GPS
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「GPS」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「GPS (曖昧さ回避)」をご覧ください。
船舶用GPS受信機

グローバル・ポジショニング・システム(英語: Global Positioning System, Global Positioning Satellite, GPS、全地球測位システム)とは、アメリカ合衆国によって運用される衛星測位システム地球上の現在位置を測定するためのシステムのこと)を指す。

ロラン-C(Loran-C: Long Range Navigation C)システムの後継にあたる。

アメリカ合衆国が打ち上げた約30個のGPS衛星のうち、上空にある数個の衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、受信者が自身の現在位置を知るシステムである。

1973年にアメリカ国防総省の軍事プロジェクトとして開始され、最初の試験衛星は1978年に打ち上げられた。元来その利用は軍事用途に制限されていたが、1983年大韓航空機撃墜事件発生後、民間機の安全な航行のため民間利用にGPSを開放する事がレーガン大統領により表明された。その後、民生運用に足る精度を満たした「初期運用宣言」は1993年に、軍事運用可能な精度を満たした「完全運用宣言」は1995年に成された[1]

GPSは地上局を利用するロラン(LORAN)-Cと異なり、受信機の上部を遮られない限り、地形の影響を受けて受信不能に陥る事が少ない[注釈 1]

GPS衛星からの信号には、衛星に搭載された原子時計からの時刻のデータ、衛星の天体暦(軌道)の情報などが含まれている。受信機はGPS衛星からの電波を受信し、その発信時刻を測定し、発信と受信との時刻差に、電波の伝播速度(光速)を掛けることによって、その衛星からの距離がわかる。受信機座標(3次元空間上の点)はこれらから求められる。

ただし多くのGPS受信機に搭載されている時計では精度が不足し、そのままでは受信時刻値は不正確となる[注釈 2]。そこで、多くの受信機の測位計算では、4つ以上のGPS衛星からの電波を受信し、受信機座標に加え受信時刻も未知数とする形で求める。

GPS衛星は約20,000kmの高度を一周約12時間で動く準同期衛星である(静止衛星ではない)。いくつかの軌道上に打ち上げられた30個ほどの衛星コンステレーションで地球上の全域をカバーできる。また中地球軌道なので信号の送信電力としても有利であり、ある地域からみても刻々と配置が変化するため、全地球上で誤差を平均化できる(地域によってはカバーする衛星の個数が常に少ない場合もある)。
原理
3次元測位詳細は「衛星測位システム#利用者受信機」を参照

慣性系を仮定すると、光速 c {\displaystyle c} は一定である( c {\displaystyle c} =2.99792458 × 108 m/s)。

GPS衛星と受信機がともに正確とみなせる時計をもっていれば、GPS衛星 i {\displaystyle i} からの信号送信時刻(受信機測定から得る) T i {\displaystyle T_{i}} と受信時刻 t {\displaystyle t} の差にcを掛け、伝播距離が得られる。 c ( T i − t ) {\displaystyle c\,\left(T_{i}-t\right)}

したがってGPS衛星 i {\displaystyle i} の位置を座標 ( X i , Y i , Z i {\displaystyle X_{i},Y_{i},Z_{i}} )、受信機の位置を ( x , y , z {\displaystyle x,y,z} ) とすると、伝播距離は下記の関係式を満たす。 c 2 ( T i − t ) 2 = ( X i − x ) 2 + ( Y i − y ) 2 + ( Z i − z ) 2 {\displaystyle c^{2}\left(T_{i}-t\right)^{2}=\left(X_{i}-x\right)^{2}+\left(Y_{i}-y\right)^{2}+\left(Z_{i}-z\right)^{2}}

なおGPS衛星の位置を得るには、受信データに重畳された航法メッセージ信号を復調し、送信時刻 T i {\displaystyle T_{i}} と組み合わせて求める。

受信時刻 t {\displaystyle t} はGPS受信機の時計の値であり、もしそれが正確ならば、受信機の位置である三つの変数(未知数) x , y , z {\displaystyle x,y,z} を得るために、意味が異なる最低三本の連立方程式があれば良い。

しかしGPS受信機の時計はそれほど正確ではなく、受信時刻 t {\displaystyle t} も未知数とする必要がある。4つの未知数( x , y , z , t {\displaystyle x,y,z,t} )を求めるためには、4つ以上の衛星から受信することが必要となる。
SS変調による測距

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}GPS衛星からの情報を変調する方式であるSS(spread spectrum)変調方式(CDMA:code division multiple access方式などともよばれる)[要検証ノート]は、人工的に作った(真の乱数と区別が付かない)コードである擬似雑音系列に送信データを掛けて送信信号を生成する。

このため、FMAM変調などに比べて広いバンド幅で低電力で送信でき、秘話性(擬似雑音系列がわからなければデータを復調できない)や秘匿性(白色雑音と区別がつかないため送信していること自体がわからない)、同一バンドを異なる擬似雑音系列で多重利用できることなどの特徴がある。

擬似雑音系列の開始位置の時刻を定めておけば、復調時に精度よく送出時刻を知ることができることも特徴のひとつで、測距の基礎となっている。

GPSではこれらの特徴を活かして測位とデータ(天体暦(軌道)の情報などが含まれる)の送信を同時に行っている。

GPS衛星からのL1電波(1.57542GHz)には公表されているC/Aコードを擬似雑音系列に用いた信号と、公表されていない擬似雑音系列であるP(Y)コードの2種類の信号が載せられている。P(Y)コードは軍事目的を想定しており、系列の生成多項式の次数が大きい(擬似雑音系列が一巡するのに長時間かかる)ため、精度は非常に高く(16cm程度)、ミサイル誘導爆弾の誘導に用いられている。

民間利用が許されている暗号化されていないC/Aコードのデータを用いると、95%以上の確率で正確な緯度経度から10m以内の座標が得られる程度の精度となる。これは短時間での精度であり、長期間受信し続けることにより精密な測量も可能である。
測位法

GPSの測位方法は、コード(搬送波の変調)に基づく方法(コード測位方式)と、搬送波の位相に基づく方法(搬送波測位方式)に分けられる。一般にはコード測位が用いられているが、精密測位には搬送波測位が用いられる。
単独測位
コード測位。誤差10m程度(民生用)。
DGPS(ディファレンシャルGPS)
詳細は「ディファレンシャルGPS」を参照Differential GPS(相対測位方式)。コード測位。測位対象となる移動局のほかに、位置のわかっている基地局でもGPS電波を受信し、誤差を消去する方法。基地局で生成された補正情報を送信し、移動局で受信すれば、実時間でDGPSの補正処理を行うことができる。誤差数m。日本国内では海上保安庁の中波ビーコンにより補正情報が送信されていたが、「GPS精度の向上」、「衛星等による別の補正システムの運用開始」、「2019年(平成31年)4月7日に発生するロールオーバー(後述の『1999年8月21日問題』を参照)による信頼性が保証できない」を理由として、2019年(平成31年)3月1日正午をもって廃止となった[2]
ネットワークRTK測位
Real Time Kinematic GPS。干渉測位方式。DGPSと同様に、電子基準点から受信する電波の位相差を計測し、測位計算。測位時間1分以下、誤差数cmが可能。測量地点では、基準受信機を参照基準点(既知)に設置し、(複数の)移動受信機で測位。
高速スタティック測位
干渉測位方式。測量地点で、複数のアンテナを固定設置し、測位時間30以下、誤差1cm以下が可能。
VRS測位
Virtual Reference Station RTK-GPS。RTK測位の弱点(初期待ち時間、複数の受信機が必要、移動範囲が限定、電子基準点から電波が届かない等)を改良。仮想基準点方式。複数の電子基準点と通信回線を結ぶVRSセンターがあり、測量地点では、1つの移動受信機から得られるデータを、携帯電話等によりVRSセンターと送受信し(データを持ち帰り後日計算も可能)、RTK測位を実施。
精度

GPS受信機の測位精度には、原理的な誤差による要因・人為的要因などさまざまな要因がある。ここではその他の不具合も含め列挙する。

下記のうち誤差要因については、GPS受信機である程度推定し表示することができる。GPS受信機がある円内にいる確率が50%以上であるところの円を、CEP(Circular Error Probability)とよぶ。地図を表示する場合は、この円も同時に表示し利用者への参考としているものが多い。


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