D級装甲艦
[Wikipedia|▼Menu]
これは15.8kgの砲弾を仰角45度で17,700 m、最大仰角80度で12,500mの高度まで到達させた。旋回と俯仰の動力は電動と人力で行われ、左右方向に360度旋回でき、俯仰は仰角80度、俯角10度であった。発射速度は毎分15 - 18発だった。これを連装砲形式に収め、船体中央部煙突の両脇の高所に3基ずつ、3番主砲塔の背後に1基の計7基装備した。

また、近接対空火器として「3.7cm(83口径)高角砲」を連装砲架で8基、2cm(65口径)高射機関砲を連装砲架で5基搭載した。その他の装備として、ベルリン作戦前に軽巡から降ろした53.3cm3連装水上魚雷発射管を装備している。位置は水上機揚収クレーンの下部、両舷に1基ずつ計2基である。
機関

本級の機関配置は基本的には第一次世界大戦時の巡洋戦艦と同様に機関室前方にボイラー室、後部にタービン室を収める全缶全機配置方式である。だが、その中身は前大戦時より大きく進歩している。

ドイツの船舶用機関技術は第一次世界大戦前までは連合国の後塵を拝していたが、第一次世界大戦後の苦しい開発状況の中から高温高圧缶と高性能タービン機関を急速に開発していた。作動蒸気の高温・高圧化は燃料消費率の減少と機関重量の軽減につながるが、反面として機関の信頼性低下につながる。しかし、ドイツは前者の利点を重視して開発を進めた。その甲斐あって新開発されたのが本級から採用されたワグナー式重油専焼高圧缶である。その蒸気条件は50気圧・450度もの蒸気を使用できる高性能ボイラーである。

搭載方法は「田」の字型に4基一組として、前部と中央部に一組ずつ計8基、閉鎖区画を隔てて後部に一組4基の順で計12基を配置した。また、ボイラー室の周りを囲むように発電機室と補助機関室が配置され、被弾時には主ボイラーを守る設計であった。そのボイラー室の後部にギヤード・タービン3基を納めたが、機関室は3列に分けることは出来ず、前後に大きく2分割されて設置されている。前側は左舷側タービンと右舷側タービンを中央隔壁で隔てて計2基を配置、隔壁を隔てて後側に中央軸用タービンを1基配置した。3本のタービン軸は船体最後部で3つのスクリューが横一列に並ぶようにされており、この形式は後継であるビスマルク級にも受け継がれている。なお、タービン形式はシャルンホルストがブラウン・ボベリー式、グナイゼナウはゲルマニア式で異なっていた。
防御

本級の防御要求性能は「33cm砲弾に対し、距離15,000m - 20,000mで耐えうるもの」を目標として、防御装甲は水線面より上の狭い範囲のみ350mmの装甲板を貼り、水線面下部は170mmにテーパーしていたが、主装甲の範囲は上下幅が短く、舷側防御の大部分を覆うのは僅か45mmでしかない装甲板で、巡洋艦はおろか大型駆逐艦の主砲に対しても充分な防御力とはいえなかった。また、対水雷防御はマッケンゼン級の時代には石炭庫が水密区画において浸水を防御する充填材の役目を果たしていたが、重油を使用する近代戦艦ではその手は使えず、間隔の開いた二層の水密区画の背後に45mm装甲を艦底面まで伸ばして妥協していた。

防御面においては主舷側装甲350mmは船体の前後の長大な範囲を覆い、ダンケルクの33cm砲に対して23,000mまで接近させなければ耐えるもので要求性能を満たしており、格上のフッドやレナウン級の搭載する38.1cm砲に対しても17,700mまで接近されなければ耐えられる優秀なものであった。しかし、前述の通り主装甲帯の上下幅は短く砲戦距離の短い前大戦時の戦闘ならば有効な防御性能を示したであろうが、砲戦距離が延伸した第二次大戦型の戦闘では敵の砲弾はドイツ海軍の想定する主装甲帯よりも高所に被弾する傾向にあった。この場合、弱体な45mm舷側装甲帯に砲弾が降り注ぐ事により大損害を実戦で負っている。ここから判るように、本級の防御は第一次世界大戦型の防御様式からさほど進化しておらず、水平防御は原案よりは若干強化はされているものの「大口径砲による大落下角砲弾、もしくは高空からの水平爆撃」には充分ではなく、水中弾や大型魚雷への防御は考えられていなかった。ちなみに、結果的に計画より重量が増大したがために喫水が低くなり主装甲部分が水面下に伸びる事になったが、水面上の主装甲部分はわずか1.2メートルになってしまった。
評価.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方
出典検索?: "シャルンホルスト級戦艦" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2014年3月)

本級の建造目的である「ダンケルク級(33cm砲)への対抗」という点は果たすことができず、その存在価値と性能は不十分だったという評価が下される。その理由は11インチ砲(28cm砲)を採用してしまったことで、対艦攻撃能力が3万トンもの排水量を持つ同世代の同クラス艦に対して有効打になりえなかったことである。第一次世界大戦では「ドイツの11インチ砲・12インチ砲は、英国の15インチ砲に匹敵する」と、皇帝ヴィルヘルム2世が自ら称していたが、実際には「15インチ砲に匹敵する威力」というのは砲弾を軽くし装薬を多くして初速を稼ぎ近距離(5,000 - 8,000m)で命中させるという条件付きのものであり、純粋な威力では11インチ砲は15インチ砲に比べ一発あたりの威力が劣っているのは言うまでもなかった。ヴィルヘルム2世の発言の背景には、「砲弾自体の威力が低くても、距離を詰めることで不足分を補う」という戦法が実戦で使用できたことや、砲戦距離が第二次世界大戦に比べ短い時代であったため、深刻な問題というわけではなかったことがあった。これらの条件は、本級の運用年代には適用することが困難なものだった。

実際、この種の艦砲は砲戦距離が伸びるに従って砲弾の失速が激しく、敵艦の垂直装甲を貫通できずに弾かれる傾向にある上に、砲弾自体の重量が軽く設定されているために落下速度を稼げず、水平打撃力は低くなる[† 1]。そのため、砲戦距離が20,000m台に伸びた第二次世界大戦時の砲戦では11インチ砲は主力艦級との砲戦には能力不足なのである[† 2]。結局、ダンケルクより5cmも小さい口径の主砲を採用せざるを得なかったところに本級の問題点があった。

なお、実戦においてはダンケルク級との交戦機会はなく、通商破壊艦としての用途が中心であった。建造時に想定した用途に使用される事が結果的に無かったというのは本級に限った話ではないが、戦闘艦艇の設計は汎用性を考慮に入れる必要がある。本級の場合はダンケルク級への対抗を第一に設計し、しかもそれが果たせず性能的に歪な艦になってしまったのが最大の問題点であった。

第一次世界大戦後に大型戦艦の建造が国際法上で長らく禁止されていたドイツにとって初めての大型艦ということで技術不足や経験不足という問題があったため完成した本級の評価は高くはなかったが、本級やドイッチュラント級建造で培われた技術はビスマルク級にも一部活かされる事になった。
同型艦

艦名起工進水就役結果
シャルンホルスト1935年6月15日1936年10月3日1939年1月7日1943年12月26日、戦没
グナイゼナウ1935年5月6日1936年12月8日1938年5月21日1945年3月23日、自沈

登場作品

小説
レッドサン ブラッククロス
巡洋戦艦として2隻とも登場。改装により、当初の予定通り28cm砲を38cm砲に換装している。

ゲーム
『naval creed warships』
巡洋艦プレミアム艦艇として「シャルンホルスト」が登場する。
World of Warships
戦艦として2隻が登場し、その原案を立体化したオーディンも実装されている。
各種艦船擬人化ゲーム
戦艦少女R』『アズールレーン』『蒼藍の誓い ブルーオース』『パズルガールズ』にシャルンホルストとグナイゼナウを擬人化したキャラクターが登場する。『ブラック・サージナイト』『ヴェルヴェット・コード』にはシャルンホルストのみ登場。
鋼鉄の咆哮』シリーズ
敵艦として「シャルンホルスト級」として登場。プレイヤー側も生産タイプでドイツを選択した場合、戦艦部品として船体と艦橋が使用できる。一部の作品ではシャルンホルスト級が再現された「完成艦」としても購入可能。
脚注
注釈^ @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}対巡洋艦戦闘を強く意識した前級では砲戦距離が1万m前後なので砲の性能自体は問題は少なかった[要出典]
^ ちなみに、ダンケルクの1931年型33cm(52口径)砲も性質ではドイツのそれと同じく高初速長砲身型で一緒なのであるが、こちらは砲弾が552kgと14インチ砲弾並みに重く、近距離では舷側に、遠距離では程よく甲板に落ちる弾道特性を持つので対艦打撃能力事態はそれほど深刻ではなく、2万m台での砲戦ならば新戦艦に対しても大被害を与えられる性能を持っている。またシャルンホルスト級と同じくダンケルク級に対抗する事を目指して既存戦艦を改装したコンテ・ディ・カブール級戦艦の場合は主砲の内径を削って口径を増し、初速はある程度犠牲にして砲弾重量を増加させている。[要出典]

出典^ Jane’s Information Group, Jane's Fighting Ships, Jane’s Information Group,1944
^ 福井静夫「ドイツ海軍艦艇の秘密とその興亡」『丸』15(5)、1962-05、潮書房光人社
^ 小池克己, 「ドイツ戦艦史-巡洋戦艦」『世界の艦船』1989年3月臨時増刊号405集, 潮書房光人社, p. 73 
^ エドウィン・グレイ著 都島惟男 訳『ヒトラーの戦艦』光人社NF文庫 、光人社、2002年
^ Groner 1982, pp. 91.


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:32 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef