GHOST_IN_THE_SHELL_/_攻殻機動隊
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機動警察パトレイバー 2 the Movie』の制作が終わり、熱海に建てた家に引っ越して、住宅ローンの返済に悩んでいた頃[5]に『犬狼伝説』のOVA化の企画書を持ち込んだ押井に石川光久が本作の映像化の企画書を出した[6]。偶然にも事前に原作を読んでいた押井は「原作で扱っている世界が『今、語られるべき世界』『一種の予感』として語るのに相応しい」「アメリカ映画では、コンピューターの存在を十分な説得力を持って描き切った作品は多くない。このテーマはアニメで表現するべきだ」と思っていた押井は、「映画にできるタイムリーな企画」と確信し[7]、住宅ローンを返済するためもあり、その場で石川のオファーを承諾した[5]。押井側が出した『犬狼伝説』の企画は後に『人狼 JIN-ROH』として形を変えて実現する[6]

当初はOVAとして発表する予定だった[8]
製作委員会

レコード会社「ポリグラム」によって「ジャパニメーションを中心にアニメの世界市場を形成する」ことを指針に「MANGA ENTERTAINMENT」を設立。本作が製作第1作目になった[9]

製作委員会講談社バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENTの3社であり、Production I.Gはスポンサーとして参加していない。しかし、過去に講談社が別件でI.Gに制作を頼んでいたが、別の作品の制作途中だったために断った過去があったために、講談社側は本作の企画に対して石川に「できればやってほしい」と頭を下げた。そのため、石川は強気な立場で交渉に臨むことができ、講談社からI.G・押井・伊藤等に支払われる制作者印税として2%をもらえる条件を引き出せた[5]
脚本

押井は脚本制作にあたって、「自分の作る作品は脇役の視点で物語が進んでいくものばかりなので、原作の主人公が能動的に関わっていく物語を作る」[10]「原作にある台詞は極力いっぱい使う」[11]「ハッカー・疑似体験・ネットワーク等、専門技術に関わる部分を掘り下げる」[12]と決めた。

原作を読んだ時、押井は「これは結婚して、主人公が変わる話だ」と解釈し、「教会」「祭壇」「ウェディングベル」等結婚をモチーフにした演出を施し[10]、人形使いと素子のドラマとしてまとめる様に集中した[13]。実際の脚本制作作業は、事前にテーマが固まった上で、原作を改めて20?30回熟読し直し、単行本の欄外に書いてあった参考文献を入手可能な品物は全て手に入れて読み込み[14]、原作から使える台詞を全部抜き出して、再構成するという「執筆」というよりは「編集」「コラージュ」に近い方法で行われた[15]。伊藤はそれに合わせて、「素子の性格のアレンジ」「原作の序盤のエピソードを人形使いが絡んでいる様に改変」「聖書からの引用」というアイディアを出し、押井と士郎の仲介役を務めた[16]

押井は「マスコットとしての印象が強いので、どうしても可愛くなってしまう。声は決定的になってしまうだろう」「アクションシーンが素子のアクションではなく、戦車のアクションになってしまう」[17]「人間の自我の同一性を巡る物語なのに、人工知能なんて出したら、尺の中で解決できないし、人形使いが出る意義がなくなってしまう」という理由から、原作の人工知能を搭載した戦車であるフチコマを抹消する決断を下した[18]。密かにフチコマの設定画を描き上げていた竹内敦志はそれを聞いてショックを受けた[19]

その結果、最終的には「物語・台詞はほとんど変わらないけど、キャラクター・世界観を微妙に変化させることで全然違う方向に持っていく」という構成になった。押井は「普通の原作者なら一番嫌がりそうな作り方なのに、士郎さんは我慢してくれた。僕だったら怒りまくっていた」と振り返っている[11]
制作体制

映像演出としては「キャラクターは骨格が透けて見えるように描き、筋肉の動きまで表現する」[6]「電脳空間という架空の純粋概念みたいな世界はどうしようもないので、『人間の眼が見ている世界』ではなく、『人間の脳が見ている世界』をどの様に絵にするか」[20]「キャラクターの普通のアニメーションでは、物を食べる・走る・歩く・まばたきをする等という生命感を出す演出をしているが、今回はそういう『普通の人間』として描くことを全部やめて一種の『人形』の様に描く。特に草薙にはそれを徹底させる」[7]「銃を持つことによって生じる動きを『戦闘行為』としての重さを出し、且つ『アクション』『殺陣』としての理屈を持たせる為に、アクションシーン自体を少なくする。銃を扱う描写も『引き金を引けば弾が出る』という簡単なものではなく、道具として扱うためのノウハウも描写する」[21]「人形使いは自意識を持ったプログラム。ただのロボットではないから色々な形で登場するけど、人間的な意識とは違う意識を持った存在であり、素子と一種のメロドラマを展開する。それを観客に気づいてもらうために、『水面』『鏡』を通して『もう一人の自分』という虚像が浮かび上がるイメージを視覚的に描く」[22]等の様々なコンセプトを用意し、それらの表現に苦心した[20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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