Gタンパク共役受容体
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典型的なGタンパク質共役受容体の模式図。N末端が細胞外に、C末端が細胞内にあり、7つの膜貫通ドメインと細胞内と細胞外にそれぞれ3つずつループがある。

Gタンパク質共役受容体(ジータンパクしつきょうやくじゅようたい、: G protein-coupled receptor、GPCR)は、生体に存在する受容体の形式の1つである。様々な機能を持ったGタンパク質共役受容体が見られ、既知のタンパク質の中では最大のスーパーファミリーを形成している。別名としてGタンパク質結合受容体、あるいは細胞膜を7回貫通する特徴的な構造から7回膜貫通型受容体(ななかいまくかんつうがたじゅようたい)[1]と呼ばれることもある。細胞外の神経伝達物質ホルモンを受容してそのシグナルを細胞内に伝えるが、その際Gタンパク質[2]と呼ばれる三量体タンパクを介してシグナル伝達が行われる。Gタンパク質共役受容体には様々な種類が存在し、多くの疾患に関与しているため、市販薬の数割がGタンパク質共役受容体のうちのいずれかを標的としている[3]
歴史

1986年、網膜に存在する光受容体ロドプシンと、心臓に存在するβ2アドレナリン受容体(β2AR)が発見された。この2つの分子は、限局している領域も機序も異なるタンパク質ではあったが、「膜を7回貫通している」という構造的な共通点が存在した。最初のGタンパク質共役受容体の結晶構造が2000年にウシの網膜から精製したロドプシンで決定され[4]。それまで同じ7回膜貫通タンパク質であるバクテリオロドプシンの光駆動水素イオンポンプ構造モデルより、複雑な折れ曲りをもち、さらに7回貫通ヘリックスの後に短い8番目のヘリックスがあるGタンパク質共役受容体に共通の構造が明らかになった。

そして、2007年にブライアン・コビルカとReymond Stevesたちにより、医薬品標的として初めて、昆虫細胞で発現したβ2-アドレナリン受容体T4リゾチームキメラタンパク質の結晶構造が決定され[5]、2011年の極めて精緻な結晶化技術を駆使して、活性化状態のβ2-アドレナリン受容体とG-タンパク質三量体の結晶構造がコビルカたちのグループによって決定され、コビルカのボスでGタンパク質共役受容体の機能解析の専門家であるロバート・レフコウィッツとともに翌年のノーベル化学賞を受賞した[6]。現在までにロドプシン・ファミリーであるクラスAはもちろんクラスB、クラスC、クラスFの立体構造がすでに解かれている。

2018年に発表された医薬産業政策研究所の調査によると、GPCR標的の新薬開発品目数は、開発薬全体の20%(253/1265)を占め、主要な標的分子群のひとつとなっている[7]
分類

Gタンパク質共役受容体は、アミノ酸配列や機能の類似に基づいて6つのクラスに分類されている[8][9][10][11]
クラス A
ロドプシン様受容体
クラス B
セクレチン受容体ファミリー
クラス C
代謝型グルタミン酸受容体
クラス D
真菌の接合因子受容体
クラス E
サイクリックAMP(cAMP)受容体
クラス F
FrizzledSmoothened

ロドプシン様クラスA受容体は、さらに19のサブグループに分けられている(A1-A19)[12]。最近、GRAFS という別の分類法が提案された。これは、代謝型グルタミン酸受容体・ロドプシン・接着因子受容体・フリズルド/苦味受容体・セクレチン受容体の5つに分類するものである[13]

ヒトゲノムには約800種類のGタンパク質共役受容体がコードされており、これらはホルモンや成長因子をはじめとする内因性リガンドを認識する。ヒトのGタンパク質共役受容体のうち半数は臭い受容体であり、約30種類は、まだリガンドや働きが分かっていないオーファン受容体である。
種類
ムスカリン性アセチルコリン受容体
神経伝達物質アセチルコリンの受容体の1種で、キノコ由来の毒物ムスカリンを結合する特徴がある。
アデノシン受容体
神経伝達物質アデノシンの受容体。カフェインも結合する。
アドレナリン受容体
アドレナリンやその他の構造が類似したホルモン、薬物を結合する。
GABA受容体 (B型)

アンギオテンシン受容体
アンギオテンシンの受容体
カンナビノイド受容体
大麻成分およびアナンダミド等の内在性リガンドを結合する。
コレシストキニン受容体
コレシストキニンの受容体
ドーパミン受容体
ドーパミンの受容体
オレキシン受容体
オレキシンの受容体
グルカゴン受容体
グルカゴンの受容体
ヒスタミン受容体
ヒスタミンの受容体
嗅覚受容体
嗅覚細胞にある、におい物質の受容体。(2004年度ノーベル生理学・医学賞対象)


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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