DAT
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この項目では、デジタルオーディオテープについて説明しています。その他の用法については「DAT (曖昧さ回避)」をご覧ください。

デジタルオーディオテープ
(DAT)

ソニー DT-90 DATカートリッジ
(単4電池は大きさ比較用)
メディアの種類磁気テープ
記録容量46分
60分
90分
120分
180分
(各標準モード時)
主な用途デジタル音声記録
大きさ54×73×10.5mm
(テープ幅:3.8mm)
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画像左のコンパクトカセットとのシェル(ハーフ)の大きさの違い

DAT(ダット、ディー・エー・ティー、Digital Audio Tape)とは、音声をA/D変換してデジタルで記録、D/A変換して再生するテープレコーダーまたはそのテープ、また特にその標準化された規格のことである。DATテープ ソニー製 10本セットで8800円(店頭価格:2000年当時)ソニー DTC-500ES
広義のDAT

DATは元来、デジタル音声テープ (digital audio tape) を指す一般名詞であり、コンパクトカセットなどのAAT (analog audio tape)、オーディオCDなどのDAD (digital audio disc)、DVカセットなどのDVT (digital video tape) などに対比される用語だった。現在では、デジタル音声テープの規格の1つを指すことが普通である。英語などの表記では、一般名詞は小文字始まり、規格は大文字始まりと区別することもある。

一般向けに商品化された、デジタル音声記録用磁気テープには、以下のようなものがある。

1987年: DAT規格

1992年: デジタルマイクロカセット (NT)

1992年: デジタルコンパクトカセット (DCC)

プロユースのものは、マルチトラックレコーダー#デジタルMTR(テープ)参照。また、PCMプロセッサーや、S-VHS DA(Digital Audio)8ミリビデオのマルチトラックPCMモードも、広義のデジタル音声記録用磁気テープとみなすことができる。

1989年には、小型コンピュータ用のバックアップ用として、DDS が規格化されている。これも以下で説明するDAT規格をベースに開発されており、テープカートリッジの外形は全く同じである。詳細は「デジタル・データ・ストレージ」を参照
規格

高密度な記録のため、VHSベータマックス(βフォーマット)などと同様、ヘリカルスキャンヘッド(回転式ヘッド)を採用している。カートリッジ寸法は、縦54 mm×横73 mm×厚さ10.5 mm。DATテープ規格は、幅が3.8 mm、長さは 15分から180分の時間として表示される。長さの種類には15、46、54、60、74、90、120、180分があり、120分テープの場合、その実長は 60メートルである。なお、ラジカセ用のカセットテープのような表裏両面収録はできず、片面のみ収録である。

DATで使用されるモード一覧は下表の通り。複数のモードが存在するが、一般的な機器は、2つの標準モード、LPモード(オプション2)、ワイドトラックに対応している。ただし、ワイドトラックは再生専用規格で、この規格のソフトは発売されていない。ワイドトラックモードに使用予定のテープの磁性材料はバリウムフェライトを使用する予定だった。

また、DAT 規格でのミュージックテープ製造も模索されており、感熱転写での量産化方式を設計したが、後述する著作権問題との関係で、計画は頓挫した。結果的に市販のDATミュージックテープは48kHzでコピーガードのない少量生産品がわずかに存在した程度だった。カプリッチョ(ドイツ)等の海外マイナーレーベルの輸入品や、当時DATメディアを発売していた花王が独自制作したクラシック音楽(室内楽等)の作品等が該当する。

モード標本化周波数符号化チャネル数DT-120での録音時間
標準 (SP)48 kHz16 bit リニア2 ch120 min
標準44.1 kHz16 bit リニア2 ch120 min
オプション132 kHz16 bit リニア2 ch120 min
オプション2 (LP)32 kHz12 bit ノンリニア2 ch240 min
オプション332 kHz12 bit ノンリニア4 ch120 min
ワイドトラック44.1 kHz16 bit リニア2 ch120 min
WIDE / HS (パイオニア製の一部機種のみ)96 kHz16 bit リニア2 ch60 min
HR (ティアック(TASCAM)製の一部機種)48 kHz24 bit リニア2 ch60 min

加えて、パイオニア(ホームAV機器事業部、後のパイオニアホームエレクトロニクスオンキヨー&パイオニアオンキヨーホームエンターテイメント[1]オンキヨーテクノロジー/ティアック)の一部機種は独自モードとしてサンプリング周波数96kHzによるハイサンプリング記録および再生を扱う事が可能なモードを備える。民生用に限定すれば、D-07、D-07A、D-05、D-06、D-C88、D-HS5の計6機種である。D-07のみ本体にWIDEと表記され、D-05以降の96kHzハイサンプリング対応機種は本体にHSと表記されている。

これは民生用の録音規格としては2000年代初頭に記録用メディアとしてSDメモリーカード等のフラッシュメモリを用いるリニアPCMレコーダーが登場するまで最高水準の録音品質を誇っていたが、再生専用ではDVD-AudioSACDの音質には及ばなかった面もあった。一部の録音機マニアを除く多くの一般ユーザーにはエルカセットや後発のDCCデジタルマイクロカセット(NT)ほどではなかったものの、思いのほか普及しなかった。しかし、確実な高音質を求める業務用、およびプロフェッショナル用の各分野では数多く利用された。

またアイワ(初代法人。現・ソニー〈二代目法人〉)では、ポータブルデッキに専用アダプターを接続することで静止画像の記録にも対応する機種を発売した(HD-X1 + HDV-1)。

日本国内でDATテープを発売したのはソニー、松下電器産業(現・パナソニック)、日本ビクター(現・JVCケンウッド)、TDK(記録メディア事業部、現・グラスブリッジ・エンタープライゼス)、富士フイルム(日本国内の個人向けはAXIAブランド、業務用および日本国外向けはFUJIブランド)、日立マクセル(現・マクセル)、日本コロムビアDENONブランド。現・デノン コンシューマー マーケティング(ディーアンドエムホールディングス))、花王(KAO DIGITAL SOUNDブランド)などである。

最後まで唯一、DATテープを製造していたソニーも、遂に2015年6月を以ってDATテープの生産を終了した。2023年7月現在、新たにDATテープを製造しているメーカーは国内では1つもなく、流通在庫分も入手が非常に困難となっている。

このほか、DATテープをコンピュータストレージ用途に転用したDDSテープ(カートリッジ)も国内の製造メーカーとしては唯一、最後までDDSテープを製造していた日立マクセルも2016年6月末までに生産終了、2017年3月末までに流通終了となった。なお、DATテープの代用品として、テープ幅がDATと同じ3.8mmのDDSテープを使用することも可能である。ただし、音楽録音・再生用のDATブランクメディアとして代用(使用)可能なのは最長でもDDS-1の90mテープ(無圧縮時2.0GB/圧縮時4.0GB、標準モード録再時180分/長時間モード録再時360分相当、一部のパイオニア製DATレコーダー専用96kHz HSモード録再時90分相当)までとなる。
歴史

各社が相次いで開発した、磁気テープにデジタル音声を記録する規格を統一するため、1983年にDAT懇談会が設けられ、1985年に回転式ヘッドを用いるR-DAT(Rotaty Head DAT、回転ヘッド方式DAT)と固定式ヘッドを用いるS-DAT(Stationary Head DAT、固定ヘッド方式DAT)という2種類の規格が策定された。S-DATはメカニズムは簡便だが高密度記録に対応した固定式記録ヘッドの開発が困難で、対してR-DATの回転式ヘッドにはVTRでの実績があったこともあり、R-DATが「DAT」として商品化されることになった。なお、のちのDCC(デジタル・コンパクトカセット)はS-DATで定められたヘッドが固定式という部分は共通しているが、ヘッドや記録構造を大幅に簡略化し、圧縮記録を取り入れており、このときのS-DAT規格と直接のつながりはない。

サンプリング周波数は当初より48kHz、44.1kHz、32kHzに対応する予定だった。しかし、44.1kHzはCDと同じであり、CDの完全同一の複製が可能とあって日本レコード協会などの猛反発に遭った。紆余曲折の末、1987年に発売にこぎつけた民生用の製品は、苦肉の策として44.1kHzのデジタル入力録音が出来ない仕様となった。


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