GHOST_IN_THE_SHELL_/_攻殻機動隊
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世界観・ネットワークの描写は「サイボーグ・コンピューター・ネットワークに興味の無い人にも分かりやすく伝わる様にする」[13]「近代を超えるイメージを無理矢理出すと必ず前時代的なものになってしまうから、あまりこだわらないことにする」[29]という方針から、都会の風景を丹念に写すことで「人間の意識が広がって、情報量で溢れかえる」様にイメージ先行で描写していく様にした[13]

どの街をモデルにしようかと西久保と話し合い、「香港しかない」という結論になった時に押井は「あれをパクらなかったアニメはない」と断言した「ブレードランナー」と差別化するために[30]、「一部水没している」「運河を出す」「中国人が沢山出てくる」「英語・ハングル・中国語の看板を出す」というアイディアを出し、看板に詳しいアニメーターを看板の専門のレイアウトマンとして起用した。アニメーターも次第に楽しくなって大量の素材を作り上げ、押井も「どこをどう見ても格好良かった」「圧倒的な存在感と情報量があった」「やっぱり『ブレードランナー』が自分にとってどれ程大きかったがわかった」と大笑いしたが、小倉は「どうして誰も止めないんだ!どんどん大変になるじゃないか!」と怒り、細かい部分を没にしていった[31]
音楽

劇伴制作のコンセプトは「絶対に洋楽にしない」ことであり、基本は民族音楽だが、ピアノ・ハープはもちろん、金管楽器・木管楽器の大部分を禁止し、ガムランを重視した音作りをした[32]。メロディも普段川井がパターン化させていたストリングスで使うフレーズを、押井が躊躇なく「クサいから直してよ」と指摘した[33]。川井は「恥をさらす恐れがありますね。民謡だけだなんて、失敗したら想像するだけでも恐ろしいですよ」と言いながらも[32]、最後までレコーディングに立ち会ったことに、押井は「本来だったら『僕の仕事ではありません』と辞められても仕方がないのに、一生懸命直してくれた」と感謝を示している[33]

当初はブルガリアン・ヴォイスの予定だったが、「現地の歌い手が譜面を読めないから収録できない」という問題から行き詰った。その時に「もしかしたら国内で民謡をやっている人達だったらいけるんじゃないか」と思い立ち、西田和枝社中が洋楽の譜面を読めたためにすぐに歌録りを行うことができた[6]

メインテーマの作詞は伊藤が揃えていた日本神話アニミズム和歌祝詞等の資料を最初から読み漁り、語感のいいのを拾って、川井に送った後に押井と図書館に1週間通いながら作り上げた。最終的には川井がメロディに使える部分をはめていった[34]

樋口沙絵子によるイメージソング「未来への約束」に関しては、押井は「『風の谷のナウシカ』みたいなもの。エンディングで誰かが歌うのだけは絶対いやだった。川井君の音楽が海外でも有名になり始めている時だったので、彼の音楽以外ありえなかった」と楽曲そのもの以前に当時から流行し始めていた「映画のエンディングテーマが主題歌」という風潮に嫌気が差していた事を告白している[6]
海外展開

海外展開に対して押井は「香港をイメージして、いかにもデジタルな生活環境はあまり作らなかったことで、一種の普遍性を獲得できた」[21]「億単位の予算をかけて日本だけで作品を作るのは難しくなってきました。『いずれは製作予算も変わってくるだろう』とは思っていたから、風潮自体は歓迎しています」「制作の過程で色々と介入されて、『監督の権限が侵されるのではないか』という不安がありました。ところが実際は非常に紳士的で制作現場の意図を最大限に尊重してくれました。逆にこちらが拍子抜けするくらいに」「世界配給に関しては考えても仕方がないので、とにかく自分達が作りたいものを作って、出来上がったものをどこまでわかってくれるかはあちら任せです」[9]と語っている。

英語吹き替えのダビング作業に立ち会った際には、事前に制作陣の意志・キャラクターの台詞の意図を伝え[9]、押井と女性の翻訳者の2人でスタジオの会議室で3日程缶詰で翻訳作業を行った[35]が、英語との微妙なニュアンスの違いで完全には翻訳し切れず、婉曲的な表現や微妙な言い回しが、結局はストレートな仕上がりになってしまった[9]

例えば、「日本語で『そいつ』にあたる言葉が英語ではないため、『彼女』『彼』『it』『thet』のどのニュアンスにすればいいのか」「バトーは人形使いをどう意識しているのか」の表現に悩んだ[35]

押井は「作中の台詞とその意図が翻訳でどこまで再現できて、伝える事ができるのかを試せる良い機会になった」[36]「向こうの翻訳者もずいぶんと奮闘してくれたんですけど、アメリカ映画全般が目指している『如何にストーリーをわからせて、キャラクターを立てるか』『お金を払って見に来てくれるお客さんに十分楽しんでもらおう』『どんな人種、どんな階層の人が見に来ても必ず理解させて帰す』という意識やエネルギーが非常に強かったんでしょうね。アメリカ映画のパワーの片鱗を見た気がしますね」[9]「台詞のシチュエーションに対してはどうしても絶対に伝わらないのがあった」「解釈が食い違っているからこそ、全く別のニュアンスが浮かび上がった」[35]「日本語の口パクで作ったのに、英語の口パクでも見事に合っていたのは向こうのキャストの技術がすごい。けれど、どんな人が聞いてもわかる英語・正しい英語を使っていて、芝居のニュアンスがメタメタで、セリフとしても全然いいのがなかった。逆説的に『わずか2日間という限られた時間で、役を掴み、セリフ・呼吸・セリフとセリフの間等、全部含めて芝居で正しく吹き込んでいく』とまずできる人がいない作業をこなす日本の専業声優の皆様は『偉大な仕事をしているな』と思った」[37]と振り返っている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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