CAD
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「CAD」のその他の用法については「CAD (曖昧さ回避)」をご覧ください。

CAD(キャド、: computer-aided design)は、コンピュータ支援設計とも訳され、コンピュータを用いて設計をすること、あるいはコンピュータによる設計支援ツールのこと(CADシステム)。[1][2][3]人の手によって行われていた設計作業をコンピュータによって支援し、効率を高めるという目的からきた言葉である。

CADを「コンピュータを用いた製図(システム)」と解する場合は「: computer-assisted/aided drafting」[4]、「: computer-assisted/aided drawing」を指し、同義として扱われることもある。

設計対象や目的によりCADD(コンピュータ支援設計と製図(英語版))[5][6]、CAID(コンピュータ支援工業デザイン(英語版))[7]、CAAD(コンピュータ支援建築設計(英語版))[8][9]などと区分される場合もある。

日本での定義としてはJIS B3401に記載があり、「製品の形状、その他の属性データからなるモデルを、コンピュータの内部に作成し解析・処理することによって進める設計」となっている[10]

3次元の作業の場合でも、数値の精密さの必要がないコンピュータゲーム映画アニメーションなどの制作関係の事柄については「3DCG」を参照
概要

CAD自体はコンピュータを使用して設計や製図をするシステムであり、製図作業や図面作成が時間はかかるが正確に処理できること、編集が容易であること、データ化、ソフト間の互換性があること、10年程度の学習期間で技術修得が可能になる等の利点があるとされるが、大きく分けて汎用型と専用型があり、汎用型は図面を模様として細かく描くことを最大の目的とし、あらゆる図面を描くことができる。しかし、積算までは単独ではできない。専用型はある特定の分野における省力化・迅速化を目的としている。

その後、コンピュータ上のデータを下流の生産工程で有効活用するためにCAM[11][12]、コンピュータ支援検査など、逆に上流で強度や振動などを解析するためにCAEなどの技術が開発提供され、[13][14][15]これらを EDPS/MIS[16][17][18]といった情報処理システムと統合して CIMSという概念に発展した。[19]

CADによって、設計作業においては、以下のように効率化や正確さの向上がなされた。
繰り返し図形をコピーで作れるので効率的に作図可能。また、類似図面の作成が容易

コンピュータが持つデータから寸法を記入するため、単純な寸法ミスを無くせる

設計途中での寸法や面積の測定により、手計算の手間を省ける

設計したデータはプロッターに出力するので、細部まで正確な描画が可能

一方、電気系ではプリント基板のパターンを効率良く設計するためのシステムが、半導体産業では集積回路フォトマスクを設計するためのシステムが開発された。また、電気回路の動作シミュレーションのためのシステムなどを加えて電気系CADの分野が生まれ、後に EDAという言葉が使われるようになった。[20][21][22]

市販のCADは一般的に毎年のようにバージョンアップが存在し、その度にアプリ本体とWindows OSの高額なライセンス料や高価な業務用グラフィックスカードの買い替えが発生するため、中小企業にとっては大きな痛手でもある。仮にバージョンアップをしなかった場合、数年後のバージョンでは現在の保存形式がサポートされないなど、かなり強引な販売手法を使う企業も少なからず存在する。また、官公庁や元請けにお墨付き(指定)のCADも存在し、下請けはなかなか他のCADに変更できないなどの問題もある。近年では電子納品におけるSXFへのファイル形式統一、Jw_cadFreeCADのような無償で利用できる汎用CADの登場により多少は緩和されている。[23]
CADの種類

各分野用に各種のCADが用意されている。

機械用CAD(メカCAD)

建築用CAD

建築設備用CAD

土木用CAD

電気用CAD(回路用CAD、基板用CAD)

半導体分野 - 半導体回路設計の分野では、単なる形状設計に留まらなくなりEDAと呼ばれることが多い。半導体の製造分野ではTCADという用語があるが、このTは技術を意味する英語「technology」で、CADというよりは他の分野におけるCAEの範囲に近い。

その他、熱解析用、電磁波解析用等の専用のCADがある。

服飾デザイン、配管、橋梁などの分野にも専用のCADがある。

機械用CAD(メカCAD)

内部的にデータが2次元 ( x , y ) {\displaystyle (x,y)} で表現されているものを2次元CAD(2DCAD)と呼び、表示上では、立体を正面図・側面図・平面図等の平面図形として表示・操作する。内部的にデータを3次元 ( x , y , z ) {\displaystyle (x,y,z)} で表現するものを3次元CAD(3DCAD)と呼び、ディスプレイモニターなどの表示デバイスで陰影などを付け、3次元的に表示・操作する。内部的には2次元プラス高さ情報で表現されて、表示上3次元CADに似た表示をするものを2.5D(または2+1/2次元)と呼ぶ場合がある。
2次元

一般的な2次元グラフィックソフトウェアのデータを大別すると、主に線分要素で表示するベクトルデータ(ベクタ形式)と、ビットマップ画像で表示するラスタ形式とに分けることができる。作図ソフトとしての2次元CADでは、ごく簡易なものを除いてベクトルデータによる。ベクトルデータは、2次元では始点から終点を示す ( x b e g i n , y b e g i n ) → ( x e n d , y e n d ) {\displaystyle (x_{\mathrm {begin} },y_{\mathrm {begin} })\rightarrow (x_{\mathrm {end} },y_{\mathrm {end} })} 、3次元では ( x b e g i n , y b e g i n , z b e g i n ) → ( x e n d , y e n d , z e n d ) {\displaystyle (x_{\mathrm {begin} },y_{\mathrm {begin} },z_{\mathrm {begin} })\rightarrow (x_{\mathrm {end} },y_{\mathrm {end} },z_{\mathrm {end} })} のような座標値で線分要素を表現する。

2次元CADが機械製図図面の電子化の位置づけであるのに対して、3次元CADでは3次元形状をデータモデルとして正しく表現することが要求される。すなわち対象の頂点や辺、面などの連節を位相構造として表現すること、辺や面に対応する幾何要素の形状が数学的に厳密に定義されていること、その上で立体同士の和、差、積などの集合演算を実施できること、などである。このような3次元CADのデータ構造は境界表現(英語版) B-reps と呼ばれる。
3次元

3次元CADは、業務で用いる対象と取り扱える形状要素のタイプと価格帯により、ハイエンドミッドレンジなどに種類分けされる。

ハイエンドCADでは、自動車・航空機他、強い意匠性が求められる民生品の設計に用いられ、特に自動車の車体・部品はDassault Systems社のCATIAPTC社のPTC Creo Parametric (旧Pro/ENGINEER)、[24]Siemens PLM Software社のNXの3製品でシェアを寡占している。

ミッドレンジCADでは、家電製品一般OA製品などの分野で、量産前の試作回数を減らす目的での普及がめざましく、SolidWorks社のSolidWorks[25][26][27]オートデスク社のInventor[28]がシェアの大部分を確保している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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