このCPUの冷却装置(シーピーユーのれいきゃくそうち)の記事では、主に「CPUクーラー」と呼ばれているパソコンのCPUの冷却およびその装置について解説し、それと深く関係するのでGPUやPC筐体の冷却などについても併せて解説する。
概要パソコン内部のマザーボード
左側にある銀色の円筒形の部分がCPUの冷却装置(CPUクーラー)である。ゲーミングノートPCの冷却装置。ヒートシンクが太く、ファンや排気口が2つになっており、普通のノートPCの2倍になっている。
CPUに限らず、集積回路を使用する電子機器一般に、強く発熱しているにもかかわらず冷却を怠った場合、以下のような問題が生じる。
オーバーヒートによる誤動作。なお、特にこれによる制御不能状態(暴走)のことを指して俗に[注釈 1]「熱暴走」と呼ぶことがある
発熱時の異常な熱膨張、使用後の収縮の繰り返しによる寿命の短縮
(最悪の場合)半導体としての熱暴走や故障・破壊
十分な冷却を行わない場合、以上のような、一時的な機能不全や、恒久的な破壊が起きうる。また、著しい寿命の短縮が起き、とりあえずは正常に機能しているように見えても、設計上の寿命よりはるかに早く故障する可能性が高まる。
マイクロプロセッサのCPUの場合、BtoB(企業間取引)などで取引され「バルク品」と呼ばれる商品にはCPUクーラーは付属しない。一方、一般消費者向けの「リテールパッケージ」には、必要十分な程度の性能のCPUクーラーが同梱となっていることがほとんどであり、通称「リテールクーラー」「純正クーラー」と呼ばれている(場合によっては、それ以外のクーラーとの組合せが保証外の扱いのことなどもある)、[1]。ただし自作PCやBTOのPCでは、より高性能な、あるいは静音化を図ったクーラーを望むユーザも多く、交換用のサードパーティ製のCPUクーラーが数多く開発・販売されている。
自作PCやBTOのPCでは、本来は通風させる方向に沿っているべきであるマザーボード上の子基板がその向きに沿っていないことがある(たとえばメモリモジュールなどで多い)。一方でカスタムの幅が狭い前提で設計されるメーカー製PCやPCサーバ等では、フォームファクタに囚われず全体最適な設計が見られることも多い[注釈 2]。
なお個人が専有するパーソナルコンピュータだけでなく、業務用のワークステーションやサーバでも、冷却が必要になる理由はパーソナルコンピュータの場合と同じである。
GPUの冷却
大型のGPUクーラーを搭載したビデオカード
GPUなどのプロセッサ、あるいはもっと他の集積回路で発熱の著しいものにおける冷却、ビデオカードの主にGPUを冷却するものは「GPUクーラー」または「VGAクーラー」と呼ぶ。
ゲームコンソールの冷却
家庭用ゲーム機でも同様に、心臓部のCPUやSoCが高性能になり発熱が大きくなるほど強力な冷却が必要となってきた歴史があり、たとえばPlayStationシリーズの場合、1994年に発売された初代PSでは自然通風による冷却のみであったが、2000年に発売されたPS2では放熱フィン・ファン・排気口などの冷却システムが組み込まれた。2022年11月に発売された高性能のPS5では、本体内部に直径120mm 厚さ45mmの巨大な両面吸気ファンが装備されており、前面の2つのベントから吸気を行い背面側ほぼ全面の多数のスリットから排気を行なう構造になっており、ヒートシンクにヒートパイプを採用しているが、(PS3やPS4よりも)大型のものを装備、そして形状やエアフローの工夫によってベイパーチャンバー並みの性能を実現しているという。PS5の心臓部のSoCとヒートシンクの間に挟むTIM(サーマル・インターフェイス・マテリアル)には液体金属を採用している。[2]
メインフレームなどの冷却
また1950年代から存在していたメインフレームや、1960年代なかごろに登場したとされるスーパーコンピュータで冷却が必要になった理由も同様である。もともと大型コンピュータしかなかった時代、コンピュータは熱に弱いものだった。メインフレームでは、それが設置されるマシンルーム(コンピュータルーム)は20℃前後に室温を保たなければならないなどと規定されている機種が多かった歴史がある[3](その結果、メインフレームのオペレーターは勤務中、寒くて震えてしまったり、風邪をひきやすくなってしまう状況に大抵はおかれた)。20℃前後に保つので、その冷房費だけでもかなりの金額になった。スパコンやメインフレームなどでは、パーソナルコンピュータとはかなり異なった冷却方法も採用される場合がある。たとえば液浸方式つまり液体冷媒(電気絶縁性が高く不活性のフッ素系液体、商品名としては「フロリナート」(アメリカの3Mの製品)など)に基板群ごと浸して(沈めて)冷却する、という手法がとられることもある。2010年代後半からは相変化方式(気化熱を利用して効率的に熱を拡散させる方式)の放熱技術の開発も日本のNECなどにより活発化している[4]。
背景と歴史