C14法
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1: 炭素14の生成
2: 炭素14の崩壊
3:活動中の生物と活動を停止した遺骸

放射性炭素年代測定(ほうしゃせいたんそねんだいそくてい、英語: radiocarbon dating)は、自然の生物圏内において放射性同位体である炭素14 (14C) の存在比率が1兆個につき1個のレベルと一定であることを基にした年代測定方法である[1]。対象は動植物の遺骸に限られ、無機物及び金属では測定が出来ない。

C14年代測定(シーじゅうよんねんだいそくてい、シーフォーティーンねんだいそくてい)に同じ。単に炭素年代測定、炭素14法、C14法とも言う。

放射性炭素年代は、BP(Before PresentもしくはBefore Physics)で表記されるが、これは大気圏内核実験による放射線の影響をあまり受けていない1950年を起点として、何年前と実年代が表記される。

一般に地球自然の生物圏内では炭素14の存在比率がほぼ一定である。動植物の内部における存在比率も、死ぬまで変わらないが、死後は新しい炭素の補給が止まり、存在比率が下がり始める[1]。この性質と炭素14の半減期が5730年であることから年代測定が可能となる[1]。なお、厳密には炭素14の生成量は地球磁場や太陽活動の変動の影響を受けるため、大気中の濃度は年毎に変化している。また、北半球と南半球では大気中の濃度が異なっている。
目次

1 概要

1.1 炭素14の由来

1.2 炭素14の減少

1.3 生物への移動


2 歴史

3 測定方法

3.1 ベータ線計測法

3.2 加速器質量分析 (AMS) 法


4 年代の誤差

4.1 年代較正


5 リザーバ効果

5.1 年縞堆積物

5.2 特異的な変動


6 系統誤差

7 実例

8 出典

9 脚注

10 関連項目

11 参考文献

12 外部リンク

概要
炭素14の由来

大気上層で高エネルギーの一次宇宙線によって生成された二次宇宙線に含まれる中性子窒素原子核の衝突から、年間7.5キログラム[2]程度生成される。また、核実験や核燃料の再処理によっても大気中に放出されている[3]。生成された炭素14は直ちに酸素と結合し二酸化炭素になり、大気中に拡散する。但し、生成量の年変動は約30%と想定されているが海洋などとの交換により0.6%程度にまで小さくなる[4]。 n + 7 14 N ⟶ 6 14 C + p {\displaystyle {\ce {{\it {n}}+_{7}^{14}{N}->_{6}^{14}{C}+{\it {p}}}}}
炭素14の減少

炭素14 (14C) は、約5730年の半減期β崩壊をして減じていく性質をもっているため、これを利用して試料中の炭素同位体12/14比から年代を推定することができる。測定限界が元の約1/1000である場合、約6万年前が炭素14法の理論的限界になる(実際の測定では、ベータ線測定法の場合は3 - 4万年程度、AMS法では4 - 5万年程度が測定限界)。 C 6 14 ⟶ 7 14 N + e − + ν ¯ e {\displaystyle {\ce {^{14}_{6}{C}->_{7}^{14}{N}+{\it {{e}^{-}+{\bar {\nu }}_{e}}}}}}
生物への移動

二酸化炭素中の炭素14は、光合成によって植物に取り込まれ、食物連鎖で動物にも広まっていく。生物の細胞に定着した炭素14は、光合成で作られた時点から減じていくと見なす。つまり、光合成で取り込まれる二酸化炭素は大気中の炭素14量を反映しているが、生物の活動停止後は炭素14が新たに付加されない。従って、生物の遺骸から試料を得て測定した場合、その細胞に利用された炭素はいつ光合成が行われたかが分かる事になる。樹木の場合は、内側の年輪が古く、外側の年輪が新しく測定される。
歴史

1947年シカゴ大学ウィラード・リビー (Willard Frank Libby) が発見。同氏は1960年ノーベル化学賞を受賞。

1952年頃から学習院大学理化学研究所で研究を開始。

1961年 マリー・テーマーズらが液体シンチレーション法を開発。

1979年 民間の測定請負会社が設立される。

測定方法

最初に開発された測定法は、炭素14が崩壊する際に発せられるベータ線を計測する方法である。後に、試料中の炭素14を直接数える方法が開発された。
ベータ線計測法

「ガスプロポーショナルカウンティング法」「液体シンチレーションカウンティング法」と呼ばれ、炭素14が電子反電子ニュートリノを放出して窒素14(14N 普安定同位体の窒素)に壊変するときに放射されるベータ線をシンチレータにより検知して数える方法である。現代の炭素1gでも4 - 5秒に1個しか壊れないので、計測には時間がかかり、試料もグラム単位で必要とされる。 C 14 ⟶ 14 N + e − + ν ¯ e {\displaystyle {\ce {^{14}{C}->^{14}{N}+{\it {{e}^{-}+{\bar {\nu }}_{e}}}}}}

ガスプロポーショナルカウンティング法では、炭素14を二酸化炭素のガスに変化させベータ線を計測する。
加速器質量分析 (AMS) 法

1970年代末に開発された分析手法。加速器で炭素14を直接数える方法 AMS(Accelerator Mass Spectrometer = 加速器質量分析計)で、必要な試料量(1mg程度)、測定時間(30分 - 1時間程度)共に大幅に改善され、ベータ線計測法と比較し高精度化・高効率化された。また約6万年前まで測定可能となった。装置の小型化に伴い多くの施設で入手可能なレベルになっている。
年代の誤差

この測定原理を発見したウィラード・リビーは、炭素14の半減期を5568年[5]として計算している。試料の分析結果から、2700から2400年前の約300年間は、新たな炭素14の追加が無かったことを意味するデータが得られているが、実際には生産量と同等な量の古い炭素が海洋から大気に放出されたと考えられている[要出典]。また、植物が炭素を固定する際に同位体選別と呼ばれる現象が生じ、植物の種毎に試料の炭素14濃度と年代には差異が発生する為、補正が必要である。同位体選別による炭素14の濃度差は、炭素13の濃度を精密に測定することで可能で、最大で400年程度の補正量となる。つまり、古生物の年代の正確な特定には、同じ種の現代の同位体選別量を正確に把握することも求められる。
年代較正

大気中の炭素14量は、宇宙線の変動や、海洋に蓄積された炭素放出事件を反映して変動してきた。そのため、計測結果には誤差が生じる。後述の年縞堆積物および年輪年代により年代の較正が行われる。年輪年代では、およそ12600年程度までの放射性炭素年代値 (BP) と実際の年代の対応表が作られている[6]。年輪年代の及ばない古い年代は、およそ24,000年前までは、サンゴのU/Th(ウラン / トリウム)年代と照合されている。

較正曲線を用いて較正された年代値、つまり、炭素14年代を実際の年代に較正(基準に照らして正す)したという意味であり、西暦1950年を起点とした年数には calibrated(較正済み)を意味する「cal」をつけて「calBP」で表される。あるいは西暦紀元を基準とする場合は「calBC」ないし「calAD」と表す。較正年代は、暦年代 (Calendar year) とも呼ばれ、「実際の年代」という意味である。ちなみに、炭素14年代は「14C BP」となる。

また近年では、δ13Cによって同位体分別を行った後のBP年代値に数学的な統計処理を行い、95.4%確率と68.2%確率の各確率間で、より詳細な確率分布を求める確率法(High-Probability density range)と呼ばれる手法も使用されている。
リザーバ効果

大気圏及び水圏での炭素14濃度分布は、拡散、循環、均衡の影響を受けるため不均一である。


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