DAT
[Wikipedia|▼Menu]
しかし、44.1kHzはCDと同じであり、CDの完全同一の複製が可能とあって日本レコード協会などの猛反発に遭った。紆余曲折の末、1987年に発売にこぎつけた民生用の製品は、苦肉の策として44.1kHzのデジタル入力録音が出来ない仕様となった。しかしこれが足かせとなって普及しなかったため、1990年にはSCMS(シリアルコピーマネジメントシステム)を搭載し、CDからの直接デジタル録音が1世代だけ可能で2世代目はアナログコピーは可能だがデジタルコピー不可である機種が登場した。ほぼ同時に普及が始まった衛星放送の音楽番組やミュージックバードエアチェックにも利用され、Aモード:32kHz、Bモード:48kHzに対応した。なお、業務用機にはSCMS機能制限がなかったために、音楽録音スタジオなどでは爆発的に普及した。また、持ち運びが出来るバッテリー駆動の製品を使って、野鳥の鳴き声や汽車、電車の走行音の録音など、野外での生録音を楽しむマニアも少なくなかった。

当初は民生用としてスタートした規格だが、民生用にしてはオーバースペックなほど高性能であり、早くから業務用としてプロの現場で活用され始めた。放送用素材やマスターレコーダー、アイドルやヒーロー等のイベント会場の音響として、盛んに利用された。そのためソニー「PCM-7040」など放送用・業務用の一部の機種では、SMPTEタイムコードが記録できるようになっている。

後期には高音質化の技術がいくつか導入された。16ビット録音でありながら20ビットや24ビット相当の解像度を実現するSBM(スーパー・ビット・マッピング)機能がアイワやソニー製DATに導入された。民生用として1993年3月にそのSBM対応第1号機「DTC-2000ES」を発売した。一方で、パイオニアはHS-DATと呼ばれる方式で標準モードに対し2倍のサンプリング周波数をテープ速度と動作クロックを倍速にして88.2?96kHz録音を民生機器で実現し、民生用として1992年11月16日(録音文化の日)に今日のハイレゾリューションオーディオとされる96kHzハイサンプリング対応第1号機「D-07[2]を発売した。ちなみにDATのテープ速度を倍速で走らせる発想は、既存のコンピューター用DDSドライブからヒントを得たといわれている。

パイオニアはさらにAIRSと銘打った録音システムを送り出す。既存の民生用DATデッキ「D-07A」を基に業務用用途に特化したDATデッキ「D-9601」とデジタルプロセッサー「SP-AR1」を組み合わせ、96kHzサンプリングに加え24ビットまでワードレングスを伸ばしたもので、当時としては珍しい96kHz/24ビットフォーマットに対応していた。さらにD-9601はダウンコンバーターを内蔵し、96kHzから44.1kHzへダウンサンプリングした信号を同社のCDレコーダー「RPD-500」に接続し、アナログを介さずに音楽CDを作る事も出来た。このAIRSは業務用で、一般に普及しなかった。

その他ティアックの業務用ブランドのTASCAMも、DATテープを倍速で駆動しHR(ハイ・レゾリューション)モードで48kHzサンプリング・24ビット録音に対応した業務用DATデッキ「DA-45HR」を2000年に発売した。
終焉コンシューマー用として最後まで製造・販売されていたポータブルDATレコーダー
ソニー DATウォークマン TCD-D100

1992年に登場したミニディスク(MD)が、価格や使い勝手などの面から1990年代半ばから2000年代初頭にかけての民生用オーディオ機器の主流となった[3]。MDの圧縮コーデックATRACのデータ圧縮時のアルゴリズムの大幅な見直しにより高音質化したほか、民生用CDレコーダーの普及も進んだ。そして2000年代後半になってからは、MP3WMAAAC等の高圧縮の音声ファイルフォーマットを採用した携帯型のデジタルオーディオプレーヤー[4]が着実に普及。この間、DATのシェアは縮小の一途を辿った。

2003年にはパイオニアの民生用据置型DATデッキD-05[5]およびD-HS5[6]が販売終了。2005年にはソニーの民生用据置型DATデッキDTC-ZA5ES[7]が販売終了した[8]

1995年7月発売のソニーDATウォークマンTCD-D100が民生用DAT製品最終機種として販売を継続していたが、月間出荷台数が100台程度だったことや、製品に使用する部品の入手困難化、DAT代替製品の多様化、DATユーザーが代替製品への移行が進んでいること、などの要因から、2005年11月25日にソニーから生産終了する旨が発表され、2005年12月初旬に生産出荷終了し、2006年9月までに在庫確保分の販売が全て終了、日本向け民生用DAT製品は姿を消した[8]。また2015年には最後まで音楽用DATテープを生産していたソニーが製造を終了し、DATテープも流通在庫のみとなり、今後入手が困難になると予想される。
代替製品

その後も業務用向け製品は引き続き少量ながら生産が続いていたが、2000年代末までに生産終了している。DAT代替製品として業務用の分野では2010年代以降にDAWによるHDDレコーディングシステムに順次置き換えられ、更に個人の分野であってもPCを利用したUSB接続による外付けのオーディオキャプチャーユニット(例:ローランドが製造・販売する「UAシリーズ」「Rubixシリーズ」、およびヤマハが製造・販売する「AGシリーズ」、コルグが製造・販売する「DS-DAC-10R」等)によるHDDレコーディングに置き換えられていった。また、記録用メディアにSDメモリーカード等のフラッシュメモリを使用した、屋外使用も可能なポータブルかつ非圧縮に対応したレコーダー(いわゆるリニアPCMレコーダー、もしくはデジタルフィールドレコーダー)やティアックが販売するSDメモリーカードやコンパクトフラッシュに両対応した個人向けフルサイズ級単品オーディオ機器用のハイレゾ録再対応据え置き型デジタルマスターレコーダー「SD-500HR」(長期的なコロナ禍からもたらされた製造に必要な半導体不足を理由に2022年3月を以って生産終了。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:82 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef