F-22_(戦闘機)
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F-22選定後、1991年8月にロッキード社は先行量産型開発の契約を受け単座量産型と複座量産型の設計作業を開始する。製作された2機の試作機も量産機開発のために引き続き投入され、試作1号機は技術立証機となり、2号機はエドワーズ空軍基地にて同年10月23日より飛行試験を開始したものの1992年4月に飛行試験中の墜落事故主翼尾翼を一部破損した上に火災も起こした(パイロットは無傷)。

1992年6月に終了した単座・複座量産型の設計作業ではエアブレーキの廃止や空中給油口の追加、各部の寸法変更を行った。基本レイアウトの変更はないものの主翼後退角を48°から42°へ減らし、合わせて水平尾翼の後退角も42°とし、垂直安定板は外側に28°傾け、各翼の面積や形状も変更している[9]

1993年4月の先行量産型1号機の製造開始時点で、冷戦の終結に始まる国防費の削減やアメリカ軍全体の再編等の影響から調達数は750機から648機へ削減されている。

1994年3月には実物大模型(モックアップ)による試験でレーダー反射断面積(RCS:Radar Cross Section)の目標超過(未達成)が判明し、原因となったパネルの形状を変更した。

1995年2月に量産機の組み立て作業が承認され、先行機を使用したエンジンや電子機器類などのチェック作業と並行しての組み立てが進み、1997年4月9日に量産型1号機がロールアウトした。この間にも、モックアップの製作まで行われた複座型のF-22Bの導入中止[10] や451機への調達機数の削減など、導入計画の縮小が進んだ。

YF-22とF-22の形状の差異

YF-22のコックピット

設計と性能

F-22は『ステルス性が高いこと』『アフターバーナーを使用しないでスーパークルーズ(超音速巡航)ができること[注 1]』『STOL(短距離離着陸)が可能なこと』という3つのSの要求通りの性能を持っている。

ステルス性を高めることで、相手のレーダーの探知距離を相対的に短くして、相手がこちらを発見する前にこちらのレーダーで相手を発見して、視程外射程(BVR)の空対空ミサイルで攻撃する戦法が可能になり、ドッグファイトに持ち込まれる可能性は低いとされている。開発元のロッキードマーチン社では「先制発見・先制攻撃・先制撃破(First Look・First Shoot・First Kill)」と呼んでいる。さらに、約1,000mという短距離での離陸を可能としている。(離陸距離に関しては、滑走開始から数10mで離陸している映像が公開されている。[11]
基本構造アンドルーズ空軍基地で、その上昇力を披露するF-22(2008年)

一般的なセミモノコック構造を採用し[9]、素材別の機体重量比はチタニウム6-4 36%、熱硬化性複合素材24%、アルミニウム16%、鋼鉄6%、チタニウム6-22-22 3%、熱可塑性材料1%、その他15%となっている[12][注 2][13]

F-22ではF-117B-2などの攻撃機爆撃機戦略爆撃機)と比較して、より高度なオール・アスペクト(全方位)のステルス設計[注 3] となっている。レーダー探知を可能な限り避けるため、レーダー波を吸収するレーダー波吸収素材(RAM)を使用するだけではなく、吸収しきれなかったレーダー波を内部反射と減衰を繰り返して吸収するレーダー波吸収構造(RAS)も採用した。機体表面にはレーダー波吸収素材を含んだ塗料が用いられ、レーダー波は熱へと変換され、これもレーダー反射断面積を低減させる[14]

また、キャノピー全体、機体外板の継ぎ目、胴体側面、胴体下面の兵器庫扉の前後などを、三角形を組み合わせた形状とし、レーダー反射を特定の方向へ集中させるようになっており、レーダー反射断面積は0.001-0.01m2程度と推定されている[15]。さらに、空気取入れ口ダクト、コクピット、火器管制レーダーなどの電子機器、兵装プラットフォーム、エンジン排気システムなどに被発見性を低下させる工夫が盛り込まれている。

ストレーキの採用や主翼と水平尾翼の間に若干外側に傾けた垂直尾翼を配置するという全体構成は、F/A-18などの従来の戦闘機に先例がある。そのため、先進戦術戦闘機計画にて対抗馬となったYF-23に比べ、驚くほど平凡な外形となった。しかしながら細かく見ると、主翼は複雑な六角形の変形デルタ翼であり、前縁後退角は42度、後縁は17度の前進角となっており、さらに先端付近では42度となっている。前縁は3.25度の下反角が、主翼付け根部で0.5度、翼端で?3.1度の捻りがそれぞれ付けられており、前縁には前縁フラップ、後縁には外側に補助翼と内側にフラッペロンを装備している。照射されたレーダー波を特定方向に反射するために機体を構成する角度は可能な限り同一になっている。更には主翼の後縁の若干の前進角と垂直尾翼とエアインテーク部分についてもほぼ同角度の傾斜を持たせている。機体の平面と平面を繋ぐ曲面部分は「コンティニュアス・カーバチャー」と呼ばれる連続的な曲率を用いたデザインとするなど、随所にステルス性向上のための高度な設計を施している[9]1980年代以降の主流ともいえるカナード付きデルタ翼形式を採用せず、あえて時代に逆行したかのような設計になっているのも、ステルス性を優先した結果である。

水平尾翼は全体が可動する全遊動式であり、垂直尾翼の方向舵は左右の方向舵を内側に向けることでエアブレーキとして機能する。これにより、YF-22では機体背部にエアブレーキを搭載していたのを、F-22ではこれを廃止した[14]。また、燃料タンクは機体前部、及び左右の主翼内部に備わっている。


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