Consumer_Generated_Media
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ソーシャル・ネットワーキング・サービス > クラウドソーシング > ユーザー生成コンテンツ仮想世界「Second Life」のプレイヤーによるコンテンツ

ユーザー生成コンテンツ(ユーザーせいせいコンテンツ、: user-generated content(UGC[注釈 1][2])または user-created content(UCC[注釈 2][3]))とは、消費者生産者となる生産消費者により制作・提供される作品(メディア、コンテンツ)の総称である。UGCによって作られるメディアのことを、消費者生成メディア(consumer generated media、CGM)と呼ぶ[4]。マスメディアのようにプロがコンテンツを作るメディアの対比として使われ、代表例として食べログなどのクチコミサイトなどが挙げられる。

UGC・UCC・CGMなどの用語は、2000年代中程のWeb 2.0の流行と共に使われるようになった。Web 2.0はWorld Wide Webのコンテンツの提供・受領の立場が流動的に変化する概念を表した用語として使われ、生産消費者によるコンテンツはブログウィキSNS動画共有サービスeコマースなどのウェブプラットフォームのコンテンツで用いられた[2]。『タイム』誌は2006年のパーソン・オブ・ザ・イヤーに、Web 2.0のコンテンツ制作者としての「あなた」を選出した[5]。消費者から消費者へ製品・サービスを提供する商業プラットフォームはC2C(英語版)(Consumer to Consumer)と呼ばれる[6]
歴史公的貢献による用語定義が収録された『オックスフォード英語辞典

インターネットが普及する以前における生産消費者によるコンテンツとして、大規模・大容量の辞典『オックスフォード英語辞典』がある。1857年、ロンドン言語学協会のリチャード・チェネヴィックス・トレンチ(英語版)はオックスフォード英語辞典の未登録の用語を補完するために世界中の英語圏から公的貢献を求め[7]、読者による貢献を反映した辞典の編集を実施した。辞典の編集は何十年も続き、非常に多くの読者からの貢献が辞典に反映された。

1990年代初頭、インターネットが構築された時代の生産消費者の情報蓄積の基礎プラットフォームはニュースグループであった。ニュースグループ利用者は掲示板へ自身の知っている情報を投稿し、利用者が投稿したテキストはニュースグループのアーカイブとして蓄積された。ニュースグループは分野毎にサブカテゴライズされており、分野毎の蓄積情報はナレッジコミュニティを構築した。1990年代中ほど以降は、インターネットのプラットフォームにWorld Wide Webが登場し、ナレッジコミュニティのプラットフォームはニュースグループからウェブサイトへ移った。ウェブサイトはHTMLで記述されたウェブページを通して情報を配信し、インターネットサービスプロバイダが個人にウェブサイト空間を貸し出すことで、個人ホームページや個人BBSが登場した。World Wide Webの登場によりニュースグループの利用者は減っていったが、幾つかのニュースグループで蓄積された投稿テキストはHTMLに変換されてウェブサイトとして公開された。例えば、1990年代に始まったニュースグループ「rec.arts.movies」は映画情報サイト「IMDb」の基礎となっている[8]

2000年前後、インターネット空間の情報交流をエンドユーザー同士で直接的に行うSNSウィキ・画像共有サイト(英語版)・動画共有サイトファイル共有ソフトウェアなどのネットワークプラットフォームが活用されはじめた。ウィキや画像・動画共有サイトはウェブサイト閲覧者がテキストや画像・動画を投稿することでウェブサイトのコンテンツを拡充させる生産消費者によるウェブサイトである[9][10]。ファイル共有ソフトウェアはP2Pでエンドユーザーからエンドユーザーへデータを送受信するアプリケーションである[11]。また、個人のウェブサイトの活用方法にも変化が現れ、個人のウェブサイトで特定分野のウェブ情報を記録(ログ)するウェブログ(ブログ)が登場した[12]。初期のブログサイトはウェブサイトURLをリストでまとめたURL一覧であった[13]。ブログサイトの掲載内容はよりウェブサイト閲覧者に便利であるように、ウェブサイトURLに加えてパーマネントリンク・サイト運営者コメント・サイト訪問者コメント・HTMLマークアップ・サイトURL掲載日などをブログの一記事に記載するよう改良された。特定分野の情報が収集されたウェブサイトはインターネット利用者にとって便利であったため、ブログサイトは多くの個人サイトで利用された。

2005年、ティム・オライリーはWeb 2.0カンファレンス(英語版)で「Web 2.0」の在り方を提唱し、Web 2.0では生産者と消費者が流動的に立場を入れ替えてエンドユーザーからエンドユーザーへウェブコンテンツが提供される特徴があると述べた[14]。この発表以前にも生産消費者コンテンツのウェブサイトは多数存在していたが、Web 2.0というブランディングでまとめられることでそれらのウェブサイトは広く認知された。2006年、『タイム』誌はこの年のパーソン・オブ・ザ・イヤーに、Web 2.0のエンドユーザによるエンドユーザのためにコンテンツを制作・提供するコンテンツ制作者としての「あなた」(You)を選出した[5]。従来の生産者から消費者へ製品・サービスを提供する商業プラットフォームがB2C(Business to Consumer)と呼ばれるのに対して、消費者から消費者へ製品・サービスを提供する商業プラットフォームはC2C(Consumer to Consumer)と呼ばれる[6]

生産消費者によるコンテンツの登場により、アマチュアによるメディアをサポートする企業の役割はコンテンツ制作からコンテンツ提供へとシフトしていった。例えば、動画メディアでは2000年代初頭はAdobe Flashなどのコンテンツ制作をサポートするツールの提供が隆盛していたが、2010年代にはYouTubeなどのコンテンツ提供をサポートするプラットフォームの提供が隆盛している。
提供

生産消費者によるコンテンツは主にインターネットを通して提供される。提供プラットフォームには、ウェブサイト運営者が主題を挙げてコンテンツを提供するブログポッドキャスト、ウェブサイト利用者が知識・情報を投稿するBBSQ&Aサイトレビューサイト、ウェブサイト利用者がサイトコンテンツを自由に編集するウィキ、ウェブサイト利用者がコンテンツを投稿する画像(英語版)・音楽・動画共有サイトなどがある[15]。また、コンテンツ自体はインターネットを通して配布されるが、そのコンテンツはアプリケーション・ゲーム内で利用されるアドオンMod環境などがある。

ブログ・ポッドキャストはテキスト・音声を配信する個人運営のウェブサイトに適した提供プラットフォームで、コンテンツ提供者は特定分野の主題に対して記事を執筆・録音してウェブサイトに投稿・掲載する[16][17]。ブログはテキストおよび画像・音楽・動画を記事にして読者へ情報を提供する。ブログでコンテンツ提供する生産消費者はブロガーと呼ばれる。ポッドキャストは音声コンテンツで読者へ情報を提供する。コンテンツの更新はRSSで通知することが多く、視聴者はRSSリーダーでコンテンツの更新を知ることができる[18]。ブログ・ポッドキャストの提供形態は定期的に発行される新聞・ラジオの提供形態に似ており、企業運営の報道サイト・情報配信サイトや市民ジャーナリズムサイトでも利用されている。

BBSは特定の主題の話題を利用者同士で会話するコミュニティである。ウェブプラットフォームの流行以前はニュースグループ(NNTP)でテキストで利用者同士が交流していたが、ウェブプラットフォーム(HTTPHTML)が流行したことでマークアップテキストや画像も扱えるBBSが使われるようなった。画像ファイルがアップロードできるBBSは画像掲示板とも呼ばれる。ニュースグループと同じく特定分野の話題を主題に利用者同士で意見を出し合って交流する。BBSに投稿されたテキスト・画像のアーカイブが一つのコンテンツとしてキュレーションサービスなどにより取りまとめられて再提供されることもある[19]。同様に、Q&Aサイト・レビューサイトは主題の話題へサイト利用者が主題に対してコメントを投稿するコミュニティである。利用者同士の会話ではなく感想・評価の投稿が主観にあるが、ウェブサイト利用者が知識・情報を蓄積するナレッジコミュニティとして同じ特性を持っている。

ウィキはユーザー共同作成の集合知を構築するナレッジコミュニティとして効率的なプラットフォームである[6]。ウィキ利用者はウェブサイトに掲載されたコンテンツ(テキスト・画像・音楽・動画)を編集し、ウェブサイトをより優れたコンテンツを提供するものに改善していく。従来ウェブサイトではサイト運営者が掲載したコンテンツをサイト閲覧者が一方的に受領するだけであったが、ウィキではサイト利用者が編集したコンテンツを提供・受領することができる。

画像共有サイト・音楽共有サイト・動画共有サイトなどのホスティングサイトは利用者の制作したメディアコンテンツのアップロードと掲載・配信をする。動画コンテンツはライブストリーミングサービスで配信されるものもある[20]。それらのウェブサイト・サービスでは利用者は自身の制作するメディアコンテンツを提供・配信する。動画共有・配信サービスはテキスト・画像・音楽を包括的に扱うことができるため、静止画をスライドショーのように加工して動画コンテンツにしたり[21]、音楽に静止画をつけて動画コンテンツにして[22]、テキスト・画像・音楽を動画コンテンツとして配信することもある。動画共有・配信サービスはその高い汎用性から様々な種類の生産消費者によるコンテンツの提供に利用されている。

ウェブサイト・サービスへアップロードしたコンテンツは、そのウェブサービス運営者の定める利用許諾契約に従ってコンテンツ生産者・コンテンツ消費者はコンテンツを提供・受領することになる[23]。ただし、著作権は生産消費者の元にあり、ウェブサービス運営者が無断で生産消費者の制作したコンテンツを利用することは認められていない。ウェブサービス運営者を介在させず生産消費者がコンテンツ提供する場合は生産消費者がコンテンツに適当なライセンスを課すことになるが、そのための汎用ライセンスとしてオープンライセンスクリエイティブ・コモンズ・ライセンスなどがある[24][25]
種類ゲーム「Minecraft」のMod構造物0 A.D.(英語版)の実況プレイ動画(英語)ウィキブックスに投稿された料理レシピフリーソフトウェアのフィルク音楽(英語版) Infinite Hands

生産消費者によるコンテンツには多様な種類のコンテンツが存在する。
ニュース
ソーシャル・ニュースサイトは読者投稿型ニュースサイトである[26]。利用者は他のニュースサイトの記事URLと、必要であれば自身のコメントを付与して、ニュースをウェブサイトに投稿する。ニュースサイトの読者はニュース記事にコメントを投稿したり、特に興味深い記事へ投票したりする。ニュースサイトは、投票ランキングの高いニュースをウェブサイトのトップページなどに表示させることで、読者にとって興味深いニュースを効率的に提供する[27]フィードリーダー・ウェブサイトも同様に他ニュースサイトの記事を閲覧する特性を持っているが、ソーシャル・ニュースサイトは読者が意図的に他ニュースサイトを登録しなくとも他利用者の投稿・投票によって適当なニュース記事を閲覧できる特性を付加的に持っている。読者投稿型ニュースサイトの一例にはredditdiggなどがある[28]
レビュー
レビューサイトは消費者が製品・サービスの評価を投稿するウェブサイトである。消費者は購入・利用した製品・サービスの感想を投稿し、他の利用を検討している消費者への判断材料を与える[29]。レビューサイトの運営者と製品・サービスの生産者が独立することで、消費者は生産者バイアスを含まない評価を得ることができる。製品・サービスのレビューは、製品販売業者や広告代理店の介入により評価が片寄ることがあり、そのような印象操作はステルスマーケティングと呼ばれて批判の対象となることがある[30]。特に旅行業界では、旅行者の感想をウェブサイトに活発に利用している。ヨーロッパの旅行会社Busaboutは、利用者がリアルタイムに投稿する画像・写真・地図をウェブサイトに掲載するソーシャルメディアとして採用し、ウェブサイトの滞在時間を39%伸ばし、イギリスへの旅行者を9%増やした[31]。ローカルビジネスのレビューサイトとして、Yelpは地域に根付いた製品・サービスの評価をまとめている。Yelpのウェブサイトによると、月平均2700万人のユニークユーザーがおり、2017年第4四半期時点で1億4800万を超えるレビューを受けている。
ゲーム
ビデオゲームではファン・メイド(英語版)によるMod・非公式パッチ(英語版)・非公式翻訳(英語版)・サーバー・エミュレータ(英語版)などのコンテンツが作られている[32]。いくつかのゲームでは消費者による自発的な難易度調整のためのレベル・エディタ(英語版)を公式に提供してる場合もある。MMORPGではプレイヤーが制作・提供できるコンテンツをゲームシステムに組み込んでおり[33]メタバースな仮想世界を構成するゲームではプレイヤーが建物や家具などを制作したり、ダンジョンゲームでは迷路やアイテム・モンスターをプレイヤーがデザインしたり、クエストゲームでは他プレイヤー向けのクエストを開発したりする。2012年に始まったIngressは、サービスイン直後はプレイヤーが遊ぶためのポータルがゲームシステム上にほぼ登録されておらず、プレイヤーがポータルを申請・登録することでゲーム性が確立されるプレイヤー頼りのゲームシステムであった[34]
報道
市民ジャーナリズムは報道機関に属さない記者による記事で構成される報道である[35]。市民ジャーナリズムでは報道機関に属さない記者により記事が執筆されるが、執筆された記事は報道機関の編集者により査読されて、一般の読者・視聴者に報道される。市民ジャーナリズムは、プロの記者が取材・執筆する記事ではないため記事の量・品質が十分ではない場合があるが[36]、広く浅く素早く報道できることがメリットである[37]。用語の定義として、市民ジャーナリズムとブログの主な違いは編集者による査読の有無であるが、ウェブサイト・動画共有サイトでの編集者査読のない報道配信も登場している[38]。2005年、BBCは少人数の試験的な市民ジャーナリズムチームを発足し、同年に起きたロンドン同時爆破事件・バンスフィールド油槽所爆発火災(英語版)の報道を契機にチームを常設・拡張した[39]


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