Graph500
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Graph500は、グラフ(ネットワーク構造)探査性能ベースのベンチマークに基づく高性能計算コンピュータのランキングである。
概要

高性能計算コンピュータのベンチマークとしてHPLやHPCG(Conjugate Gradient、共役勾配法)がよく用いられている。HPLとHPCGは、密行列もしくは疎行列を要素とする大規模な連立一次方程式を解くというベンチマークである。しかし、近年では高性能計算コンピュータを用いて大量のデータ処理を行う需要が高まってきている。そのような処理の性能の特性や必要とされるアーキテクチャの要件は、HPLやHPCGとは根本的に異なるため、新たな性能指標が必要になった[1]

このような背景から、グラフ探査性能ベースのベンチマークに基づく性能ランキングであるGraph500が誕生した。Graph500では性能指標として、TEPS(Traversed Edges Per Second 1秒間にたどるグラフのエッジ数)を用いる。また、Graph500のベンチマークに対する電力効率を測るため、TEPSを消費電力で割った値(TEPS/W)を性能指標としたランキングGreen Graph500もある。Graph500およびGreen Graph500は、毎年6月にドイツで開催される国際会議International Supercomputing Conference (ISC)と毎年11月に米国で開催される国際会議Supercomputing Conference (SC)で発表される。

Graph500で採用されているベンチマークは、次の3つのカーネルから構成される[2]
グラフ構築

幅優先探索

単一始点最短経路

グラフ構築は性能ランキングには関係なく、幅優先探索と単一始点最短経路についてのみ個別にランキングが行われる。単一始点最短経路は2017年11月に新しく追加されたカーネルである。性能評価では、ランダムに64個の頂点が始点として選ばれ,順番に各カーネルが実行される。そして,64試行の調和平均が性能値に用いられる。
幅優先探索のランキング
2023年11月[3]

順位は変化なしだが、1位と4位のシステムは性能が上がっている。逆に、2位のシステムはプログラムスケールは1つ上がったものの、性能は下がっている。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)15206442138867
2Wuhan Supercomputing Center(中国)Wuhan Supercomputer25241115358
3Oak Ridge National Laboratory(米国)Frontier92484029655
4Pengcheng Lab(中国)Pengcheng Cloudbrain-II4484028463
5国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756

2023年6月[4]

富岳は1位を維持。ただし、ノード数は4.3%減ったにもかかわらず、性能は33.2%向上した[5]。2位と3位に新しいシステムがランクインした。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)15206442137096
2Wuhan Supercomputing Center(中国)Wuhan Supercomputer25240121804
3Oak Ridge National Laboratory(米国)Frontier92484029655
4Pengcheng Lab(中国)Pengcheng Cloudbrain-II4484025243
5国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756

2022年11月[6]

2位にPengcheng Labのシステムがランクインした。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)15897641102955
2Pengcheng Lab(中国)Pengcheng Cloudbrain-II4484025243
3国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756
4東京大学情報基盤センター(日本)Wisteria/BDEC-01 (Odyssey)(富士通)76803716118
5JAXA(日本)TOKI-SORA(富士通)57603610813

2021年11月?2022年6月[7][8]

5位にEuroHPC/CSCのシステムがランクインした。2期連続同じランキングであった。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)15897641102955
2国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756
3東京大学情報基盤センター(日本)Wisteria/BDEC-01 (Odyssey)(富士通)76803716118
4JAXA(日本)TOKI-SORA(富士通)57603610813
5EuroHPC/CSC(フィンランド)LUMI-C(HPE)1492388468

2021年6月[9]

3位に東京大学情報基盤センターのシステムがランクインした。なお、3位と4位のシステムはPRIMEHPC FX1000であり[9][10]、そのアーキテクチャは1位の「富岳」とほぼ同じである。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)15897641102955
2国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756
3東京大学情報基盤センター(日本)Wisteria/BDEC-01 (Odyssey)(富士通)76803716118
4JAXA(日本)TOKI-SORA(富士通)57603610813
5オークリッジ国立研究所(米国)SummitIBM)2048407666

2020年11月[11]

前回は「富岳」が利用したノード数は92,160であるが、今回のノード数は「富岳」のフルノードである158,976である。また、3位にJAXAのシステムが新たにランクインした。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)15897641102955
2国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756
3JAXA(日本)TOKI-SORA(富士通)57603610813
4オークリッジ国立研究所(米国)SummitIBM)2048407666
5ライプニッツ・スーパーコンピューティング・センター(ドイツ)SuperMUC-NG(ドイツ語版)(レノボ)4096396279

2020年6月[12]

「富岳」が1位を獲得。なお、「京」と「富岳」の所属組織は同じであるが、組織名称が計算科学研究機構から計算科学研究センターに変更された[13]。セコイアとMiraは運用終了のため、ランク外になった。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1理化学研究所計算科学研究センター(日本)富岳富士通)921604070980
2国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756
3オークリッジ国立研究所(米国)SummitIBM)2048407666
4ライプニッツ・スーパーコンピューティング・センター(ドイツ)SuperMUC-NG(ドイツ語版)(レノボ)4096396279
5ローレンス・バークレー国立研究所(米国)NERSC Cori - 1024 haswell partition(クレイ)1024372562

2019年11月[14]

「京」は運用終了のため、ランク外になった。

順位設置場所システムノード数プログラムスケールGTEPS
1国家スーパー計算無錫センター(中国)神威・太湖之光(NRCPC)407684023756
2ローレンス・リバモア国立研究所(米国)セコイアIBM)983044123751
3アルゴンヌ国立研究所(米国)Mira(IBM)491524014982
4オークリッジ国立研究所(米国)SummitIBM)2048407666


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