COVID-19ワクチン(コビッド19ワクチン、英: COVID-19 vaccine)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対して、ヒトに獲得免疫を提供することを目的としたワクチンである。新型コロナウイルスワクチン、新型コロナワクチンとも呼ばれる。
2021年5月時点で、接種開始済みから開発中まで、複数の方式や製造元のワクチンが存在する(mRNAワクチン、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチン、不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン、ペプチドワクチンなど)[1]。
世界的に見て、2020年末や2021年初頭から複数の製薬企業が開発・製造した複数種のCOVID-19ワクチンの接種が始まっている。各国のワクチンの接種状況を概観すると、早期にワクチン調達契約を結ぶことに成功して既に大規模に接種が行われた国がある一方、ワクチン調達で遅れをとり接種がほとんど進んでいない国も存在する(後節の「ワクチンの確保・接種状況」を参照)。オーストリアのように接種の義務化を決定した国もある[2]。日本におけるCOVID-19ワクチンの接種については「日本におけるCOVID-19ワクチンの接種」を参照
概要[ソースを編集]2022年3月、3回目の接種を受ける岸田文雄内閣総理大臣
既に複数の製薬企業によってワクチンは臨床試験も済んでおり、世界各地で接種は行われている。有効性は各ワクチンごとに異なる(後節の「有効性」を参照)。
各国・各地の接種状況については後節の「ワクチンの確保・接種状況」を参照のこと。
いまだにワクチン開発に成功していない製薬会社の中には、今も新たな種類のCOVID-19ワクチンの開発の努力を続けている企業もある。なお2021年5月18日時点で、日本の製薬企業はいずれも自社のCOVID-19ワクチンの承認を得ることに成功していない。
開発開始までの経緯と開発の加速[ソースを編集]
COVID-19の大流行に先立ち、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などの病気を引き起こすコロナウイルスの構造と機能に関する知識が確立されていた為、2020年初頭に様々なワクチン技術の開発を加速できた、とされた[3]。2020年1月10日、SARS-CoV-2の遺伝子配列データがGISAIDを通じて共有され、同年3月19日までに、世界の製薬業界がCOVID-19への取り組みを大々的に発表した[4]。
2020年代に入り、COVID-19は世界規模で急ピッチに広がりを見せたことから、各国の研究機関や医薬品メーカーは、新たなワクチンの開発や他のウイルス用に開発された既存ワクチンの再評価に乗り出した。世界保健機関(WHO)は、2020年5月までに世界で118の計画が進行中とするリストを公表。うち8の計画は、その時点で既に欧米や中華人民共和国(中国)で臨床試験の段階に入っていた[5]。また、WHOはワクチン開発に各国が共同出資・購入する枠組み「COVAX(コバックス)」を立ち上げた[6]。
なお、2020年6月時点では、「最初に開発されるワクチンについては、感染防止よりも重症化や死亡を防ぐタイプのワクチンを開発する可能性がある」などと報道されていた[7]。