D-VHS
[Wikipedia|▼Menu]
HSモードは発売当時、家庭用としては唯一BSデジタル放送を完全に記録できる規格だった(転送レート28.2Mbps・BSデジタル放送は24Mbps)。

D-VHSテープも後に最長480分(DF-480、STDモード時)対応のものが発売された。

D-VHSを自社発売したメーカーは日本ビクター、松下電器産業(現・パナソニック)、日立製作所、三菱電機OEM供給ソニーシャープ東芝(日本ビクターより)であった。2008年時点で日本ビクターも含め、すべてのメーカーで製造を終了している。日本ビクターは2007年1月限りで日本国内での販売を終了している(最終機種は「HM-DHX2」で、D-VHS(S-VHS)製品としても最終機種である)。

D-VHSは家庭用としてハイビジョンのまま記録できる媒体としてデジタルハイビジョンを受信するユーザーを中心に普及していたが、デジタルチューナーは非搭載で、外部チューナーかデジタルチューナー内蔵テレビなどと接続しなければならなかった。

2004年4月 - IEC 60774-5 Ed. 1.0:2004 (b) として国際規格化された[6]

2009年4月13日 - D-VHSを発売していたメーカーから2011年以降にBSデジタル放送の録画に支障が出る可能性があることが発表された。2011年にはNHK BShiの終了に伴うNHK衛星第1およびNHK衛星第2のハイビジョン化及び、アナログBS放送の終了や新たな周波数帯の割り当てに伴う新規事業者の参入などBSデジタル放送の再編が予定されていたため、サービス向上の必要から新規局・既存局双方でD-VHSの設計上限である28.2Mbpsを超える送出運用が行われる可能性があった。その場合、録画番組にノイズ混入や音声の途切れなどが想定され、D-VHS機器では回避できないことから、こうした運用が実施された場合はSTDなどSD画質で録画するように呼びかけていた[7]

2018年12月1日以降 - 総務省発表の「4K・8K推進のためのロードマップ」の実施に伴い、現在行われているBSデジタル放送に於いて少なくともNHKと在京キー局系の民放に関しては現行の24スロットが4K・8K放送に必要な帯域を確保するために最大3分の1削られ、BSデジタルハイビジョン放送のビットレートが落ちる事から、D-VHS機器でHSモード録画を行っても設計上限である28.2Mbpsを超える送出運用が行われる可能性はほぼ無くなる[8]

メリット・デメリット

BDレコーダーが存在しない頃は、唯一のハイビジョン画質でデジタル記録できるメディアであり、BDレコーダーが発展途上の時期にはメリット・デメリットが拮抗していたが、2010年代以降はメリットと言える要素は極めて少なくなっている。

メリット

テープ方式のために大容量(DF-480使用時で50.7
GB[注釈 1]、最高画質のHSモード(ハイビジョン画質)で240分(4時間)記録が可能)。

但し、Blu-ray DiscもDL(2層50GB:BSデジタルで260分記録可能)、BDXL(3層100GB:BSデジタルで520分記録可能、4層128GB:BSデジタルで660分記録可能)を商品化している。


コピーフリーの番組を録画したD-VHSはi.LINKまたはDV端子経由でDVDレコーダーやBDレコーダーにダビングができる。

磁気テープによる記録方式のため、適切な湿度・温度管理をしていれば、保存・安定性が高く、D-VHSテープの製品寿命は非常に長い。

デメリット

テープ媒体のため頭出しの時間がかかる(メーカーによっては録画した番組のナビゲーション機能を搭載しているが、同一デッキでの使用に限られる)。

映像のトリックプレイ(いわゆる特殊再生。倍速サーチ等)には
紙芝居のような映像しか出ないこと、また初期のD-VHS機種は早送り・巻き戻し用データ記録規格が策定されていなかった事もあり、映像を見ながらの早送り・巻き戻しが不可能であった。静止画は可能であるものの、コマ送りやスローには一切対応しなかったこと。

D-VHSテープが適切に管理されていない場合、テープの傷やホコリに弱く、特に長時間モードでの録再時に画像エラーが出やすい。

初期の一部機種ではMPEG-2デコーダを内蔵していないため、ビデオ単体では映像が見られない。また、通常のMPEG-2デコーダは搭載しているがハイビジョン用デコーダを搭載していない機種もあり、この場合にはハイビジョンチューナーを経由して再生しなければならない。

コピー・ワンスの番組を録画したD-VHSはBDレコーダーにダビング・ムーブはできない。

ハイビジョン録画・ダビングの手段がi.LINK経由に限られる。そのためi.LINK端子を搭載しないハイビジョンテレビやチューナーからはハイビジョン画質での録画や再生(ハイビジョン用デコーダ非搭載機種)が行えない(ハイビジョン用チューナーを内蔵したD-VHSデッキは発売されなかった)。

2007年1月時点でD-VHSデッキの生産が全て終了しており、D-VHSデッキを新たに導入する手段がない(中古市場でのD-VHSデッキの入手はS-VHSデッキやVHSデッキと比べると現存数がED Betaデッキほどではないものの、かなり少ない故にとても困難である)。

D-VHSテープ自体がDVDやBlu-ray Discと比べてサイズが大きい。

D-VHSテープおよび、代用となるS-VHSテープも生産終了しているため入手困難である(従来のVHSテープは磁性体の保磁力が劣るため、D-VHS方式でのデジタル記録は困難)。

Blu-ray Discの普及による増産でBDメディアの低価格化が進んだ事に対し(BDメディアは100円ショップでも入手可能)、流通在庫しか存在しないD-VHS/S-VHSテープとは価格が逆転している。

他規格との連携

Blu-ray Discを発売した松下電器産業(現・パナソニック)は、2004年4月にD-VHS製品を出荷完了している。ソニー、シャープも同様にBlu-ray Discへと移行した。

パナソニックはこれに伴い、単体デジタルチューナーやデジタル3波チューナー内蔵テレビから、D-VHSの録画に不可欠なi.LINK端子を撤去したモデルを販売している。ただし、パナソニックのBDレコーダー「DIGA」の「DMR-BW」シリーズには、i.LINK端子が搭載されており、ハードディスクに録画したハイビジョン番組を、Blu-rayメディアの他、D-VHSテープにもムーブ可能。公式にパナソニック製BDレコーダーとの連携が保証されているのは、同社のD-VHSデッキである「NV-DHE10」、「NV-DH1」、「NV-DHE20」、「NV-DH2」の4機種である。
ソフト

ハイビジョン記録されたパッケージ規格 “D-Theater”も開発された。D-Theater規格のテープはD-Theater機能を搭載したD-VHSデッキでしか再生できない。D-TheaterにはDVDと同じくリージョンコードがあり、パッケージとデッキのリージョン番号が一致しないと再生できない。アメリカ市場ではソフトが商品化されているが、日本市場でのD-VHSソフトは、僅か1タイトルが発売されたに過ぎない[9]。D-VHS方式開発メーカーである日本ビクター自身がBlu-ray Discに移行している上に、D-VHSの機器の日本市場向けモデルの製造が打ち切られたことから、今後新たなるD-Theaterソフトの発売の可能性は絶無である。

D-VHS録画用ビデオカセットテープについては、パナソニック、ソニー、日立マクセル(現・マクセル)、TDK富士フイルムは生産を終了。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:33 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef