CT
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撮影時間が長くなるが、アーティファクトが少なくなる利点を活かし、微妙な濃度差を検出する必要のあるのルーチン撮影では、引き続き厚いスライスでのノンヘリカルスキャンが一般的に行われている。
ヘリカルスキャン
連続回転する線源の中を、寝台を一定速度で動かし続けながら行う撮影構造。患者から見ると線源がらせん状に動くことになる。スパイラル(螺旋)スキャンとも言われる。ノンヘリカルスキャン(コンベンショナルスキャン)に比べて走査時間を短縮でき、一度の息止めで体幹部全体を撮像することも可能である。現在[いつ?]市販されているCTスキャナはすべてこの撮影方法に対応している。ただし骨周囲などX線の散乱が多い状況では画質的に不利になることがある。頚部から下の撮影では、特殊な検査以外ではほとんどこちらが用いられる。
検出器
単列検出器CT(旧来のCT)
初期の頃のCTは検出器が1列しかなく、1回の回転で1枚の画像しか得られず、撮影時間が長いことが難点であった。
多列検出器CT(MDCT
[注釈 14]
X線を扇状にやや広い角度に照射し、対側の検出器自体を細分割して多列化したCTであり、1回の線源の回転でより多くの範囲の撮影が行える。1998年に4列以上の検出器を備えたCTが開発され、2002年には16列以上の検出器を備えたCTが開発され、広く普及していった。2012年[7]には最大320列の検出器を備えたMDCTが販売されており、1回転で心臓や脳のほぼ全体を撮影することが可能となっている。
撮影
単純CT

造影剤を使わずに撮影を行うものを単純CTと呼ぶ。一般的なスクリーニングとして用いられる場合が多い。検査の目的によっては造影が逆効果であるため、積極的に単純CTが選択されることもある。

また、病院で原因不明死で死亡したものの死因を究明するための死亡時画像診断(Ai[注釈 15]、または PMI[注釈 16])にも用いられる。Aiでは、被検体に対する放射線被曝による放射線障害を考慮する必要がないため、高線量を用いて可能な限り高い画像分解能、コントラスト分解能で撮影を行う。被検体には血行循環や呼吸などの生理的機能が消失しているため、造影剤を使用することは出来ない。
造影CT

造影剤を投与後に撮影を行うものを造影CT(CECT[注釈 17])と呼ぶ。CTにおいては、X線吸収率の高いヨード造影剤を血管内(通常は四肢の静脈内)に注射して撮影を行うものが一般的である。通常は造影CTといえばこれを指し、他の造影剤を使用する場合、別の特殊な名前で呼ぶことが多い(後述)。

造影剤は注入された後、血流に沿って全身の血管に分布し、さらに毛細血管からの拡散によりゆっくりと血管外の細胞外液にも移行し、各種臓器の実質を染める。血管内や、血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され、画像のコントラストが明瞭になり、より詳細な観察が可能となる。

撮影の目的によって、造影後いずれのタイミングで撮影するべきかが異なる。大まかにいえば、血管の評価が主な目的であれば早期相(注入開始後15秒 - 30秒)での撮影が、臓器の評価が目的であれば門脈相ないし遅延相(注入開始後80秒以降)での撮影が適する。造影剤の注入速度や造影剤のヨード濃度も検査の目的によって様々に選択される。

CT用ヨード造影剤として、イオヘキソール (オムニパーク)、イオパミドール (イオパミロン)、イオメプロール (イオメロン)、イオペルソール (オプチレイ)などが用いられる(かっこ内は日本国内での商品名)。
特殊な造影CT撮影法

特殊な造影CT撮影法を以下に示す。
ダイナミックCT
造影剤を急速静注(毎秒3
mL以上)し、各時間ごと(多くは動脈相、平衡相、静脈相)のタイミングで同じ部位を反復撮影する方法。病変の検出がしやすくなり、質的診断にも寄与するが、被曝も増える。
パーフュージョンCT[注釈 18]
ダイナミックCTと同じように造影剤の急速静注施行の後に、多数の時相を撮影し、造影剤濃度の時間変化をカラー画像化する方法。
CT血管撮影(CTA[注釈 19]
造影剤を急速静注し、動脈内の造影剤濃度が最も高くなるようなタイミング(動脈相)でCTを撮影することで、冠動脈等の血管走行を明瞭に描出する撮影方法。動脈瘤等の動脈疾患の診断に用いられる。特に3次元レンダリングとの親和性が高い検査方法である。
IVR-CT
カテーテル検査の最中に行うCTのこと。カテーテル位置の確認に使用するほか、特定の動脈や静脈に直接造影剤を注入しながらCT撮影を行えば、狙った血管や臓器のみを強く造影することができ、正診率が高まることが期待される。施設によってはIVR-CT専用のCT装置がカテーテル検査室内に併設されていることもある。
点滴静注胆嚢造影CT(DIC CT)
胆汁中に排泄される特殊な造影剤を投与後に上腹部を撮影し、胆道系を描出する造影検査。
キセノンCT
主に血流評価において行われており、非放射性キセノンを吸入しながら撮影する。
画像撮影画像(人間の頭部)
画像構成

CTで得られる基本的な画像は、体の断面を表すモノクロ画像である。画像上の白い部分(CT値が高い部分)がX線の吸収度の高い部分であり、黒い部分(CT値が低い部分)がX線吸収の低い部分に対応する。前者は「高吸収域」「高濃度域」「透過性低下域」、後者は「低吸収域」「低濃度」「透過性亢進域」とも表現する。

吸収率の単位としては、「空気」をマイナス1000HU、「」を0HUと定義したHU[注釈 20]という単位が利用され、これによる透過率の表現を特に「CT値[注釈 21]」と呼び、他の物質はこれらとのX線吸収度の相対値で示される。体内や体外の金属義歯など)は非常に高いCT値(数千HU)を呈する。骨も金属元素(カルシウム)を多く含んでいることから、数百HU程度の高吸収値を示す。それ以外の筋肉、脳、肝臓など体内のほとんどの臓器は、造影剤を使用しない場合、20HUから70HU程度の比較的狭い吸収値領域に密集して分布しており、この濃度域は一括して「軟部組織濃度」と総称される。特徴的なのは脂肪であり、体内の主要な構成成分の中で肺野を除けば唯一負のCT値(マイナス20HU前後)を示すことから、CTで容易に検出可能である。

このように、CTの画素値のダイナミックレンジは広いが、同時に臓器の観察ではわずか数HU程度の濃度差も問題となる。人間の目の濃度分解能には限りがあり、仮に-1000HUから5000HUまでを均等に白黒画像に割り付けてしまうと、主要な臓器のほとんどはコントラスト不良でほとんど観察できなくなってしまう。人間が観察する場合は、画像の真っ黒から真っ白までの範囲(一般的なモニタであれば輝度0から255の範囲)の中に、自分が観察したい臓器に合わせたCT値を割り振って観察しており、この割り振り方を「条件」と呼んでいる。

例えば肺の内部構造を観察したい場合、肺胞中の空気と気管支や血管が区別できるような条件で画像を観察する必要があるが、このような条件で観察した場合、脂肪や心臓、食道などの臓器は画像上は真っ白になってしまう。逆に肝臓の細かい濃度変化を観察する場合、肺は真っ黒となってしまう。

このような事情のため、画像をフィルムに焼き付ける際は、場合によっては同じ断面を複数の異なる条件で焼き付けなければ、十分な診断ができない。コンピュータのモニタ上で観察することが普及してからは、診断医はリアルタイムに複数の条件を切り替えながらCT画像を観察することができるようになっている。
画像構築撮影画像の連続表示
(13ヵ月の患者の右腎に生じた腎芽腫)

CTで得られるのは基本的に平面上の画像(スライス)の集合である。以前はこれらの画像は、単にフィルムに焼き付け、シャウカステン等によって蛍光灯の光にかざして観察していた。

ヘリカルスキャンや多列検出器CTといった撮像技術の発達により、0.5mm(500μm)厚といった非常に薄いスライスでの撮像が、日常的に多くの施設で可能となると、膨大な枚数の断面画像が出力されるようになった。現在[いつ?]では多くの施設で、フィルムではなくモニター上で、画像を動画のようにページングしながら観察できるようになっている。

また、スライス厚が充分に薄くなったため、「輪切り」のCT画像を3次元画像として再構築することも可能になった。1度の撮影で得られたすべての画素を、CT値の3次元行列として捉えるのである。この3次元上のピクセルのことを、特に3次元であることを強調してボクセルと呼ぶ。

任意の方向に十分な解像度を持った3次元のボクセルデータが取得できるようになり、それを記憶・処理できるメモリや処理装置も安価となったため、以下に挙げるような、様々なCTの観察方法が利用されている。
任意断面再構成

対象物の任意の方向の断面を再構成して表示することを任意断面再構成(MPR[4][注釈 22])と呼ぶ。細かい血管の走行や腫瘍の進展などについては1断面のみからでは把握しづらいため、MPRは診断に大きく寄与した。横断面に対して直行する矢状面・冠状面以外の平面を再構成する場合はオブリークMPRなどといい、頭部CTでは眼窩―耳孔線に平行なオブリークMPRを利用する。変法として円柱面やベジェ曲面上にボクセルデータを投影する方法もあり、椎体に沿った曲面を再構成することで変形した脊椎の病変の診断や、顎骨に沿った曲面を再構成することで歯科領域での診断などで応用されている。
一方向投影像

任意の方向にボクセル値を積分したレイサム像[注釈 23]によって、その方向からX線を曝射した場合のレントゲン写真に似た画像を作ることが出来る。また積分ではなく、任意の一直線上で最もCT値の高い値を平面に投影したMIP像などがある。
3次元レンダリングコンピュータによってボリュームレンダリングされた人体のCT画像。左上の3次元画像と、3軸からのスライス画像を表示できる。CT画像のプレゼンの種類
- 平均強度投影
- 最大強度投影
- スライス平面画像
- ボリュームレンダリング

:十分に解像度の高いボクセルデータは、コンピュータで適切な陰影付け・遠近感を施すことで、人間が直感的に把握できる3次元グラフィックスとして表示できる。主な3次元レンダリング方法は、一定の閾値以上の塊の表面を見る「サーフェスレンダリング」と、不透明度を変えて中身も見える「ボリュームレンダリング」の2種類がある[4]。ある程度再構成時に人手を介するため、厳密な測定目的には向かないが、断面では認識しづらい複雑な脈管構造や、立体的な構造把握の難しい部位(頭蓋骨など)での全体像の把握には有用である。


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