Fダクト (F-Duct)とは、フォーミュラ1カーの空力制御装置の一つで、境界層制御により意図的に境界層剥離を発生させることにより、リアウィングを失速させてダウンフォースを減らし、最高速度を上昇させる機能をもつ。2010年のF1世界選手権においてマクラーレンが先鞭を付け、他チームのマシンにも普及した。
2011年より使用が禁止されたが、2012年には新たにメルセデスがフロントウィングに作用するタイプ(ダブルDRS)を開発した。
概要このシステムはリアウイングを失速させて負荷を取り除くことで機能するエイドリアン・ニューウェイ(レッドブル・チーフメカニカルオフィサー)[1]きちんと働くFダクトは、両方が働いている。
コーナーではダウンフォースがあり、ストレートでは抗力を減らしている。ロス・ブラウン(メルセデスGP・チーム代表)[2]
Fダクトが採用されていた2010年頃のF1マシンはエンジン開発が凍結されていた為、最高速度に明確な差が表れにくかった。しかし、マクラーレン・MP4-25は同じメルセデスエンジン搭載車を含めても、他のマシンより最高速度が速く、直線区間でのポジション争いで優位に立っていた。その秘密兵器として注目されたのが、Fダクトと呼ばれる空力制御装置だった。
開発元のマクラーレンは構造や機能を明らかにしていないが、F1各関係者の発言から、Fダクトにより直線区間で意図的に境界層剥離を生じさせてリアウイングを失速させ、ダウンフォースを減らして最高速を高める装置と考えられている。システムが機能すると、直線区間で9.7km/hほどアドバンテージを得られるといわれる[1]。モノコック上面のダクト(赤丸)。
Fダクトという名称の由来については諸説ある。
ドライバーがシステムの切り替えを脚 (“f”oot) の膝で操作するため[3]。
モノコック上の吸気口がボーダフォン (Vodafone) のスポンサーロゴの“f”の位置にあるため[4]。
以前にマクラーレンが名付けた「Jダンパー」の様な、特定の意味のないコードネーム。ちなみに、Fダクトのマクラーレンにおける正式名称は「RW80」である[4]。
その機能から「ストール・リアウイング(失速リアウイング)」「ブロウン・リアウイング(吹き付けリアウイング)[5]」とも呼ばれる。 レーシングカーのウイングは空気流の中で垂直下方向の力(ダウンフォース)を発生することでタイヤへの荷重を増加させ、コーナリングの限界速度を高めている。しかし、同時に進行方向と水平逆向きの抗力も発生し、加速運動への抵抗となる。ダウンフォースを増やすとコーナー区間を速く走れるが、直線区間のスピードが遅くなる。逆にダウンフォースを減らすと直線区間では速いが、ブレーキングやコーナリング中にグリップ力が足りず、タイヤがスリップしての磨耗を早める結果にもなる。 航空機の翼のようにフラップを操作できる可変式ウイングであれば、コーナー区間ではフラップを立ててダウンフォースを増やし、直線区間ではフラップを寝かして抗力を減らすよう切替えることができる。過去には油圧式可変ウイングを使用した例もあるが、現在はF1テクニカルレギュレーション第3条15項[6]により、空力的影響をもつ部品は固定された状態で動いてはならないと決められている。このため、ウイングのセッティングはサーキットの特性(ラップタイムへの影響度)を考慮して妥協点を探ることが多い。 1990年代末から密かに流行したのが、直線走行時に風圧でフラップがたわみ、固定式ながら可変式と似た効果を得られるフレキシブル・ウイングである。2006年にはフェラーリ・248F1やBMWザウバー・F1.06のウイングが違反ではないかと物議を醸し、リアウイングのフラップに角度固定用のセパレーターを装着することが義務付けられた。2009年にはウイングの静荷重検査でトヨタTF109が予選失格になるという事例もあった[7]。
解説
空力部品の規制