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CNOサイクル (CNO cycle) とは恒星内部で水素がヘリウムに変換される核融合反応過程の一種である。陽子-陽子連鎖反応が太陽程度かそれ以下の小質量星のエネルギー源であるのに対して、CNOサイクルは太陽より質量の大きな恒星での主なエネルギー生成過程である。
CNOサイクルの理論は1937年から1939年にかけて、ハンス・ベーテとカール・フリードリヒ・フォン・ヴァイツゼッカーによって提唱された。ベーテはこの功績によって1967年のノーベル物理学賞を受賞した。CNOサイクルの名前は、この反応過程に炭素(C)・窒素(N)・酸素(O)の原子核が関わるところに由来する。
恒星内部での水素燃焼には陽子-陽子連鎖反応とCNOサイクルの両方が働いているが、CNOサイクルは大質量星のエネルギー生成過程に大きく寄与している。太陽内部でCNOサイクルによって生み出されるエネルギーは全体の約1.6%に過ぎない。
CNOサイクルは温度が約1,400万-3,000万Kの環境で稼動する。さらに、サイクル反応が回り始めるための「種」として12Cや16Oといった原子核がある程度存在する必要がある。現在考えられている元素合成理論では、ビッグバン元素合成で炭素や酸素はほとんど生成されないと考えられるため、宇宙誕生後の第1世代(種族III)の恒星の内部ではCNOサイクルによるエネルギー生成は起こらなかったと考えられる。このような星の内部ではトリプルアルファ反応によってヘリウムから炭素が合成された。やがてこれらの星が超新星爆発によって炭素を星間物質として供給したため、そこから生まれた第2世代以後の恒星では炭素原子核が最初から恒星内に含まれており、CNOサイクルの触媒として働くようになっている。 CNOサイクルの場合も陽子-陽子連鎖反応と同様に、4個の水素原子核が1個のヘリウム原子核に変換される。CNOサイクルの反応経路は以下の通りである。表中の「平均寿命」は各反応が進行する平均的な時間尺度を示す。 反応経路反応平均寿命
CNO-1 サイクル
C 12 + H 1 {\displaystyle {\ce {^{12}C\ + {}^1H}}} ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} N 13 + γ {\displaystyle {\ce {^{13}N\ + \gamma}}} +1.95 MeV1.3 × 107 年
N 13 {\displaystyle {\ce {^{13}N}}} ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} C 13 + e + + ν e {\displaystyle {\ce {^{13}C\ +{\mathit {e}}^{+}\ +\nu _{\mathit {e}}}}} +1.37 MeV7 分
C 13 + H 1 {\displaystyle {\ce {^{13}C\ + {}^1H}}} ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} N 14 + γ {\displaystyle {\ce {^{14}N\ + \gamma}}} +7.54 MeV2.7 × 106 年
N 14 + H 1 {\displaystyle {\ce {^{14}N\ + {}^1H}}} ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} O 15 + γ {\displaystyle {\ce {^{15}O\ + \gamma}}} +7.35 MeV3.2 × 108 年
O 15 {\displaystyle {\ce {^{15}O}}} ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} N 15 + e + + ν e {\displaystyle {\ce {^{15}N\ +{\mathit {e}}^{+}\ +\nu _{\mathit {e}}}}} +1.86 MeV82 秒
N 15 + H 1 {\displaystyle {\ce {^{15}N\ + {}^1H}}} ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} C 12 + He 4 {\displaystyle {\ce {^{12}C\ + {}^4He}}} +4.96 MeV1.12 × 105 年