これらはCPUのデータ幅やアドレス幅による単純な分類方法であり、実際のCPUではデータ信号線やアドレス指定方法に工夫することで、外部的に少ないデータバス幅や内部的に少ないアドレス幅でも効率的にメモリ・アクセスできるようにしているものがあるため、こういった分類は多少複雑になっている[注釈 10]。
CPUを表現する場合のビット数の意味は以下の通りである。
アドレス幅(内部のアドレスレジスタ幅、外部アドレスバス幅)
データバス幅(内部データ幅、外部データバス幅)
内部演算幅(=演算装置の幅と整数レジスタ幅)
命令語長
1990年代以降は4ビットから64ビットまで多様なビット幅のCPUが製品化されている。高ビット幅のCPUは機能や性能が高い反面、高集積化や回路の複雑度から高価格で消費電力も大きく、低ビット幅のCPUは機能や性能が制限される代わりに安価で低消費電力であるなど特徴があり、状況に応じて使い分けられている。
1990年代後半から21世紀に入って、パーソナルコンピュータ用CPUで一般化した、いくぶん新たなCPU高速化技術については、複数CPUの搭載(マルチコア)やVLIW、スーパースケーラなどがある。これらはメインフレームなどの大型計算機ではずっと前から一般的だったが、PC用の技術として降りてくるまでにはプロセス微細化の発展や製造コスト低下を待たなければならなかった。 CPUのビット数による用途の例を示す。 上記の分類に当てはまらないものとして、過去には、互いに結合し自由にビット長を増やす事ができる方式のCPUがあり、これはビットスライスプロセッサと呼ばれた。
用途例
4ビット
1980年代を中心に、一般的な家電製品、キーボードやマウス、電卓や時計など、ローエンドの組み込みシステムに広く用いられた。家電用の赤外線リモコンなど機能的に単純なものについては4ビットのマイクロプロセッサでも十分であるが、既に新規採用の事例はほとんどなくなっている。
8ビット、16ビット
機器組み込み向けに8ビットや16ビットのプロセッサ・コアと周辺回路を組み合わせたマイクロコントローラ (MCU) と呼ばれるものが広く使用されている。いずれも要求仕様と製造原価との兼ね合いで都合の良いサイズのプロセッサが選定され製造される。だが、この用途でも32ビットマイクロプロセッサの価格低下、旧来用いてきた半導体の製造終了、要求仕様の高度化や汎用開発ツールの援用要求により、あえて32ビット以上のCPUを選択するケースも少なくない。
32ビット
携帯電話やデジタルカメラをはじめ、自動車のエンジン制御や産業用ロボット、工作機械、白物家電など組み込みシステムや大小さまざまなシステムの制御に幅広く用いられており、狭義のCPUと呼ばれるものの主要な使用例である。2000年代以降の半導体製造技術の進歩に伴い、ローエンドの32ビットプロセッサと16/8ビットプロセッサの価格差は少なくなっており、16ビット命令(ARMのThumb命令など)を持つ32ビットプロセッサがMCU用途にも広く使われるようになっている。2010年代の高性能・多機能化した情報機器には、メインのCPUの他にしばしばペリフェラル(カメラなどのセンサ類や、ストレージ、ディスプレイ、ネットワークなどの周辺デバイス)制御用の32ビットMCUが組み込まれている。また、IoTデバイスの構成単位としてセンサやアクチュエータに組み込まれるMCUへの性能要求も高度化している。こうしたことから世の中に出回っている32ビットプロセッサの数は膨大である。
64ビット
パーソナルコンピュータ (PC)、ワークステーション、サーバ、スーパーコンピュータをはじめ、タブレットやスマートフォンなどの「スマートデバイス」と総称される情報機器、ルータなどのネットワーク機器、ゲーム機など、大量のデータを処理する用途で使われている。業務用のサーバでは大きな主記憶容量が求められたため、1990年代からCPUとオペレーティングシステム (OS) の64ビット化が進められていたが、一般消費者向けのPCにも浸透したのは2000年代中盤以降である[注釈 11]。2010年代以降、市販されているPCは64ビットCPUを搭載するものがほとんどであるが、オフィススイートなどの用途ではアプリケーションソフトウェアを64ビット化してもパフォーマンス向上の恩恵が得られる場面は限られており[7]、また互換性の問題(32ビット版のアドオンが利用できなくなるなど)の回避のために、32ビット版アプリケーションが推奨されているケースもある[8]。一部のプラットフォームでは、64ビットOS上の32ビットエミュレーションレイヤーを介して32ビットアプリケーションを実行することもできるため、すべてのアプリケーションを64ビット化しなければならないというわけではない[注釈 12]。また、64ビット版のデバイスドライバが提供されていない周辺機器があるなどの問題から、64ビットCPUを搭載していながらも32ビット版のOSを利用しなければならないケースもある[注釈 13]。ただし、画像処理や動画編集など大量のデータを処理する用途では、巨大なメモリを割り当てることができる64ビット化のメリットは大きく、これらのアプリケーションソフトウェアは比較的早い時期から64ビット化が進んだ。2019年現在では、32ビット版デバイスドライバのサポートや更新が打ち切られているケースもある[9]。スマートフォンも普及の初期は32ビットCPUが用いられたが、2013年9月に発表されたiPhone 5sを皮切りに64ビットCPUへの対応と移行が進んでおり、iOSのように32ビット版アプリケーションの動作サポートを打ち切ったり、Androidのように64ビット版アプリケーションの提供を義務付けたりするプラットフォームもある。