ETCの設備を有する有料道路を管理する各道路事業者(NEXCO3社、都市高速道路各社、地方道路公社等)の多くでは、ETCシステムを利用して料金所を無線通信によって通行する自動車がこれら有料道路を利用した際、各種の条件による通行料金の割引を導入していることがある。本記事では、高速道路会社6社の時間帯割引を中心に、これらのETC割引制度(イーティーシーわりびきせいど)について記述する。
なお、ETC車とは、原則としてETCシステムを利用して料金所を無線通信によって通行する自動車をいうが、無線通信による通行でない場合でも、有料道路事業者側の事情によりETC車とみなされることがある。これらETC車以外の車は、支払い手段にかかわらず(クレジットカード精算やETCカードの手渡し精算等を含めて)現金車と記す。 割引の条件は複雑かつ多岐に渡っているが、おおむね次の5つの類型に分けられる。 同じ名称の割引でも、事業者が違うと対象日・時間帯などの条件や割引率および端数処理の方法が異なることがある。重複適用の可否は、割引の組み合わせによって異なるが、基本的に同種の割引については重複適用されない。 2016年(平成28年)4月からは、圏央道と新湘南バイパスにおいて、割引対象をETC2.0搭載車に限定した割引が導入されている。2021年(令和3年)5月以降は同様の割引が東海環状自動車道でも導入されている。また、2017年1月からは、NEXCOの大口・多頻度割引の割引率拡充がETC2.0のみとなり、同一の割引において従来型ETCとETC2.0とで割引率に差が付くことも生じている。 ETCが全国展開されたのは2001年11月であったが、時間帯割引が本格的に導入されたのは道路公団民営化を目前にした2004年度のことであった。民営化にあたってのコスト縮減により、深夜割引、通勤割引および早朝夜間割引の3つの割引が実施された。 2008年度からは、国の経済対策として、高速道路利便増進事業(以下、単に利便増進事業という)を活用した割引が追加された(安心実現のための緊急総合対策、生活対策)。また、既存の割引についても、割引率が拡充されたり条件が緩和されたりした。 しかし、全体として複雑で分かりにくい内容となり、持続可能性にも欠けることから[5]、利便増進事業の財源が切れる2013年度末を機に、既存の会社負担の割引も含めて再編された。2014年4月1日から、全国路線網においては深夜割引と休日割引の2つとなっている。 NEXCO3社 全国路線網の時間帯割引一覧(2021年8月1日現在)割引名対象日対象時間帯対象車種 現行の割引では休日割引・平日朝夕割引(#頻度型割引の節を参照)に、過去の割引では通勤割引・早朝夜間割引・休日特別割引・平日昼間割引に関係する大都市近郊区間を以下に示す。本節では高速自動車国道(高速国道)の対距離制区間の一部に適用される大都市近郊区間ではなく、東京・大阪近郊における休日割引などの対象外区間としてNEXCO各社が案内している区間を示す[注釈 3][6][7][8]。そのため、高速自動車国道の大都市近郊区間以外に、区間料金制区間および一般有料道路の一部も含まれている。 東京近郊(2021年8月現在)
概要
利用日・時間帯を条件とするもの(時間帯割引)
特定の区間の利用に対するもの
一定期間内の利用頻度や利用額によるもの(頻度型割引)
特定の車両に対するもの
一定のエリアが定額で乗り放題となるもの
東/中/西日本高速道路(NEXCO3社)の時間帯割引
入口料金所を無線通信によって通行していれば、出口料金所で一般レーンに進入して精算した場合でも適用される。ETCレーンが点検等で閉鎖されていた、あるいはETCレーンが設置されていなかった等の理由により、利用者が入口料金所を無線通信で通行したくても不可能である場合は、一般レーンで通行券を受け取って流入し出口料金所の一般レーンで申告すれば、ETC車とみなされて割引が適用される。車載器を搭載していない場合は、そもそも無線通信の意図がないので適用されないが、虚偽申告により適用を受け、後に詐欺罪容疑で逮捕された例もある[1]。
時間帯割引の時間要件は、原則として入口料金所と出口料金所の通過時刻で以って判断する。料金所がないところの通過時刻は考慮しない。インターチェンジに料金所がなく本線上に料金所がある場合は、本線料金所を入口料金所または出口料金所として時刻を判定する。均一制区間など1ヶ所の料金所のみで均一の料金を精算する区間は、その料金所1ヶ所の時刻のみで判断する。
ただし、次の道路では、フリーフローアンテナでの時刻判定を行う。
中央自動車道:高井戸IC - 八王子IC(2016年4月1日から)
新湘南バイパス(2016年4月1日から)
東京外環自動車道(2017年1月11日から)[2]
名古屋第二環状自動車道(2021年3月18日から)[3]
対距離料金区間と均一料金区間を連続して通行する場合、それぞれの区間に分けて別個に判断する[注釈 1]。
第二京阪道路の入口証明券を発券する料金所(交野北IC入口および枚方東IC入口)の通過時刻は考慮しない[4]。
2016年(平成28年)5月現在は、割引対象時間帯に高速道路を通行していればよい割引のみとなっている。対距離料金区間において具体的には、次の(A)、(B)および(C)に該当する利用である。
(A) 対象時間帯に入口料金所を通過する(出口料金所の通過時刻はいつでもよい)
(B) 対象時間帯に出口料金所を通過する(入口料金所の通過時刻はいつでもよい)
(C) 対象時間帯より前に入口料金所を通過して、対象時間帯より後に出口料金所を通過する(対象時間帯をまたぐ利用)
2014年(平成26年)3月以前は、割引対象時間帯に料金所を通過することが要件の割引があった。この要件では、上記(A)および(B)は割引対象になるが、(C)は割引対象外になる。
複数の時間帯割引の重複適用は行わない。1回の利用で複数の時間帯割引の要件を満たす場合、割引後料金が最も安くなるもの1つのみが適用される。
時間帯割引と障害者割引の重複適用は行わない(割引後料金が安くなるほうを適用する)。
「休日」とは、土曜日、日曜日および国民の祝日に関する法律第3条に定める休日(国民の祝日・振替休日・国民の休日)をいう。「平日」とは、休日以外の日をいう。
割引後料金は、高速自動車国道・一般有料道路各道路ごとに、四捨五入により10円単位とする。
2014年3月31日まで、高速自動車国道および多くの一般有料道路では、24捨25入による50円単位であった。
略史
(料金車種区分)割引率距離制限回数制限
地方部
区間(名古屋近郊区間も含む)大都市
近郊区間
深夜割引毎日0時-4時全て30%なしなし
休日割引休日
1月2日
1月3日終日軽自動車等[注釈 2]
普通車30%割引対象外なしなし
大都市近郊区間
高速自動車国道
東北自動車道:川口JCT - 加須IC
常磐自動車道:三郷IC - 谷田部IC
東関東自動車道:湾岸市川IC - 成田IC
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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