GPS
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地図を表示する場合は、この円も同時に表示し利用者への参考としているものが多い。

また、基本的にGPSでの測位は平面座標に比べて高度の計算精度に誤差が大きい。「衛星航法補強システム」および「補助GPS」も参照
電波伝播経路の特性

GPS衛星からGPS受信機まで電波が達する経路では、電離圏対流圏での電波特性の変化により、若干の電波伝播速度の遅延が生じる場合がある。これによって、計算で定めたはずの空間上の一点の信頼性が損なわれる。一般的に受信機からみてGPS衛星が低仰角の場合、この誤差は増加する傾向がある。これは大気中を電波が伝播するときの遅延による影響が、高仰角(薄い大気を通過する)よりも低仰角(厚い大気を通過する)で大きいからである。またそもそも低仰角衛星からの信号は減衰が大きい[注釈 3]

このための補正手段として、正確な時計をもち座標のわかっている固定局を設置し、GPS受信データから計算した位置と固定局の位置の差から、精度を上げるなどの仕組み(ディファレンシャルGPS、Differential GPS、DGPS)も確立されている。DGPSの補正信号は、かつてFM放送の利用されていない帯域で送信するシステム(JFN系列の放送局で実施)があり、カーナビなどでの利用には有用であった(1997年5月?2008年3月)。また、WAASやMSASMTSATを利用した日本の運用)では、静止軌道の衛星からDGPSの補正信号を各受信機に送信している(WAAS/MSAS静止衛星自体もGPS衛星同様、測位にも使われる)。

このほか、ビル街や谷山ではマルチパス(ひとつの衛星からひとつの受信機までの電波経路が反射によって多数存在すること。旧アナログテレビ放送におけるゴースト現象同様)により、信号の時間差が生じたりS/N比が低下し、精度が落ちる。
受信可能な衛星の個数・配置による影響GPS衛星の軌道アニメーション(慣性系)。数字は北緯45度(北海道付近)から同時受信可能な衛星数

通常日本(本州)では、理想的に空がひらけている場合、受信可能な衛星は6?10個程度である。位置の計算に最低必要な4個より多い衛星がみえている場合は、複数の衛星からの情報で測位精度を向上させることができる。それぞれの衛星からの信号強度(S/N比)を観測したりDGPS情報から衛星ごとの信頼度を与え、また4つ組みの取り方をなるべく計算誤差が大きく出ないように取ったり、さらに複数の測位結果の信頼度が低いものを棄却・平均化するなどの方法がとられる。

受信可能な衛星の個数・配置により、電波伝播の誤差が大きく利いてくる場合がある。原理での三脚での喩えを用いると、ある程度伸び縮みする三脚の頭が動く範囲(推定誤差範囲)は、三脚の脚の開き具合によって異なる。計算に用いる衛星のみかけの位置が接近していると、計算に用いる推定誤差が大きくなる(脚を閉じた三脚ではぐらつきが大きい)。また計算に用いる衛星が一直線に並んでいたりする場合は、ある方向への信頼度が大きく低下する(三脚の脚が縦に並んでいると横方向にぐらつきが大きい)。
補助手段による精度の向上

GPSは原理的には最低4つの人工衛星が見えていることが必要であるが、空が開けていない場合などは、補助手段で精度を向上させることも可能である。当初のGPSの仕様に無い現象を使う方法(ドップラーシフトなど)、想定された定数を使う方法(地表や地図上の道路を移動していると仮定する)、他のセンサー類を使う方法(気圧計など)がある。

まず、GPS受信機内部の時計が正確な時刻に校正された後の一定時間は、時刻情報は内部の時計を用いて3つの衛星で3次元の位置を知ることができる(#原理参照)。しかし、もともとその時計が持っている誤差のため、これも数分で信頼できない時刻になってしまう。

また、地球の形が分かっており、地表(あるいは一定の高度)を移動していると考えられる場合、さらに1つの衛星からの距離を省略しても位置は求められる。地球の形(平均海面)は球体ではなく赤道付近が膨らんだ回転楕円体扁球)であることは知られているが、これをよく近似した3次元曲面(WGS84など)を多くのGPS受信機がデータとして持っている。

さらに受信機のドップラーシフトを観測すると、C/A信号の1ビット送信時間未満の距離の観測もできる。衛星と受信機の距離が接近または乖離している場合、ドップラー効果により受信周波数の上昇または低下(これは信号の位相変化として観測される)がおきる[注釈 4]。これを用いれば、受信機が等速直線運動しかしていないか、それ以外の方向に動いたかも推定できる(1つないし2つの衛星からの信号でもある程度の位置は推定できる)。なお長時間の位相観測によりC/A信号の精度限界以上に精度を上げる方法は、測地用のGPS受信機などでも用いられている。

またカーナビやスマートフォンなどでは、GPSで定期的に位置を決定し、ジャイロ加速度センサから得られる情報で、自律位置推定している物もある。この場合GPS信号を受信できない状態(トンネル内に入ったとき)も、ある程度の位置は分かる。航空機の慣性航法装置と同様であるが、精度は低いため、複雑な移動や時間経過によって位置の信頼性は落ちる[注釈 5]

現在高度の情報が要求される登山用のGPS受信機では、気圧高度計高度方向の位置推定の補助手段としたり、磁気コンパスを併用するものもある。空間の (x, y, z) 方向の誤差は均等であるが、前述のようにGPS受信機の多くは地表に沿って動くことを想定しており、地表に沿った方向の位置推定の精度を上げる代わりに高度方向の位置推定を犠牲にしているためである。詳細な地形図情報とGPS信号を組み合わせて現在高度を求めるものもあるが、階層には対応できない。

モバイル機器に搭載のGPSでは、携帯電話の基地局の位置情報(精度数百m?数km程度)を補助情報として用いることができる。このため初期捕捉を速くしたり、高速移動時に衛星を見失わないための補助手段とすることができる。他にネットワーク通信を利用して、位置演算やGPS情報等を補正し高速化を図っている。(補助GPS

GIS情報を補助手段として用いる場合もある。カーナビでは地図を搭載しているため、道路情報と照らし合わせることで誤差を修正しているものもある(車は道路以外を走れない・水面を走れない、などという制約を利用している)。
測地系詳細は「測地系」を参照

GPS受信機に経緯度を直接入力してナビゲーションする場合、測地系を整合させる必要がある。(例えば、WGS84もしくは日本測地系を選択)
原子時計の遅れ

受信機側での信号処理には、さまざまな要因によるものが含まれるが、高速で運動するGPS衛星の運動による発振信号の時間の遅れと、地球の重力場による時間の遅れである。後者は、衛星軌道の擾乱や信号到達距離の湾曲、発振信号の時間の遅れなどを引き起こす。地上の時計は、GPS衛星の時計よりわずかに遅れるので、GPS衛星の時計は、これを補正するため遅く進むように設計[3] されている。この時間の遅れは相対論効果を考慮した計算結果と高い精度で一致しており、身近な相対性理論効果の実証の一つとして挙げられる[4]
GPSの日時情報
閏秒によるずれ


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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