Fukushima_50_(映画)
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若松監督、承知の上の職人仕事か」と、揃って厳しいコメントをつけた[18]

評論家・編集者の中川右介は、事故の事象は「事実」に即しているが、「総理大臣」の描き方は意図的に「事実」を歪曲、あるいは無視しており、なぜ吉田所長と同程度に描かなかったのかと疑問を呈している。作中では「総理が現地へ行くことになったのでベントが遅れ、被害が拡大した」というストーリーに仕立てているが、何種類も出た事故調査委員会の報告書で否定されており、東電側に不備があった事実が抜け落ちている。どんな事故だったのかを知るために多くの人に見てもらいたいとも思うだけに、政治的な「事実の加工」が残念でならないと批判している[6]

当時の首相だった菅直人自身は、本作品に関して「周囲の人は、描き方が戯画的だとか色々言ってくれるんですが、そんなに、ひどいとは感じていません。劇映画ですしね」と語り、事実と微妙に違う点はいくつかあるが非常に事故のリアリティがよく出ている映画だと好意的に評価している[19]

科学ジャーナリストの添田孝史は、東電本店の技術者たちは2008年に福島第一でも津波対策は不可避と結論づけていたにもかかわらず、幹部は対策を2016年まで先送りすると決めたが、その意思決定の中心にいたのは当時東電本店の原子力設備管理部長を務めていた吉田所長だった。各種報告書でも推察できるように実際は「想定外の大津波」ではなく、日本原電や東北電力と同じ程度に津波対応を進めていれば避けられた事故だったにもかかわらず、作中ではまるで人間の想定を超えた事態だったと描かれており、東電の責任から目を背け、事故の本当の姿を現場の美談で隠してしまったと批判している[20]

映画文筆家の増當竜也は、長所も短所もある映画で全面的な肯定も否定もしたくないが、その描出の長短を冷静に見極めた上で福島原発事故という未曽有の大事件に目を向ければ、この映画の存在価値も見出せるのではないか。パニック映画として見るとスリリングな展開で、オールスター・キャストで華やかに映画映えしている。だが作業員らの決死の行動がまるで戦時中の特攻隊を彷彿させることは疑問だし、事故の原因に“大自然の猛威”以上の重大要素があるのでは?という問いにも答えていない。見る側の意識を啓蒙させてくれる真のエンタテインメントに成り得る資格を持ちながら放棄してしまっているのが残念だと評価している[7]
受賞

第44回日本アカデミー賞[21]

最優秀監督賞(若松節朗)

最優秀助演男優賞(渡辺謙)

最優秀撮影賞(江原祥二)

最優秀照明賞(杉本崇)

最優秀美術賞(P下幸治)

最優秀録音賞(柴崎憲治 / 鶴巻仁)

優秀作品賞

優秀主演男優賞(佐藤浩市)

優秀助演女優賞(安田成美)

優秀脚本賞(前川洋一)

優秀音楽賞(岩代太郎)

優秀編集賞(?志良)


第63回ブルーリボン賞[22]

作品賞


ホームメディア

本作品の公開当時は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大緊急事態宣言の発令によって多くの映画館が休業したことから、4月17日から5月14日まで期間限定の有料ストリーミング配信として1,900円でレンタル配信を行った[23][24]

Blu-ray版とDVD版が2020年11月6日にKADOKAWAより発売され、10月16日にEST(ダウンロード動画販売)・TVOD(都度課金)の配信を開始した[25]

Fukushima 50 Blu-ray豪華版(特典DVD付)(DAXA-5715、2枚組、2020年11月6日発売)

Fukushima 50 DVD通常版(DABA-5715、1枚組、2020年11月6日発売)

テレビ放送

テレビ初放送は2021年1月30日20時からWOWOWシネマで放送された[26]

2021年3月12日、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』にて地上波初放送[27][28]。放送日は東日本大震災が発生してから10年の節目を迎えた翌日の放送となる。

回数テレビ局番組名(放送枠名)放送日放送時間放送分数視聴率備考
1日本テレビ金曜ロードSHOW!2021年3月12日()21:00 - 23:24144分11.8%地上波初放送
本編ノーカット


視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム。

脚注[脚注の使い方]^ 『キネマ旬報』2021年3月下旬特別号 p.37
^ “全世界が震撼した3.11の最前線で戦い続けた作業員たちの実話を佐藤浩市主演で映画化『Fukushima 50』製作決定”. スクリーンオンライン. (2018年11月20日). https://screenonline.jp/_ct/17229275 2019年7月9日閲覧。 
^ “佐藤浩市&渡辺謙『Fukushima 50』製作決定 福島原発事故に立ち向かった男たち”. シネマトゥデイ. (2018年11月20日). https://www.cinematoday.jp/news/N0105044 2019年7月9日閲覧。 
^ a b “佐藤浩市&渡辺謙、福島第一原発事故“最前線”で戦う! 映画「Fukushima 50」製作決定”. 映画.com. (2018年11月20日). https://eiga.com/news/20181120/3/ 2020年1月28日閲覧。 
^ “福島原発の真実に迫る「Fukushima50」、主演の佐藤浩市が力説「絶対に忘れてはいけない」”. 映画.com. (2019年4月17日). https://eiga.com/news/20190417/13/ 2019年7月9日閲覧。 
^ a b c 中川右介 (2020年3月6日). “映画『Fukushima 50』はなぜこんな「事実の加工」をしたのか?”. 現代ビジネス. 2020年3月24日閲覧。
^ a b 増當竜也 (2020年4月25日). “『Fukushima 50』と『太陽の蓋』を続けて鑑賞することで見えてくるものとは?”. Cinemas PLUS. 2020年10月10日閲覧。
^ a b c 「我々は特別な存在ではない」実在の“フクシマフィフティ”たちが明かした、原発事故10年目の想いMovie Walker2020年10月19日
^ a b “吉岡秀隆&安田成美、『Fukushima 50』出演決定 吉岡「未来に向かっていくための映画の一つ」”. Real Sound (blueprint). (2019年7月10日). https://realsound.jp/movie/2019/07/post-387204.html 2019年7月10日閲覧。 
^ a b c d e f g h “佐藤浩市&渡辺謙『Fukushima 50』緊迫感あふれる特報到着!吉岡里帆ら37名の追加キャストも”. Movie Walker (ムービーウォーカー). (2019年9月9日). https://moviewalker.jp/news/article/204053/ 2020年1月16日閲覧。 
^ a b c d e f “「Fukushima 50」特報公開 緒形直人、火野正平、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工ら豪華キャスト参加”. 映画.com. (2019年9月9日). https://eiga.com/news/20190909/1/ 2019年9月9日閲覧。 
^ a b c d 映画『Fukushima50』キャスト・実在人物と真実・批判と評価・配信
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac “佐藤浩市&渡辺謙『Fukushima 50』緊迫感あふれる特報到着!吉岡里帆ら37名の追加キャストも”. Movie Walker (ムービーウォーカー): p. 2. (2019年9月9日). https://moviewalker.jp/news/article/204053/p2/ 2020年1月16日閲覧。


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