GHOST_IN_THE_SHELL_/_攻殻機動隊
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声は決定的になってしまうだろう」「アクションシーンが素子のアクションではなく、戦車のアクションになってしまう」[17]「人間の自我の同一性を巡る物語なのに、人工知能なんて出したら、尺の中で解決できないし、人形使いが出る意義がなくなってしまう」という理由から、原作の人工知能を搭載した戦車であるフチコマを抹消する決断を下した[18]。密かにフチコマの設定画を描き上げていた竹内敦志はそれを聞いてショックを受けた[19]

その結果、最終的には「物語・台詞はほとんど変わらないけど、キャラクター・世界観を微妙に変化させることで全然違う方向に持っていく」という構成になった。押井は「普通の原作者なら一番嫌がりそうな作り方なのに、士郎さんは我慢してくれた。僕だったら怒りまくっていた」と振り返っている[11]
制作体制

映像演出としては「キャラクターは骨格が透けて見えるように描き、筋肉の動きまで表現する」[6]「電脳空間という架空の純粋概念みたいな世界はどうしようもないので、『人間の眼が見ている世界』ではなく、『人間の脳が見ている世界』をどの様に絵にするか」[20]「キャラクターの普通のアニメーションでは、物を食べる・走る・歩く・まばたきをする等という生命感を出す演出をしているが、今回はそういう『普通の人間』として描くことを全部やめて一種の『人形』の様に描く。特に草薙にはそれを徹底させる」[7]「銃を持つことによって生じる動きを『戦闘行為』としての重さを出し、且つ『アクション』『殺陣』としての理屈を持たせる為に、アクションシーン自体を少なくする。銃を扱う描写も『引き金を引けば弾が出る』という簡単なものではなく、道具として扱うためのノウハウも描写する」[21]「人形使いは自意識を持ったプログラム。ただのロボットではないから色々な形で登場するけど、人間的な意識とは違う意識を持った存在であり、素子と一種のメロドラマを展開する。それを観客に気づいてもらうために、『水面』『鏡』を通して『もう一人の自分』という虚像が浮かび上がるイメージを視覚的に描く」[22]等の様々なコンセプトを用意し、それらの表現に苦心した[20]

制作中にスタッフの間で「バーチャファイター」が流行り、仕事の合間にゲームセンターに通っていた。そこから、押井は絵コンテに表現したい動きの指定として「『バーチャファイター』の連続技みたいな感じで」と指定し、それは光学迷彩をまとったキャラクターの表現に反映された[23]

スケジュールについては「その時の最新テクノロジーを使って画面に詰め込んだ緻密な情報量によるリアリティで、どれだけ観客を圧倒できるか」を考え、10ヶ月の実制作スケジュールの内、3ヶ月をレイアウトシステム制作に集中させて、作画作業は3ヶ月もなかった。押井は「指針を出してしまうから、無駄な作業を一切させない。それがよかった」と振り返っている[4]。実際の作業でも、原画に入る前に大きな紙に各カットの背景と人物を同一のパースで精密に描くことが求められ、事あるごとに定規でパースをとりながら作業する必要があった。押井は「カメラを下げて広角のレンズを使うと空間を広く取れて、画面に奥行きが出やすい」ローアングルを好み、レイアウトをチェックした後に「もう少しカメラを下げて」と注文することが多かった[23]

当初は沖浦はキャラクターデザイン作業に専念させて、作画監督は黄瀬のみが担当する予定だったが、画面の情報量が1人ではスケジュールの締め切りまでに対応できない程に多かったことから、沖浦との共同になった。実際の作画作業では沖浦・黄瀬が2人で話し合って決めて、押井は一切分担の割り振りの話し合いには介入しなかった[24]

黄瀬は「自分の絵を沖浦のレベルに持っていくことが精一杯で、楽しむ余裕なんてなかった」と振り返っている[23]

人間の手で書いたアニメーションは様々な暖かみのあるニュアンスを出しやすい反面、どうしても余分な効果が出てしまうことがあった。冷たい質感が重要なテーマを持つシーン、モニター・ホログラフィー・電脳映像等デジタルアニメーションで表現すること自体を目的としたシーンを制作し、セルアニメーターの負担を和らげることを目的に3DCGを導入した。「CG制作の経験値を得るために使ってほしい」という現場的な要請もあったため、機会がある毎に様々な表現を制作した[22]
デザイン

「あまり未来的過ぎない、現実感があるけど、現実からちょっと離れた」銃器のデザインを開発し[25]、世界観を掴むために、メインスタッフ全員で香港・グアムへ行き、本物の銃を試射し[6]、実銃とモデルガンの質感の差異を体感した[26]。その後、押井・磯光雄納富貴久男からなる銃器デザイン開発チームを結成し[27]、押井の注文を元に磯がマニアックなデザインを施し、そこに納富が厳しくチェックする作業を繰り返し、デザイン決定までに4ヶ月かけた[28]。その作業はアニメーションそのものにも反映され、マズルフラッシュ(銃を撃った時の閃光)の質感・着弾の表現等それまでの方法論から脱却することに成功した[26]

拳銃は全て現実に存在しているのを、そのまま設定表に起こした。素子の使用武器はFN P90FA-MASのデザインを意識している。完全にオリジナルとしてデザインした武器は、バトーが使った「サイボーグでなければまともに打てない様に」と注文した対戦車用のライフルだけである[17]

押井は「原作の素子では、どう考えてもあの胸で銃が構えられない。銃器を日常的に扱うには首も太くしないと変だし、肩幅も当然あるだろう」と考えながら、キャラクターデザイナーの沖浦と相談して、海外のボディビルダーの女性の写真集を集めたりしながら、デザインを開発していった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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