GPS衛星
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GPS衛星

GPS衛星(ジーピーエスえいせい、英語: GPS satellite)とは、グローバル・ポジショニング・システム英語: Global positioning system, GPS)で用いられる人工衛星である。正式名称は「ナブスター (英語: NAVSTAR: Navigation Satellites with Time And Ranging) 衛星」である。このシステムの最初の衛星ナブスター1は、1978年2月22日に打上げられた。

GPS衛星コンステレーションは、アメリカ空軍第50宇宙航空団で運用されている。
概要[ソースを編集]

各衛星は、搭載したセシウムまたはルビジウムの高精度原子時計による時間情報と、約6日毎に更新される全衛星の概略精度の天体暦(軌道情報のこと)(概略暦、almanac とも言う)と、約90分毎に更新される衛星自身の天体暦を含むデータを18秒の信号に乗せて30秒周期で、1.2GHz/1.5GHz帯によって送信している。利用者はこの信号を受信することにより、複数の衛星からの情報を元に高度な演算によって、受信地点の正確な三次元位置が得られる。

1993年12月8日に、Block I と、Block II/IIA で24機が揃ったため、Initial Operational Capability (IOC) が整い、初期サービス運用が開始された。1995年4月27日には、Block II/IIA のみで24機が揃ったため Full Operational Capability (FOC) を達成し、正式なサービス運用が開始された[1]
衛星軌道[ソースを編集]

各衛星は、高度20,200km、軌道傾斜角55度、周期12時間の準同期軌道上にあり、各衛星は昇交点経度が60度おきとなる、6種類の軌道面(PLANE A-F)毎に4個が配置され、合計24基で基本となる衛星コンステレーションを形成する。

2009年12月現在の運用数は31基であり、衛星が増えることで測定精度が向上する。7基は、基本となる衛星コンステレーション以外の軌道上にあり、これにより仮に複数の衛星が故障しても、運用に支障がない信頼性と有用性と冗長性を確保している。これらの軌道配置によって、遮蔽されない限り地上のどこからでも6以上の衛星が同時に視界に入る。
送信信号[ソースを編集]

各衛星は荒い精度の C/Aコード (Coarse/Acquisition code) と高精度のPコード (Precise code) の少なくとも2種類の信号を、直接拡散スペクトラム・コードによって送信している。

C/Aコードは1023チップの擬似乱数コードを使い、毎秒102.3万チップの速度で送信しているため、1000分の1秒ごとに乱数は一順する。それぞれの衛星はC/Aコードに固有の拡散符号を使っているので、同じ周波数で同時に送信しても受信時に分離する事が可能になっている。

Pコードは毎秒1,023万チップの擬似乱数コードを使い、毎週繰り返されている。通常の運用状態ではPコードはYコードによって暗号化されてP(Y)コードを作り、有効な暗号解読を持つ解読機だけが解読できるようになる。C/AコードとP(Y)コードは、利用者に正確な時刻を伝える。

Mコードは軍用のコードで、GPS信号に対する高強度のジャミング下でも運用を可能にする。

GPSの使用周波数は、以下の通りである。

L1 (1575.42MHz): ナビゲーション・メッセージ、C/Aコード、P(Y)コードを送信している。1つ目の民用信号。ブロック2R-MよりMコードを乗せた軍用信号をL1周波数上で送信している。新しいブロック3衛星からL1C(L1より高強度)民用信号を混合して送信することが計画されている。

L2 (1227.60MHz):P (Y) コードを送信している。ブロック2R-M衛星より2つ目の民用信号L2C(L2より高強度)を混合して送信している。L2に対してもMコードを乗せて軍用に送信している。

L3 (1381.05MHz):核爆発探知システム (Nuclear Detonation Detection System, NDS) が使用する。

L4 (1379.913MHz):電離圏層の情報を収集して研究に使用中。

L5 (1176.45MHz):2009年に打ち上げられたGPS衛星2R-20Mより試験が開始された。本格的な運用は2010年以降のブロック2F衛星の打ち上げ以降となる。L1/L2に比べて10倍のバンド幅で3dB(2倍)の尖頭電波強度を持ち、10倍の長さの拡散コードを使い、信号体系も向上させた民用の3つ目の信号。より高精度の位置測定が可能になる。また人命救助等にも活用される他、航空関係者もこれによって、L2よりL5で通信妨害混信に対して効果的に対応できる。

打上げ済みの衛星[ソースを編集]
ブロックIシリーズ[ソースを編集]

1978年にナブスター1が打上げられてから10機のブロックIの衛星が成功裏に打上げられた。しかし1981年12月18日に打上げられたナブスター7は失敗に終わり失われた。

ブロックI衛星はその後に打上げられたブロックII衛星と似たような軌道面をとるが軌道傾斜角は63度である。ブロックIはGPSの概念を検証するための衛星でありシステム開発の各段階を反映したものである。11機の衛星の打上げから学んだ教訓は次の世代の衛星の開発に生かされた。

ブロックI衛星はロックウェル・インターナショナルが製造した。1974年にロックウェル・インターナショナルは8機のブロックI衛星を製造する契約を与えられた。1978年に追加で3機の衛星の製造の契約を結んだ。

衛星は3軸制御方式である。2枚の太陽電池板は設計寿命時点で400ワット以上を供給しニッケル・カドミウム蓄電池に充電される。Sバンドは管制とテレメトリーのために使われる(衛星地上リンクシステム)。UHFチャンネルは宇宙船と地上の間のクロスリンクに使われる。ヒドラジンスラスターは軌道修正に使われる。リアクションホイールを用い機体低部を地球中心方向に向けさせる。ナビゲーションに使われる信号はLバンドの1575.42MHz(L1)と1227.60 MHz(L2)の2つである。
諸元


製造者:ロックウェル・インターナショナル社

姿勢制御方式:3軸制御

太陽電池:パドル型×2枚

キックモーター:Star-27

設計寿命:5年

重量:759kg

軌道:高度20200km円軌道,軌道傾斜角63度

打上げ日
(UTC)打上げ
ロケットロケットの
タイプロケットの
シリアルナンバー射場衛星名宇宙機
ナンバー
(SVN)疑似雑音
系列 ID
(PRN)結果備考
1978-02-22アトラスFSGS-1VAFB SLC-3EGPS 1-1 ⇒ナブスター101成功最初のGPS衛星の打上げ
1978-05-13GPS 1-2 ⇒ナブスター202成功
1978-10-07GPS 1-3 ⇒ナブスター303成功
1978-12-11GPS 1-4 ⇒ナブスター404成功
1980-02-09GPS 1-5 ⇒ナブスター505成功
1980-04-26GPS 1-6 ⇒ナブスター606成功
1981-12-18GPS 1-7 ナブスター707失敗
1983-07-14アトラスESGS-2VAFB SLC-3WGPS 1-8 ⇒ナブスター808成功
1984-06-13GPS 1-9 ⇒ナブスター909成功
1984-09-08GPS 1-10 ⇒ナブスター1010成功
1985-10-09GPS 1-11 ⇒ナブスター1111成功

ブロックIIシリーズ

ブロックIIシリーズの最初の衛星は1989年2月14日に打上げられた。ブロックII衛星はGPS衛星の第2世代の衛星である。最初の本格的に運用されたGPS衛星である。地上指令センターの制御信号を受けることなく2週間システムが運用できるように設計されている。ロックウェル・インターナショナル社は、ブロックI衛星を製造する契約を1981年に改定しブロックIIのSVNナンバー12の衛星を1機製造する契約をむすんだ。改めて1983年にロックウェル社はブロックII/ブロックIIA衛星両シリーズを合計29機製造する契約をした。

衛星はブロックIシリーズと同様に3軸制御方式である。リアクションホイールを用い機体低部を地球中心方向に向けさせる。太陽電池板も同様に2枚のパドル式であり、供給電力は設計寿命時点で710ワット以上に拡大されている。Sバンドは管制とテレメトリーのために使われる(衛星地上リンクシステム)。UHFチャンネルは他の宇宙船と地上の間のクロスリンクに使われる。ヒドラジンスラスターは軌道修正に使われる。ナビゲーションに使われる信号はLバンドの1575.42MHz(L1)と1227.60 MHz(L2)の2つである。

衛星には、ルビジウム及びセシウム原子時計がそれぞれ2基ずつ搭載されている。
諸元


製造者:ロックウェル・インターナショナル社

姿勢制御方式:3軸制御

太陽電池:パドル型×2枚

キックモーター:Star-37XFP

設計寿命:7.5年

重量:1660kg

軌道:高度20200km円軌道,軌道傾斜角55度

打上げ日
(UTC)打上げ
ロケットロケットの
タイプロケットの
シリアルナンバー射場衛星名宇宙機
ナンバー
(SVN)疑似雑音
系列 ID
(PRN)結果備考
ナブスターII12打上げず
1989-02-14デルタII6925184CCAFS LC-17AGPS 2-1 ⇒ナブスターII-11414成功最初のデルタIIの打上げ
1989-06-10185GPS 2-2 ⇒ナブスターII-21302成功
1989-08-18186GPS 2-3 ⇒ナブスターII-31616成功
1989-10-21188GPS 2-4 ⇒ナブスターII-41919成功
1989-12-11190CCAFS LC-17BGPS 2-5 ⇒ナブスターII-51717成功
1990-01-24191CCAFS LC-17AGPS 2-6 ⇒ナブスターII-61818成功
1990-03-26193GPS 2-7 ⇒ナブスターII-72020成功
1990-08-02197GPS 2-8 ⇒ナブスターII-82121成功
1990-10-01199GPS 2-9 ⇒ナブスターII-91515成功


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