COVID-19に関する薬剤の研究(コビッド19にかんするやくざいのけんきゅう)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への予防薬および治療薬に関する研究である。2020年代に入り、感染者数は2021年9月時点においてもなお、拡大中で収束の気配がない。そのため、世界中の研究機関や医薬品会社では新薬の開発やドラッグリポジショニングによる対応を迫られている。「COVID-19に対する薬剤転用研究」も参照 多数の候補の化合物があり、既に有力な候補が複数見つかっており臨床試験の早期実施が期待される。またFolding@home(フォールディング・アット・ホーム、FAH)でシミュレーションが進められる。 新薬の開発に必要な実験動物の供給が不足しており、臨床試験の遅延が懸念されている[1]。 新薬の開発が急がれている一方で未知の副作用の潜在的な危険性が懸念される。 新薬の市場規模はそれほど大きくはなく、収益が見込めない可能性があり、大手製薬会社も開発に消極的である[2]。そのため、新薬の開発と並行して副作用が判明していて製造技術も確立されている既存薬を転用する薬剤転用研究も進行中である。 タンパク質間相互作用 (PPI) に関する原理的な知見として、相互作用を生じる二つのタンパク質などは、それらの一部同士が空間的に合致する(嵌まる)形であることが多いことが分かっている。この原理を利用して、SARS-CoV-2 の立体構造に対して、既知のあらゆるタンパク質の立体構造を様々に当ててみてどこか嵌まらないかとしらみつぶしに調べることで、抗SARS-CoV-2薬の候補となるタンパク質群を発見するアプローチが可能である。しかしこれには膨大な計算量が必要となる。そこで、1台のコンピュータだけでなく多数のコンピュータで分散して計算することが発見の近道となる。世界中から無償ボランティアを募集してコンピュータを自動的に借りながら発見作業を進めるというオープンなプロジェクトが、いくつか開始している。 こうしたプロジェクトには世界の誰でも参加して自分のパソコンで薬剤発見に貢献できる[3]。インストールしたプログラムアプリがデータを自動的にダウンロードして解析してサーバに次々報告する。参加者はインストールと必要に応じて設定を行えばよい[4]。その代表的なものとして、2020年2月末、セントルイス・ワシントン大学に拠点を持つ分散コンピューティングプロジェクトのFolding@homeでは、本ウイルスへの取り組みの基盤を提供し、個人・企業が所有するパソコンの余剰パワーの提供を募集した[5]。 グレッグ・ボウマン博士は「近い将来に最も期待がかかるのは、いずれかの部位に結合できる既存の薬剤を見つけられるかどうかだ」と述べた[5]。NVIDIAやGitHubなどIT大手、redditのパソコン・ゲーム愛好家グループなど2週間で40万人以上が専用アプリをダウンロードした[5]。3月25日、Folding@homeの演算能力は約1.5エクサFLOPSに達した[6]。TOP500の上位100スーパーコンピュータの合算を上回る能力を獲得し、これまでの数千倍長いタンパク質を対象とするシミュレーションが可能となっている。 2020年1月25日、中国の20以上の機関からなる研究グループは、有効な可能性のある薬剤等のスクリーニング(探索)を行った結果、候補物質30種類を発見したと発表した[7]。そのリストには、インジナビル、サキナビル、ロピナビル、カルフィルゾミブ、リトナビル、その他12の抗HIV薬、また、サンズコン(山豆根)などの漢方薬、イタドリ(虎杖)などの天然物も含まれている。 1月29日、中国科学院 (CAS) の軍事医学科学院および武漢病毒研究所 (WIV) の共同研究により、本ウイルス阻害効果がまずまずよい (fairly good) 既存薬を3種類発見したと報道された[8]。すなわち、RNAポリメラーゼ阻害剤レムデシビル[9][10][11][12]、クロロキン および リトナビル である。それらは臨床使用承認申請手続中と述べた。 そのレムデシビル、また、I型インターフェロン、ロシアの抗ウイルス剤トリアザビリン(Triazavirin
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