CPU
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この中で、プログラム内蔵方式のコンピュータの設計について概説されている[注釈 2]。この報告書はEDSACなどに影響を与えた。EDVACは1949年8月に一応の完成を見、アバディーンに移された[注釈 3]。EDVACは様々な命令の集まりを実行するよう設計されていた。命令を組み合わせることで実用的なプログラムを構成し、EDVACで動作させることができた。EDVACではプログラムは高速なメモリに格納されており、物理的に配線を変更することで指定されるものではない点が重要である。ノイマン型の設計では、EDVACで動作させるプログラムを変更するにはメモリを書き換えればよかった(ノイマン型はプログラム内蔵だけでなく、プログラムがデータとして書き換え可能である点まで含む点に注意)。

結果としてノイマン型で先に完成したのは、EDSAC (1949年) やManchester Mark Iの試作機 Baby (1948年) であった。EDVACは先に設計が始まっているが、設計者間のごたごたがあって完成が遅れた。また、アイデアレベルではZuse Z3を1941年に開発しているコンラッド・ツーゼもそれ以前にプログラム内蔵方式(書き換えでない点に注意)を考案していた[注釈 4]。データとプログラムを同じ記憶装置に格納するかどうかという点が異なる方式として、ハーバード・アーキテクチャがある。これはEDVAC以前に完成したHarvard Mark Iに由来する。同機ではさん孔テープにプログラムを格納した。ノイマン型とハーバード型の大きな違いは、後者が命令とデータの格納場所と扱いを完全に分離していることであり、前者はどちらも同じ記憶領域に格納する。汎用CPUは基本的にノイマン型であるが、ハーバード・アーキテクチャも部分的に採用されている(キャッシュメモリなど)。

デジタル機器としてのCPUは、状態を変更したり表現したりするために、何らかのスイッチを必要とする。電気機械式から電子式への移行期には、リレー真空管がスイッチとして使われた。これらは、従来の完全な機械式よりも高速にスイッチを切り替えられたが、チャタリングをはじめ、コイル(インダクタ)によって発生する高電圧などの問題があった。一方、真空管はチャタリングは起こさないが、機能するには熱が必要であり、劣化により動作中にカソードの電子放射能力が減退(エミッション減退)して動作不能になってしまう。真空管が劣化・故障したら、故障した部位を特定して交換しなければならない。したがって、初期の電子計算機は高速化は実現したものの、電気機械式計算機よりも信頼性が低かった。EDVACのような真空管計算機は故障と故障の間の平均時間(MTBF = Mean Time Between Failure)は約 8 時間であったが、Harvard Mark Iのようなリレー式計算機はほとんど故障しなかった。しかし、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}信頼性よりも性能が重視され[注釈 5][要検証ノート]、真空管式計算機が主流となっていった。当時の同期式CPUのクロック周波数は現在のCPUに比較すると非常に遅く、100 kHz?4 MHz程度であった。これは、当時の論理素子(真空管)のスイッチング速度によって限界が定められていた。
半導体化

CPUの設計と複雑さの進歩は、小型で信頼性の高い電子部品を使うことでもたらされた。新たに発明され急激に性能の向上したトランジスタの利用である。これによって、1950年代から1960年代には、かさばって信頼性の低い真空管やリレーは使われなくなり、トランジスタ製CPUが主流となった。この改善によってさらに複雑で信頼性のあるCPUを一枚から数枚のプリント基板で構成できるようになった。

1964年IBMが発表したSystem/360アーキテクチャは、いろいろな性能と大きさのコンピュータとして実装され、それらのシリーズではプログラムを変更することなく動作させることができた。当時、たとえ同じメーカーであっても、サイズの違うコンピュータは互換性がないのが普通だった。この改善を成し遂げるため、IBMはマイクロプログラム方式を採用した。これは現在のCPUでも広く使われている手法である。System/360は大変な成功を収め、その後数十年間メインフレーム市場を支配し続け、現在のz/Architectureに至っている。

同じ1964年、DECも、「PDP-8」という後世に影響を与えたミニコンピュータを、科学分野や研究分野に向けてリリースした。DECは、後にさらに広く使われることとなる「PDP-11シリーズ」を発表したが、このシリーズは、後に集積回路(IC)が使えるようになると、それを使ったバージョンも製造されている。トランジスタを使ったCPUでは、新たな設計上の工夫をする余裕が生じ、SIMDベクトル計算機と呼ばれるものが出現した。そのような初期の実験的設計は、後にクレイ社の製造したスーパーコンピュータのベースとなっている。

トランジスタを使ったコンピュータは、それ以前のものと比較していくつかの明確な利点があった。信頼性向上と消費電力低下はもちろん、トランジスタによるスイッチは切り替え時間が劇的に短縮されたため、CPUが高速化された。トランジスタによるコンピュータでは動作周波数は数十MHzまで高速化された。
マイクロプロセッサ詳細は「マイクロプロセッサ」および「CPU年表」を参照

CPUなどに使われるプロセッサは、1970年代に1チップの大規模集積回路LSI)に集積されるようになった(マイクロプロセッサ)。初期のマイクロプロセッサは4ビットや8ビットで、当時のミニコンピュータメインフレームのCPUに比べると非常に機能の限られたものであったが、1970年代末から1980年代の微細化の進展により、プロセス保護など当時のメインフレームに相当するような機能を統合した32ビットプロセッサが現れた。組み込み用途には周辺機能やメモリ等を集積した、いわゆるワンチップマイコンも普及した。初期のマイクロプロセッサはNMOSロジック回路で構成されていたが、1980年代にはCMOS化が進み、消費電力が激減した(CMOSは消費電力は抑えられるが、当初は遅かったことから、電卓や時計など消費電力が重要で速度が重要でない分野でしか使われなかった)。CMOSは微細化が進めば進むほど静電容量が減り高速化でき、高速化を狙わない場合は低消費電力化できるという優れた特長があり(デナード則)、動作周波数は2000年代にはGHzオーダーまで上がった。微細化はより多くのゲートを載せることができるということでもあり、命令パイプラインアウト・オブ・オーダー実行などで命令レベルの並列性を引き出す、複雑で高性能なプロセッサが作られるようにもなった。微細化による集積度の向上の傾向はムーアの法則により定性的にモデル化されている。ただし複雑化に比例して性能が線形に上がるわけではない(ポラックの法則)。しかし、2006年頃にはデナード則が崩れて、動作周波数の向上とマイクロアーキテクチャの複雑化で性能向上を図る方向性は行き詰まった。以降は(非対称型を含む)マルチコア化と、相対的に低いクロックでも高い性能を引き出しやすいSIMDの性能向上に力点が置かれている。極低温で4.8 GHzで動作するマイクロプロセッサのマスクパターン

マイクロプロセッサの複雑さ、機能、構造、一般的な形状はこの50年間で劇的に変化したが、CPUの高性能化の基本的なコンセプトは、マイクロプロセッサ以前の1960年代に初めて現れた、というものが多い。たとえば、アウト・オブ・オーダー実行の方式であるscoreboardingTomasuloのアルゴリズムも、最初に考案されたのは1960年代である。
設計と実装詳細は「CPU設計」を参照
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