GHOST_IN_THE_SHELL_/_攻殻機動隊
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それがよかった」と振り返っている[4]。実際の作業でも、原画に入る前に大きな紙に各カットの背景と人物を同一のパースで精密に描くことが求められ、事あるごとに定規でパースをとりながら作業する必要があった。押井は「カメラを下げて広角のレンズを使うと空間を広く取れて、画面に奥行きが出やすい」ローアングルを好み、レイアウトをチェックした後に「もう少しカメラを下げて」と注文することが多かった[23]

当初は沖浦はキャラクターデザイン作業に専念させて、作画監督は黄瀬のみが担当する予定だったが、画面の情報量が1人ではスケジュールの締め切りまでに対応できない程に多かったことから、沖浦との共同になった。実際の作画作業では沖浦・黄瀬が2人で話し合って決めて、押井は一切分担の割り振りの話し合いには介入しなかった[24]

黄瀬は「自分の絵を沖浦のレベルに持っていくことが精一杯で、楽しむ余裕なんてなかった」と振り返っている[23]

人間の手で書いたアニメーションは様々な暖かみのあるニュアンスを出しやすい反面、どうしても余分な効果が出てしまうことがあった。冷たい質感が重要なテーマを持つシーン、モニター・ホログラフィー・電脳映像等デジタルアニメーションで表現すること自体を目的としたシーンを制作し、セルアニメーターの負担を和らげることを目的に3DCGを導入した。「CG制作の経験値を得るために使ってほしい」という現場的な要請もあったため、機会がある毎に様々な表現を制作した[22]
デザイン

「あまり未来的過ぎない、現実感があるけど、現実からちょっと離れた」銃器のデザインを開発し[25]、世界観を掴むために、メインスタッフ全員で香港・グアムへ行き、本物の銃を試射し[6]、実銃とモデルガンの質感の差異を体感した[26]。その後、押井・磯光雄納富貴久男からなる銃器デザイン開発チームを結成し[27]、押井の注文を元に磯がマニアックなデザインを施し、そこに納富が厳しくチェックする作業を繰り返し、デザイン決定までに4ヶ月かけた[28]。その作業はアニメーションそのものにも反映され、マズルフラッシュ(銃を撃った時の閃光)の質感・着弾の表現等それまでの方法論から脱却することに成功した[26]

拳銃は全て現実に存在しているのを、そのまま設定表に起こした。素子の使用武器はFN P90FA-MASのデザインを意識している。完全にオリジナルとしてデザインした武器は、バトーが使った「サイボーグでなければまともに打てない様に」と注文した対戦車用のライフルだけである[17]

押井は「原作の素子では、どう考えてもあの胸で銃が構えられない。銃器を日常的に扱うには首も太くしないと変だし、肩幅も当然あるだろう」と考えながら、キャラクターデザイナーの沖浦と相談して、海外のボディビルダーの女性の写真集を集めたりしながら、デザインを開発していった。作画の作業に入ったところで、アニメーター達から「素子の胸が小さい」という不満の声があがった。それに対して「本当はもっと小さくしたかった。これでもかなり妥協している。筋骨で体を描いてほしい」と説得した[6]

色彩設定は「色は状況・シチュエーションでどんどん変わっていく。現実の世界からして、同じ肌の色なんて厳密には存在しない」という西久保・遊佐の意向から、シーン・展開に合わせて臨機応変に変えていき、設定表通りに塗られたカットはわずか2カットしかない[14]
世界観

世界観・ネットワークの描写は「サイボーグ・コンピューター・ネットワークに興味の無い人にも分かりやすく伝わる様にする」[13]「近代を超えるイメージを無理矢理出すと必ず前時代的なものになってしまうから、あまりこだわらないことにする」[29]という方針から、都会の風景を丹念に写すことで「人間の意識が広がって、情報量で溢れかえる」様にイメージ先行で描写していく様にした[13]

どの街をモデルにしようかと西久保と話し合い、「香港しかない」という結論になった時に押井は「あれをパクらなかったアニメはない」と断言した「ブレードランナー」と差別化するために[30]、「一部水没している」「運河を出す」「中国人が沢山出てくる」「英語・ハングル・中国語の看板を出す」というアイディアを出し、看板に詳しいアニメーターを看板の専門のレイアウトマンとして起用した。アニメーターも次第に楽しくなって大量の素材を作り上げ、押井も「どこをどう見ても格好良かった」「圧倒的な存在感と情報量があった」「やっぱり『ブレードランナー』が自分にとってどれ程大きかったがわかった」と大笑いしたが、小倉は「どうして誰も止めないんだ!どんどん大変になるじゃないか!」と怒り、細かい部分を没にしていった[31]
音楽

劇伴制作のコンセプトは「絶対に洋楽にしない」ことであり、基本は民族音楽だが、ピアノ・ハープはもちろん、金管楽器・木管楽器の大部分を禁止し、ガムランを重視した音作りをした[32]。メロディも普段川井がパターン化させていたストリングスで使うフレーズを、押井が躊躇なく「クサいから直してよ」と指摘した[33]。川井は「恥をさらす恐れがありますね。民謡だけだなんて、失敗したら想像するだけでも恐ろしいですよ」と言いながらも[32]、最後までレコーディングに立ち会ったことに、押井は「本来だったら『僕の仕事ではありません』と辞められても仕方がないのに、一生懸命直してくれた」と感謝を示している[33]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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