動狙撃銃システム)計画の採用試験に参加するために開発され[5]、選考の結果、2016年4月1日、採用が決定し最大3,643 挺の導入が決定した[6]。M110A1としての最終的な仕様では多くの変更が加えられた。

H&K社では他にもHK416/417を採用、もしくは導入を検討している国に対してG28シリーズの積極的なセールスを行っている他、DMR762をドイツを始めとした各国に法執行機関向けの狙撃銃として提案している。
特徴

G28は、浸水対応性[注 3]を初めとした原型のHK416/417の持つ高い耐久性と堅牢さを備える上、標準弾を使用した場合で1.5 MOAの精度が保証されている[7]。アッパーレシーバーは基体であるHK417シリーズとは異なり、素材がアルミニウム合金ではなくスチールに変更されている[注 4]。構成部品の約75%、120点のパーツにはHK417シリーズと互換性があり、特に調整なく交換可能である。

銃身は冷間鍛造によって製造された421mm(16.57インチ)長の高精度なもので、機関部と接続されている銃身後端以外には支持点のない“フリーフローティングバレル”構造となっており、銃身の中程にあるガスブロック先端には亜音速弾の使用時に初速と精度の最適化を図ること、及び発砲を重ねた際にガスポートやシリンダーの能力が低下することに対応するための2段階可変式の規制子(ガスレギュレーター)が装備されている[注 5]。銃口部には5つのスリットを持つ大型の消炎器(フラッシュサプレッサー)が装着されている。

ハンドガードは銃身に接触しない“フリーフローティング式(無接触式)”の取付構造で、上下左右4面及びアッパーレシーバー上面にはNATO規格STANAG4694またはSTANAG2324及びMIL規格MIL-STD1913に適合するレイルシステムを備えており、光学照準器が使用できない状況に備えて折畳式(フリップアップ式)の照星と照門が装着されている。ハンドガードには銃身を消炎器の後端まで覆うロングタイプとガスチューブ部まで覆うタイプのショートタイプの2種類があり、工具を用いた組み換えにより変更できる[注 6]

作動形式は原型であるMR308(MR762)と同一のショートストロークピストン型ガス圧作動方式であり、機関部の構造も同一で、セミオートのみでフルオート機能はないため、セレクターは2段階式であることも同じである。セレクターは左右両側で操作できる両用式(アンビタイプ)となっており、ボルトキャッチはボタン部分がHK417/MR308に比べて大型のものとなり、周囲にL字型のガードが追加されている。トリガーガードは手袋を填めていても引き金を引きやすいように下方に湾曲した形状のものに変更されている[注 7]
銃床は“Fully Adjustable”と呼ばれる床底部(ショルダーパッド)と頬当て(チークパッド[注 8])の位置を細かく調整可能な伸縮式(テレスコピック型)のもので、HK417用の通常型の伸縮式銃床も部品の組み換えにより使用できる[注 6]

弾倉はHK417と同じく残弾確認の容易な半透明プラスチック製のものが用いられており、標準で装弾数10発のものを使用するが、HK417と同じ装弾数20発のものも使用可能である。

照準装置は光学照準器が標準装備され、シュミット&ベンダー(S&B)社製 PMII3-20x50もしくは PMII1-8x24 狙撃照準眼鏡のうちどちらかを選択[注 9]して搭載し、状況に応じて装備される追加機器として、ラインメタル LLM-01 レーザーポインター、AimPoint microT-1 ドットサイト、Qioptiq Merlin LR 外装式暗視装置[注 10]、InsightTechnology CNVD-T3熱線映像装置、jenoptik HLR15レーザー距離計、チークパッド、垂直型フォアグリップとハリス(Harris)社製の折畳式二脚が含まれる。アフガニスタンでの戦闘に投入されるために発注されたこともあり、現行のモデルは全てタンカラー[注 11]となっているが、H&K社ではタンカラーの他に各種の迷彩塗装を施したものや、標準的な黒色系のモデルも生産可能としている。
各型及び派生型
G28ベースモデル。
G28E2ドイツ連邦軍制式型の基本(Standard)型。PMII3-20x50スコープを搭載、折畳式の二脚を標準的に備える他、各種の付属装備を装着する。銃床は調整可能な可変型が選択される。
G28E3ドイツ連邦軍制式型のうち、“G28 パトロール(Patrol)”もしくは“スカウト(Scout)”と呼ばれる軽量型。PMII1-8x24スコープのみを搭載し、ハンドガードがショートタイプ[注 12]に、銃床がHK417と同じものになる等、-E2型を持ち運びに適したものとして軽量化が図られている。弾倉は20連型が標準となる。
G28Eアメリカ陸軍のCSASS(コンパクト半自動狙撃銃システム)計画の採用試験に参加するために開発された輸出向け軽量型[5]。なお、“G28E”の名称だが上述の-E2型や-E3型よりも後に開発・発表されたモデルである。G28E3を基に、ハンドガードをKeyMod式レイルシステムに似たもの[注 13]として軽量化し、OSS(Operators Suppressor Systems)社製のモジュラー式サプレッサーが装着されている[9][10]。ロアレシーバーはHK417A2/MR308A3に準じた、セレクターに加えてボルトリリースとマガジンキャッチがアンビタイプとなったものになっており、トリガーはストップスクリュー[注 14]が追加されている[11]。2016年4月にはCSASSとして選定され[6]、“M110A1”の名称で制式採用されることが決定されたが、M110A1としての最終的な仕様では多くの変更が加えられた。
M110A1 CSASS2016年4月、Heckler&Koch社のG28軽量バージョンが、M110 SASS(半自動狙撃システム)に代わる米陸軍のコンパクト半自動狙撃システム契約を獲得、M110A1 CSASSとして採用され、最大3,643 挺の導入が決定された。軽量化の要件を満たすため、鋼ではなくアルミニウム製の上部レシーバーを使用している。


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